第96話 突撃
鬼神の力って言われても、実際に目にしないとわからないよね。
「・・・・で、どうする?」
領主に雇われていた冒険者たちをやっつけた後、俺は女将さんに聞いた。
いやだってね、こんなに簡単に倒せるとは思っていなかったもんで・・・・・ちょっと物足りないような気が。
女将さんと、他に一緒にいた人たちは全員あんぐりと口を開けていた。ソティス達はもう慣れたという表情だったが。
「お・・・・お前さんそんだけ強かったのか?}
「ええ、まあ」
女将さんがいち早くはっと気が付いたよ。判断能力が他の人よりも早かったようである。さすがに体格差的に考えて勝てないかもと思っていたんだろうな・・・・・。鬼神ですからそんな隊価格差関係ないですけどね。
「と、とりあえず、領主が実力行使をしようとしてきたんだ。これ以上言い逃れもできまい。ここでそこに伸びた冒険者どもを使ってうちらを暴力で黙らせるつもりだったんだろうが、お前さんが・・・ちょっとかわいそうになるぐらいに叩きのめした」
まあ、金棒で弁慶の泣き所を殴りモヒカン男を地面にたたきつけるついでにおばさんをそれでつぶしたからな。否定できない。もう少し抵抗があればよかったのだが・・・・。ん?最近何でか物騒な思考が出るな。
「とにもかくにも!全員で領主の館に突撃だよ!!」
「「「「おーーーーーーーーっ!!」」」」
女将さんの合図とともに、全員領主の館に突撃した。
だけどもう領主は逃げていそうだよな・・・・。
突撃から数分後、館の中に領主がどこにもいないようであった。
「くそっ!逃げられたか!」
「あの冒険者たちをおとりにして逃げたのか!」
「いや、宿屋の泥棒どもの時にすでに逃げていたんだ!!」
様々な憶測が飛ぶ中、夜が明けた。
やっぱり逃げたのか・・・・。でも、なんか妙に変なような気がするんだよな・・・・。
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ラルたちがいた領主の家から離れた平原。そこに3台の馬車が走っていた。
先頭を走る馬車の中には、今まさに逃げている領主の姿があった。
「くっくっくっく、これでもう追いつかれまい。あの冒険者どもに金を払って十分なおとりになってもらったからな。おかげでため込んでいた財産すべて持ち出せたわい」
後ろの方の馬車には、1台には領主がため込んでいた財産が所狭しと詰められていた。もう1台には、領主が買った自身の欲を吐き出すための奴隷が乗っていた。
自身の財産を増やすのがこの領主の唯一の楽しみだった。そのため、この領主はこれまで盗賊たちと手を組んでいた。盗賊たちの罪が軽くなるようにしたり、こっそり脱獄させたりなどをして、その代わりに盗賊たちからその儲けの一部をもらっていた。
さらに、王国に出す税金などはしっかりと出し、領地の人から搾り取るのではなく、盗賊たちを活発化させてそれで次々と私腹を肥やしていった。
だが、こういった秘密はいつまでもばれないということはないと領主は考えていた。
事実、だいぶ町の人にバレていたからである。もみ消すこともできていたが、このままでは時間の問題。
そのため、この際いっそ大胆不敵に逃げてやろうと思い、今回のこのような事件を起こしたのだ。
逃げるあては、王国の別の領主のところである。その領主は今財政難で苦しんでいる。そのため、資金を出す代わりにかくまってもらい、ほとぼりが冷めたころ合いに変装し、どこかの国へいってそこで優雅に過ごす予定だった。
これからしばらくは逃亡生活になるが、その先にある予定のことを考えると自然に笑みが浮かんでいた。
だが、このときこの領主は知らなかった。自身がこれまで利用してきた盗賊たちに見限られており、この後襲われて、あっけない最期を遂げることを・・・・・。
もうそろそろ100話行くな・・・・。




