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③ー31

ー31


時刻はまもなく2時となる。

世間では幽霊様が活動するからという理由で嫌われているが、

明日からは変わる。

日本人の運命が大きく光輝いた始まりの時間として、

語り継がれるだろう(言い過ぎ)。

各ベニスが開始位置に到着している、

後はその合図を送るのみ。

送るのは東京ベニス、それを一番に待ち詫びるのは、北のベニス。


『皆、大地が震えている…感じるか?』

時折、彼の言動は通訳が必要である。

まぁ、身ぶり手振りで分かるのと同様で、

なんとなく伝わるのだが。

『えぇ、感じるわ…ある種の渇望、自由への疾走…』

こんな時のイエロー尾本は上客である。

レッド椿原親派と堕ち、彼の言動に浸るのである。

『そうだ、大地は待っている、我々による解放…地球をあるべき姿への回帰を!』

メットを被っているので見えないが、きっと彼女の瞳は輝いているのだろう。

この件に関して無を通すブラック相川とグリーン池上は、

また始まったかと思いつつも、これがないと始まらないという不思議なお約束の中にあった。

これがあって、ようやく開始されるのだ。

北のベニス、その戦いが。

『後1分でジャスト、変更等の連絡なし…』

ブルー堤は遠くから4人を眺めている感覚。

年のせいと、誰かは言うかな?

『ベニス!』

各所には各所なりのベニス・ゴーがある。

北は椿原の掛け声にて右拳を突き上げるのだ。

天にも届く拳圧を放ちつつ。

それを決められた時間(大体10秒だが椿原合わせ)にて引き下ろし脇で溜める。

『セット!』

その掛け声と同時に溜めた拳を地面へと叩きつける。

(本気にやると痛めるので、基本寸止め)

後はゴー!と共に前ダッシュにて戦場へと向かうのである。

が、堤は気付いていた、始めるのが早い、と。

(後30秒はこのままだな…)

しばし地面を睨みながら、固まる5人。


名古屋には特にセット・ゴーは無い。

リラックスした状態で、その時を待つのだ。

方やスマホにて明日の天気やら、ざわつくネット住民やらを見てニヤリ。

(ベニスが動くらしいと話題が広がり、本部のTwitterが炎上気味とかどうとか)

方や読みかけの小説(上下巻の上の半分程度)をゆっくりと。

続きは帰ってから読みきるのだ、全て終わった頃なら読破できてるかな?

現場にて見送る係りは、相変わらず車の事を考えている。

明日は無理でも数日後に、いつものディーラーに持っていこう、と。

また腕自慢の彼にかかれば、愛車は完璧に復活するのだからさ。

楽観はなく、それは確信。

自分達の道が途切れる訳もなく、取り戻せないなんてのもある訳がない。

そう、3人は分かっているのだ、未来がそうなるのだと言うことを。

希望ではない、期待してでもない。

自信と自覚、その全てである。

未来図は、見えているのだ…。


『比嘉ー、おーい比嘉ー』

沖縄ベニスレッド新垣が彼女を呼ぶとき、

それは困ったとき。

やれやれ顔のベニスオレンジ比嘉奈津、振り替える。

そこに居るのは歴戦を越えてきたレッドスーツの骨太男。

頭さえキレキレなら、もっと違った流れもごにょごにょ…。

『みてくれ、バックルが裂けそうさ』

…沖縄の男は飲む、いや飲まざるをえない、とも。

その結果、腹をはち切れさすのである。

職業病とは違う、自己管理の世界なのに。

彼女はもう!っと顔に書いて、持参しているテーピングを巻き始める。

本当は怪我とかしたときにって、持ってきたのに。

『結論から…痩せて下さいね』

無理難題を言う娘じゃなと、思いながらも了承する新垣。

それを横目で見ているベニスブルー仲本。

これで全部ではない、もう1人、福岡よりの福岡ベニス・グリーン武田。

ある種の勇者様である。

『いつも、こんなんで??』

福岡ベニスは時代遅れの上下関係にどっぷりと浸かっていた。

いつも上(赤色とか)は偉そうにふんぞり返ってたのに、いざとなるとこれだ。

スーツも名前も捨てて、一目散に逃走。

仲間として恥ずかしいとかも感じないくらいの、見事なる逃げっぷりに。

武田は下がり気味の眉毛を一段と降下させ、

沖縄ベニスに語ったのである。

『せめて自分だけでも…極力足手まといにはなりませんので』

比嘉からすると、戦う仲間は一人でも多い方がいい(的が増えるしさ)

だからといって期待していた10年戦士の

レッドとブルーは既に不在で、

残っていたのが入社5ヶ月の上下関係で言う下だった新人武田くんでは、ねぇ。

まぁ、心は買うけどさ。

『武田さんにも結論を言います』

分かっている事を改めて言われるのは辛いこと。

でも受け入れていかないと人は成長出来ないのだ。

『絶対に死んではダメ、それなら逃げる!』

彼には了承する権利しかなさそうであり、

それを反故にする気もサラサラないのである。

『…足手まといになると感じたら、直ちに』

彼の細やかなる抵抗となる。

(沖縄にもベニスセット・ゴーは無し←比嘉が拒絶した説が有力)


用意されたグラスに注がれているのは、

もうすぐ三桁という所で開封せざる得なくなったワイン。

最初に誰かがウンチクを流していたが、

大阪ベニスギグ・鈴木の耳に収まる訳もなくである。

『乾杯だ、奴等無能なる来訪者達に…』

グラスを天へと差し出してから、

一気に飲み干す。

そして地面へと次々叩きつける、あれである。

これが大阪のセット・ゴーに替わるもの。

出動の度にちょっとお高いグラスと、

それなりの年代物及び関連物ワインを用意しないと、なのだが。

そこは気にしなくても良いところらしく。

毎回ベニスレイブ・流源がどこからか調達してくるのである。

5人分を。

それを見るたび心は痛むのだが、そこを突っ込む事は出来ない、関西人の血が騒いだとしても。

(ジュリア…必ずだ、必ず報いを…)

誰の心にも闇は潜み、浮上の機会を常に狙っているのである。

流源の奥の闇は、想像以上に広く深く、

ドス黒く。

全てはベニスパール『ジュリア・レドントン』がこの世を去ってからの事であり、

もう巻き戻せない物語なのである。

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