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③ー23

ー23


一般的に言われる【出番】、今の彼等には皆無。

まぁ、命の傘が仕上がらない限り、動きはないのだが。

ある者は修行と称したシゴキに耐え、ある者は精神の集中に時間を費やし、

そしてある者は傍観者となる。

『アップで録れないか?』

映されるのは地球外からの来訪者達、資料は多い方が良い。

今後のためにも。

『これですねきっと、モスクワの占拠を企てたのは…』

モスクワの中心、赤の広場に展開された見慣れない小型挺と、その上空に浮かぶ見慣れた円盤。

あれより舞い降りしダルサーマが、モスクワを人の住めない世界に変えたのだ。

そしてそこに向かう影がひとつ。

『これがロシアの奥の手?』

そこには尊敬とか感嘆の念はない。

こんなのが? こんなものが?

人としての尊厳とかないの?

である。

その想いを理解したる元父は、彼女の肩をポーンと叩き一言。

『綺麗ごとを言える内はな、追い詰められてないんだよ』

そうだ、彼等は追い詰められているのだ。

軍隊や人類の産み出した物では歯が立たない。

全てを理解した上で、この作戦を開始しているのだ。

だからこそ思う、ロシアにベニスがあればな、と。

この手段の前に、ワンクッション置けたハズだ。

人類が人類の為に行う人類による存亡大戦が。

これは違う、生き残れたとしてもこれではない。

『…ま、生き残れてから考える事だな』

小杉は静かに椅子に座り、その後の展開に食い入るのだ。


影はヨランダ、それは遠くからでも分かる程に人ではない姿。

でもこの姿は彼女の望んだことであり、

そこに何の恨みもない。

『そんなにまでして、更に死のうとする…』

人であった時の最期、彼女は顔を半田ごて焼き、そして空から舞い落ちる直前であった。

そこに現れたるシューレ、その第一声である。

『だって死んだ時に見られたくない…こんな醜い顔を』

こんなところから飛び降りたら、顔なんてくしゃくしゃだよ?

と、真面目に答えるシューレ。

そして足す、新たなる生き方を与えれる事実を。

『だったら変えて欲しい、この姿を』

それは人間の姿以外に、との願い。

彼はそれを了承し、今に至る。

…三者ともに恩義はある、それを返したいと思う。

もう、その当人は不在だとしても、だ。

4つの足で地面を滑りつつブレーキ、彼女は到着する。

『ロシア側の、か…』

その視線が異様に冷たい、決して顔がそんな形だからではなくて。

『命令されて、ならば去れ』

その口調も冷たくて、貴方きっと友人居ないよね?

とヨランダ心の声。


精神と肉体が同期してるとき、それは可能となる。

皮膚は鋼の様に高質化され、全てのモノより肉体を守る。

逆にゴムのように軟化させ、リーチとスピードを増させる事が可能となる。

この二つを合わせた時が、彼女の攻撃力を最大限にさせるのだ。

今がそれと、使用する。

肘から先を高質化、そして肘部分から肩までを軟化させ幾重にも放つ。

エントロールの全身を被い尽くすほどに。

その全てを見ることも受け止める事も不可能との判断、エントロールは矛にてガードしつつ後方へジャンプ。

そして全身を感覚でチェックする…被弾11、うち重度の被害はなし、か。

なかなかの攻撃である、この身に触れたことが何より大きい。

まぁ、それも軽度の被害なので問題には…

『へぇ、赤いんだ』

エントロールは額の違和感にようやく気付いた。

軽度である事は間違いないのだが、まさか切られていたとはな。

鋼鉄の手刀により裂かれた額、そこよりの出血。

なかなかに、速く鋭く。

エントロールはしばし感嘆し、そしてスイッチを切り替えた。

『敬意とか不要、命奪うがための…』

単純に言うならば戦闘モードになった、となる。

今までは自然体であり通常、だがこれからは戦うための時間。

その変化は内面的だけではない。

『…その顔、ヤダ』

ヤダと言われても困るのだが、個人的にはそこまでの変化はないと思っている。

まぁ、目が細く吊り揚がるので人相は悪くなるが、な。

それに大事なのは戦うための変化であるということ。

それについては小さな変化ではないとだけ、伝えておこう。

どうやら変身とやらは終わったみたいだ。

ま、内に秘めたる力とか、見えてきそうな感じではあるけど。

『光栄に思え、この姿を見られる事を…』

本当に何様のつもりなのだろう?

『そして屈辱でもある、貴様らごときにな』

ヴァルヴァラは明るく温厚な性格と自他共に。

でもね、キレたくなる時もある。

こんな勘違いの、イキり馬鹿と対面したときなんかは特に。

ヴァルヴァラは固くする所は最大限に固く、軟化させる所は最大限に柔らかくしつつ。

『何が?…アンタらに命を踏みにじられた屈辱に比べたらね』

力がみなぎる、それは亡きフレダストの意志か。

奴等にも滅亡を、奪われる苦しみを!

『そんなの、1カペイカの価値すらない!』

ヴァルヴァラはシステマの型をとり、次の先を取ることを決めた。

『貴方達、だいっ嫌い』

せめて名前を呼んで欲しかったな、とエントロール。


《この体より血を流すの、あの日以来》

あの日とは?と聞きかけてやめた。

どうせダルサーマ星にザグナスが攻めてきた日だろう。

(まぁ思ったのだから、読まれただろうけど)

貴方が敗北感を植え付けられた日、なのでしょう。

(返事はないけど)

《だからこの制御板を外す、そなたに敬意払いつつ…》

アデリーダは沸き上がる不安を必死に押さえていた。

何を制御していたの?

何のために?

《この白銀の鎧にて、押さえていたのだ》

あぁ、やはり読んでいるのね。

美しかった鎧が、ひとつづつ地面へと落とされて行く。

そしてその消えた鎧から見える黒く淀んだ肌?

《この姿を晒すのに、敬意なしでは苦しい》

戦いの意味のために、そんな大した争いではない。

でも光栄に思おう、晒す覚悟が必要とあらば。

全て落ちた鎧、中は大半が肌であろうが、黒く爛れているのだろうか、

ひどく淀む。

《あの日、地獄の業火で焼かれた体…》

彼の記憶の情景が、アデリーダの体内へと取り込まれていく。

そして浮かんでくる、自分の思い出かの如く。

『…酷い』

それ以外の言葉は、彼女の喉から飛び出す勇気を持たず。

傷付き、倒れたクラナハッナに対して放たれる業火。

それは容赦なく、全身を黒く淀らせてゆく。

《ドーレンソゥ、ザグナスの本隊、その1部隊長の名だ》

それは覚えておくべき名前、ここで果てたら無意味だけど。

(まぁワレンチンに伝えたら、少しは喜ぶかな)

《まぁ、知ったところで、無意味だが》

そうか、その無意味さを教えるために、わざわざ映像を飛ばしてくれたのね。

『抵抗するだけ無駄、と?』

クラナハッナは体を見せることで、こうなりたくはないだろう?

っと語りたかったのだろう。

確かになりたくないし、その状態でも生きたいと思う意味が分からない。

《奴等には従う他ない》

死を拒絶するならば、そうなるのだろう。

アデリーダは全ての指を元に戻し、手首をくるくると回しストレッチ。

そして改めて納得した事柄について話す。

『やっぱりね、貴方とは相容れない。考え方がまるで違う』

従う位なら死を選ぶとか言いたいのだろう。

クラナハッナは差し出した手を弾かれた悲しさを表情で見せたのだが、

あまりの一瞬にアデリーダ気付くことなく。

《わかった送ろう、死の世界へ》

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