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③ー24


ー24


この体はフレダストの力を借りただけで、

地球が産み出した生命の集合体的な認識はある。

だから、私の勝ち負けはそのまま地球の勝敗となるのだ。

確かにあのザグナスには遥かな差を感じたが、

このダルサーマなら…の想い。

それは先程とは覚悟が違うからだけなのかも知れない。

それを理解しつつ、その流れに乗っかるヨランダ。

『私はロシア制圧部隊司令官、ダルサーマ星のヤサタメーサ』

見た目は先程の紫髪、つまり人間に近い。

髭を生やせばドイツ軍の歴史を変えたあの人に、似ている?

まぁその冷たい視線は、似ている人以上の冷たさだろうけど。

一般論として、人を見た目で判断するな、とある。

だから冷たくないかもしれないし、どこにでも居るオッチャン姿からは

図り知れぬ強さなのかもしれない。

だが彼女の野生の感が伝えてくるのだ。

コイツハヨワイ、と。

『名前は知る必要がないわ、どっちかは死ぬんだから』


3方向からの進軍、それを阻むダルサーマの一般兵。

その攻防に大きな変化はなく、膠着していた。

だからこの3箇所の戦いの結果が今後の結末へと左様される事は明白で。

それを彼らは上空カメラより傍観する。

『見ろ、一箇所は終わったみたいだぞ』

元父親の呟きを聞き流せない元娘は、

その箇所をズームしていく。

『…体バラバラになってますね』

時折魅せる上官に対する的言動が、小杉は嫌いだった。

それは組織に属するのだから仕方のない事なのだが。

『獣の勝ち、だったな』


ヨランダは吠えた。

それは身体の基本となる狼の化身がさせたこと。

その勝利と恐怖を克服できた事に、歓喜する。

と同時に戦局を確認。

やはりこの中央を落とし、この拠点を手中にすることが全て。

トゥリ・セストリィの2人を助成する事よりも、今は彼女等にやっかい事を抑えて貰い、

その隙にモスクワを奪還するのだ。

その意志は骨伝導無線によりワレンチンへと伝達され、

それは正しき事として、他の2人へと。

当初の目的通り、この土地から奴等を追い出すのだ。

いかなる犠牲を払っても…

『全部隊私につづけ!』

ヨランダの咆哮は周囲に広がり、心を持たぬ兵士達の数少ない理解できる言葉として浸透、

そして指示通りに身体を動かしていくのだ。

人の姿ではない獣人の先導にて後に続く人ではない生物。

これで良いのだろうかこれで。

それはベニスを持たぬ彼等からすれば、よきこと。

だが、ベニスにより安全を保ってきた彼等には愚の世界。

受け入れられない、哀しき現実。

でもこれが彼等の答え、他国の者があーだこーだ言う事にナシ。

『小杉統括、輸送準備は整いました』

後は運ぶ物、か。

小杉はモニター内の凄惨さから目を背けつつ、

我々にはそれが起こらない事を切に願っていた。

だが全員傷付かず無事で帰って来れるなんて、

甘すぎる期待なのだろうな。


緊急オペ、それの意味は大きい。

行わなければ助からない、切迫なる状況。

まぁ、行ったところで助からない命もあるのだが。

『心肺停止!』

佐々川病院の名の元に集いし精鋭医師達に課せられた使命は、

この国にとっての有益なる人物の延命、それに尽きる。

金に上限を設けない人々が叩く扉、最後の可能性。

もちろん、ダメなときもある。

だからといって、彼等が落胆することも嘆く事もない。

我々で助けられなかったのだから、それはそうなる運命だったのだ。

そんな所か。

(…こりは運命だな、仕方ないな)

やれるべくは尽くした、だから分かる。

神の意思であると。

もはや、助からない、と。

この部屋には技術にあり溢れた者達が集う。

だが、助けたいという人道的観点が欠落していた。

それがあれば、もう少し助かる命もあったはずなのだが…。

室内に響き渡るチープな音を止める手段は、

もはや何も。

唯一は、電源のOFFか。


限界まで硬質化した手刀ならば、その光輝く矛を防ぐことが出来る。

相手は1本、こちらは2本。

数的優位があるはずなのだが。

その100人の魂を吸ったとされる矛、

その棍部分がグニャリと曲がるのだ。

意思を持ってるかの如くに。

それも速く、鋭く、ヴァルヴァラの手刀以外の部分を刻んで行く。

『その姿、その服装、それでいて青き血…』

ニヤリと笑うエントロール、何やら善からぬ考えに落ちたか。

クルリと回り脇にパシっと納める、かっこいいかどうかと聞かれたら、

…まぁ言いたくないから止めるヴァルヴァラ。

『殺すには惜しい、…我が物となれ』


条件を出してみようかな、と思ったりする。

地球から撤退してくれたら、物に成っても良いよ、と。

最高の自己犠牲となるだろう、その為ならなんだってする。

まぁ、こんなイチ兵隊に言った所で…だろうけど。

『返答は?』

ヴァルヴァラは回答する時間を惜しみ、そのまま亡き父の技を繰り出す。

『カルセルトグル!』

その速さと鋭さ、亡き父を越えているかもしれない。

だが亡き父は、フレダストは及ばなかったのだ。

戦闘という分野でザグナスに。

土台が違い、成長速度・限界も違う、普通では勝てないのだ。

『そうか、それが返事か…残念だよ』

もはやそのスピードは慣れましたとばかりに回避するエントロール。

そしてすれ違い様に矛を降り下ろすのだ。

『さよならだ、フレダストの残党よ』


突きつけられた矛の先は体内へと侵入せず、停止。

『さよならするのは、私からよ』

固めた手刀をエントロールの腹部へと。

それは願い届かず体内への侵入を果たさなかったが、

最低限はね。

『お気に入りの物を壊されるのは、本当に…』

ちょっと目障りだった白いスーツ、そこに映える赤色のネクタイ。

目障りだったのだ、あぁスッキリのヴァルヴァラ。

『短い方がカッコいいじゃん』

まぁ、地球人の正装なんて貴方には似合わないけどね。

エントロールは切断されたネクタイをスルリと外し、首のボタンを開ける。

リラックスした姿が、それはそれでしっくりとハマる。

やはり男前で長身は、何をしても高得点なのだ。

残酷なる世界…。

『最大限に硬質化出来るポイント、何ヵ所かな?』

先程の矛の停止が許せないみたいだ。

本人は突き刺さったビジョンが見えていたのだろうけど。

『硬くするだけなら全身だよ?』

じゃーその数十ヶ所の切り傷の説明してよとエントロール。

超高校級のMだとでも言うのか?

はたまた、全身を最大硬質すると不具合が…?

ならばそこに付け入る隙が生まれるだろう。

『なんか考えてるみたいだけど…』

ヴァルヴァラは思う、どんな優れた秀でた存在でも落とし穴的なのはあるんだなと。

考えたら分かりそうなのに。

『全身硬くした動けないよ?』

フレダストからすれば大したことは無いのだが、

ザグナス星人のエントロール、硬質化。

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