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③ー30

ー30


一般的配色から考えると違和感。

ピンク、グリーン、ブルー、パープル、ゴールド。

まぁ、公共電波を利用したエンターテインメントショウの影響が

脳波の中に色濃く染み付いているだけなので、

本来は何色だって良いのだ。

赤色が無くたって…。

『これより、現場へと移動します』

その後の計画は十分に練ってある。

絶対の成功は保証しないが、失敗しても悔いなど残らないだろう。

計り知れない無念の中に閉じ込められるだろうけどさ。

『ひとつだけ…』

牧野には言っておきたい言葉があった。

それは今は亡き父の言葉であり、彼女の内に常にある言葉であり。

『我々は失敗する事が出来ない、この国の為とか以上の意味で』

何時もは見ている側の自分が今、皆の視線を集めている。

少し可笑しくて、我慢の為に拳を握り締める牧野。

『我々の勝利は、そのまま世界の希望となります、…モスクワがそうだったように』

あの戦いの後、各国で密かだった動きは活発となり、

翌朝を待たずに行動を開始する国もある訳で。

だがひとつ、ロシアとは違う。

我々は人間であり、片道切符は購入していないし、その予定もない

『人間でも勝てると言う事を、証明しなければならないのです』

牧野は川端の事を気にしかけたが、なんとか断ち切る。

事前に話し合いをしていたのだから、

気にしなくても良いのだが、やはり。

牧野は1時間の猶予の半分を川端と過ごしていた。

リーダーとして語るべくは何なのかを、問うために。

そして人間として戦う事の意味を、

許して貰うが為に。

まぁ、当の川端は軽い返事で、

『ではワシも人間だって事で』

と満面の笑みだったのだが。

『父が言ってました、護るには執念が必要であり、叶うには信念が必要だと』

牧野は我慢の為の拳を胸の前へと突きだしつつ、続ける。

『なんでも思い通りだった奴等に、魅せてやりましょう。

我々の念を、我々の決意を。

自分自身の為に、全ての人類の為に!』

牧野は拳を広げ右手を突き出す、それは合図、彼等の儀式。

知ったる面々は重ねていく、掌をひとつづつ…

『ベニスセット…』

その先のgoの声は、久々のダミ声満載で。

それはそれで悪くないと、先代を知る者達の心の中…。


お馴染みの光景、お馴染みの面々、そして変わらぬ心の奥底。

正義と言う勝手な解釈の先にある未来を欲して、

今日も進むのみ。

両隣の顔ぶれが替わろうとも、この心の継承は行われ、

今日もこの時を、あの頃と同じ思いでこの門をくぐるのだ。

川端は本部からの出撃というあの頃同様の行為に、

顔をニヤケさせていた。

それはあの頃の面々との思い出から始まり、

その後の人生と終末にと決めた日々へと繋がり、

そして望んでいなかったとも言える今を見る。

服の色は赤から金色に変わり、この服の効果で普段よりも身体が軽い違和感と高揚。

何よりまた戦えるのだという意味、正義の為の、人類の為の、護りたい者達の為の、

闘いである。

(今なら出せるぞ杉本、108を超える突きがな…)

直近の弟子の安否は心配していない。

今すぐここに戻れないだけで、必ず現れるだろう。

人類のとか以前に、ここにいるのだから。

彼女が何よりも護りたい仲間が。

『運転手…小杉!』

まぁそうだよな…と思いつつ、せめて今はブルーと呼んでくれよ心の声。

(誰にも届かないけどね)


いつものハイエースにて移動を開始する。

到着予定は1時半から40分の間だろう。

それは全国各地にて同様に行われ、

2時より一斉に決起するのだ。

日本から奴等を排除する為に。

『全国も予定通り中です、…少し名古屋が遅れてるかな?』


『門さん、そりゃないぜ…』

送ってやるぞと言ってくれたのはありがとう。

だが東京から名古屋までの旅路で、愛車はお疲れになった模様。

『いや、このハイブリットのバッテリーがな…』

意味不明にエンジンを停止させた門倉の愛車は、

その後も動く気配がない。

これが一昔前なら、ガツンと蹴飛ばし問題解決!

…なんだけどな、と門倉の頭の中。


日本の誇る自動車産業において、

彼等の功績は計り知れない。

それは世界へと向けた眼差しからも分かる通りに、

全人類にとっての功績、功労、その全てが。

『門さん!置いてくよ!』

門倉は心の囁きを言葉として表す機会すら与えられず、

手動にてドアロックし、愛車を道路へと放棄して行く。

必ず回収し、直してやるからな…

彼に死ねない理由が出来た、それはそれでよい事だ。

(そんな心配そうな顔しなくても、誰も盗ってかないよそんな個性的な車は…)


緊急オペが開始されて約5時間、

それで旅立つ事を許される者とそうでは無い者と。

彼は後者、舞台よりの降板を許されない存在。

『脈拍、安定していきます…信じられない』

別に奇跡でもなんでもないと、彼は語るだろう。

俺の体には二人分の魂が宿っているのだから、と。

出羽は感じていた、真相心理の奥にて、

彼の存在を。

(なんだ、そんな顔をするな。今起きる…日本の危機だからな)

私は生来、その宿命と使命のもと歩んできたのだ。

ここではない、終演はまだ先に…

出羽総理大臣、これより5時間後に意識を取り戻す。

そして高らかに宣言するのだ。

ベニスの存在と、これからの日本について。

後の日本史に語るべく日、

日本生誕宣言の時は、まもなく…。


大阪を元の姿に戻したいとか、そんな大きな事をいうつもりはない。

純粋に気に入らないから淘汰する。

それだけで十分な戦う理由、命を賭けるに値するかは置いといて。

『ようやくの登場か、少しくらい速く来るとかないんか…』

予定時刻ジャストの降下、まったく東京は律儀で、好かん。

ベニスギグ鈴木は相変わらずの口の悪さだな…とか思いつつ。

クリスタル宮下は荷物を受けとる。

それはさしたる重量ではないのだが、その意義と価値を考えるとズシンとくるイメージ。

この傘で雨を防ぎ上昇、円盤とやらに乗り込む。

簡単な話である、道は作られそれを渡るのみ。

その反動なのだろう、入れてからが全くの無計画。

(そもそも侵入出来るのか?はある)

全箇所が行き当たりばったりであり、それに対応しきれない部隊は消失する。

日本を取り戻すという目的と共に。

…まぁ考えていても始まらない。

もしかしたら全部隊失敗し、地球は人の手から離れて行く始まりの刻、破局のフロンティアになるのかもしれないが、

やるだけやるのみである。

我らのボス、レイブ流源を信じてさ。

年下の同姓に従うことの苦痛は、宮下にはない。

勿論、その対象が鈴木なら激痛であるのだが。

『さぁ、作戦開始だ』

今まで死線を越えてきた仲間が我らの帰りを待っている。

帰宅と同時に開始となる。

命を賭けて、戦いの渦へと堕ちるのだ。

死を恐れずに…

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