第88話 次期水龍帝のダズマ
次期か・・・・・
「わたしはこの湖の主、次期水龍帝のダズマだ」
「次期水龍帝?」
聞くところによると、ダズマは現在次期水龍帝とやらの修行のためにこの湖で800年以上主として働いているらしい。あと200年ちょっとで水龍帝の座を継げるそうな。
水龍帝というのは、この世界では様々な属性の頂点に立つドラゴンがいて、それを指し示すのが龍帝というらしい。龍帝になると名前を捨て去ってしまうらしく、今のダズマの名前はなくなってしまうらしい。
「本来はこの湖の深い底にいるのだが、何やら変わった感じがしてこうして上に1時間ほどかけて上昇してきたというわけだ」
この湖どれだけ深いんだ?
「つまり、俺の気配を感じて来たと」
「そういう事だな。だが・・・・ただの神ではないな」
「ああ、おれは鬼神だ。神の類にも入るそうだが・・・」
「鬼神・・・なるほど。山の神が言っていたのはお主か」
あれ?なんで山の神のことを知っているんだ?
「我らのようなものは神々の風の噂なら聞けるからな。直接その声を聴くことはできないが・・・」
そういえば、あの山の神が俺のことを知ったのも噂でだよな・・・・・ん?もしかしてこの世界、下手したら噂なんかで個人情報筒抜けか?
「とてつもなく力が強い神と聞いている。私のようなものではまず勝ち目はないだろうな」
「そんな感じで伝わっているのか」
「そんな感じだ。しかし・・・まさかこの目で見ることができようとは思わなかった」
そういうと、何やら首を後ろの方に回して、自分の背中から鱗を一枚とった。
「ここで出会えたのも何かの縁。この鱗をもらってくれまいか?」
そういって渡された鱗は、透き通るほど透明な片手サイズだった。
「これをか?」
「ああ、私のこの鱗は持っていると水中での呼吸が可能になる。もしもの時のために受け取ってくれ」
つまり、お手軽酸素ボンベみたいなものか・・・。うん、使う機会はあまりなさそうだけど記念にいいか。
「わかった。ありがたくもらおう」
俺はその鱗を受け取った。
「では、わたしはまた湖の底に戻ろう。もし、またこの湖によることがあれば今度は酒でも飲みかわそう」
そういって、ダズマは湖の底に戻っていったのであった。
ちなみに、朝早いので目撃者はいなかったそうな。




