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③ー26

ー26



救助を待つというのが、一般的な基本姿勢。

だが我々なら…と行動する訳で。

まぁ、無意味な時間だったけど。

内部からの人間の力では不可能って分かれた時間。

それはある意味有意義なる時。

だから無駄では無かったんだと共に言い聞かせるのさ。

『ねぇおばちゃんの仲間って…いつ来てくれるのさ』

色々と言い返したい心を抑えて…

彼女等は笑顔で答えるのだ、その時はもうすぐよ、と。


最終版完成の時、それを試すという行為を行えない不安はない。

さっきのデータで十分なのである。

私ほどの天才にとってはな…

彼が酔いだすと長い、だが常に事実を述べるのである。

だから小杉にも不安なんてない、あるのはその先の事。

円盤に侵入してからはまったくの未知なのだから。

『盾の整形は後回しだ、とにかく必要数を!』

最低必要数は後17個、保険を考えると20は欲しい。

『量産に二時間、輸送に一時間…』

信頼度8割の板倉、流石の展開となっていた。

先行して製作していた初板とタイムラグを着けて他を製作。

行程や問題をクリアしていく度に、それを他のに盾にも施し。

普通に作るよりも早い、約2割程。

まぁ、つまりは倉橋予定通りの時間にて総数完成、となりそうだった。

『これ以上早くしたらな、製品の保証が出来んのだ』

一応そこがメインなので、これでいいのだ。


信じていた事柄が嘘だと知ったとき、人は哀しみ涙する。

それは裏切られた事への憎しみと混ざり、心を清くない方向へと追いやっていくのだ。

ザグナスの始まりだって、そうだったのかもしれない。

最初から戦闘部族であったり、宇宙侵略精神至上主義軍団では無かったはず。

それらは後天的に作られた、生き抜くための知恵とか手段であり、

彼等だって必死なのだ。

自分達より強大な勢力に飲み込まれない様に、

滅ぼされてしまわない様に。

だから確実に潰してゆく。

その可能性を持った集団達を、優先的に。

そういった意味では、フレダスト星人は驚異であり、将来の懸念材料であった訳だ。

だから滅ぼした、容赦なく…。

『その鞭…似ているなぁ~』

高速で迫る10本の鞭を軽快に回避する元エントロール…そういや名前を聞いていない。

アデリーダは武士道という一連の全てが好きである。

だからここは、鞭を退く。

『なんて呼べば?』

鞭を納めた理由を理解した元は、見ているだけで嫌になる笑みを浮かべつつ。

『ハーセィ…』

その続きがある訳ではなく、それで終わりか。

『本名はもっと長いが、呼ぶだけなら十分だろう?』

聞き方が悪いと言いたいのだろうか。

その嫌な笑みと相まって、凄く不愉快。

まぁ、その方がよい、か。

余計な感情はこの戦いには不要である。

闘い済んで友情が芽生え、コイツめ~なんて物語にはない。

地球人が滅びるか否か、そこにしかポイントはないのだ。

『さぁこい、騎士道を残した異星人…』

良く勉強している、その才能や努力を違う方面に利用するとか、さ。

アデリーダは哀しみの表情をみせることなく、心を切り替えてゆく。

そして再び鞭を伸ばし、激しく振り回すのだ。

それはクラナハッナの時よりも速く、彼にも簡単には回避できなかった振撃。

当然、彼よりも速く動けぬハーセィは距離を開ける事で直撃を避けるのみ。

『はっ!この程度で!』

やってる事と発言が違いますよ?とか思いつつ、

彼女の振撃スピードはまだ上がる。

反動としなりとを利用し、音速に迫る振撃。

距離を取るのみで回避できなくなってきたハーセィ、

やれやれ顔で五指爪グローブの掌にて軌道を変えてゆく。

(10対2、いつまでも防げるか!)

アデリーダ、トップギアへとシフト。

それは音と同時にヒットする…つまりは音速。

瞬く間に10本のマッハが、ハーセィに襲いかかるのだ。

『うむ、やはりそっくりだ…』

その刹那、アデリーダは背後に殺意を感じた。

と、同時に身体の中心が熱い。

100の魂を吸い捕った矛に近い切れ味の爪の先が見える…自身の腹部から。

『前回もな、こうしてやったのだが…』

一応、完全に一致ではないのは学習したからか、はたまた戦士としての土台が違うのか。

『貴様らの大事な球を狙ったのだがな、ズラすとは見事なり』

前へ出ることで爪を抜くアデリーダ、致命傷であるが死に至る事はないだろう。

このまま放置してくれるなら、だけど。

『貴様らの星で大暴れした日と同様に…』

にじみ寄るハーセィ、そらそうだろう見逃す訳もない。

『その鞭もろとも、砕いてやるわ』

鞭に覚えあり、か。

まぁその日の記憶を強く残すシューレには、意図的かは置いといて現れるだろう。

その日までの事が、その日からの事が。

脱出を果たせなかった仲間に居たのだろう、鞭を使う者が。

それを考えると、ここは勝たなくてはならない。

あの日の恩を、返したいのならば。

アデリーダは自身の心臓である球に気を入れる。

さすればそれは反応し、彼女に力を与えてくれるのだ。

火事場のクソ力、そんな世界。

一気に塞がる腹部の傷を見つつ、ハーセィは思う。

こんなのは無かった…やはり学習したからか?と。

まぁ学習という言葉が当てはまるかは不明ながら、確かに違う。

生粋のフレダスト星人ではなし得なかった存在となっている。

まぁ、地球人に影響を受けたシューレには可能だったので、

生粋でもこの状態を作れたはずだが。

終わった後、酷く疲れるが…この男を倒せば一旦休みだろうから。

貯まった有休を消化する事を宣言しつつ、

再び10本の鞭を降臨させるアデリーダ。

『強制修復は見事なれど…!』

ハーセィは再び彼女の背後へと飛ぶ。

正確には入れ替える、である。

優等生の分類に入るハーセィ(だから裏側の人格になっていた)

彼の得意技は空間の入れ替え。

彼が目で見て分析できる範囲(約半径5m)ならば、

入れ替える事が出来るのだ。

瞬時に、誰にも気付かれない内に。

それが彼の能力、ザグナス星人の中で特殊能力体に分類される。

この能力のあるなしにて、その先の道筋は定められるのだ。

優等生、という肩書きの元…。

だが彼は彼等は、少し勝ちすぎていたのだろう。

それは傲りであり、油断や慢心の類いとなる。

だから想像に無かった、だから何の疑いもなくこの行動の終わりまでを進行させてゆく。

(次は外さぬ…)

狙うのは先程同様に命の球、それで終わらすのだ。

この者の命を…。


アデリーダにとって、そこは理解の範疇。

見下している者が取るであろう行動は分かっている。

今回もここを狙う、間違いなく。

だからそこにセットするのだ、例のあれを。

服の下より這わせた足の指が、無意識に反応し飛び出る。

それは硬質化した10本の矛となり、目標物を貫いてゆくのだ。

『…一瞬だ、一瞬で私は貴様の裏を獲ったのだぞ…』

振り替えるとそこには、赤色の血を吹き出しつつ苦しむハーセィの姿。

説明を求めている様だが、そんなモノを与える必要もない。

悩みながら果てればいいんだ。

積年の恨みが晴れたわけではないが、心の奥にあった【ひかかり】がポロリと剥がされてゆく感覚。

恩を、いや恩の一部を返せたかな?

『まだ話せる元気があるのか…』

アデリーダは再び親指にてサーベルを精製し、小さくテイクバック。

そして恨むべき存在の命を刈り取るのだ。

『先に逝ってて、どうせすぐに追いかけるから』

未来は変わらないかもしれない、でも生きるのだ。

力一杯、精一杯、この身が朽ち果てるまで全力で。

…一閃、それにて終わる一つの命。

叶うならこの瞬間に戦争が終わりとなれば良いのに…。

『アデリーダ…』

すっかり回復したヴァルヴァラが、心中を察するかの如き表情にて傍らへ。

それを理解するアデリーダは、彼女の肩を強めに抱き寄せるのだ。

『やられっぱなしじゃさ、申し訳ないもんね』

これより数十分後、モスクワはロシア政府の元へと奪還される。

その戦闘の内容や、トゥリ・セストリィ及び怪人兵の存在は、

データの闇へと消えてゆくのみ…。

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