表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/86

③ー19

ー19


『うむ、そうだ。そのデータで制作を開始してくれ…』

回収した盾【命の傘】、これのデータを直接採取し、その最終型をデータ上にて作成した倉橋は、信頼度8割強の部下【板倉吾郎】宛に送信し、即座に作成を命じる。

『本部戻る頃には完成?』

一通りの作業は終わったぽいので聞く。

それを少々窶れた感のある倉橋は答える。

『信頼度8割強の吾郎くんだぞ?』

知らんがな、と心で叫ぶ小杉は同時に思う。

(いくぞベニス、ここからは俺達日本のターンだ…)


『…うむ、いつみても美しい』

竜泉流の舞いに魅了されるのは恥じでも非でもない。

それを彼の目が語っている訳で。

歴代レッドの心を虜にするその演舞に、ファンは多い。

『案ずるな、主らにあそこまでは求めとらんて』

床で転がる2人に投げ掛ける川端、それを半ノビの2人(岡林・御堂)は受け止め、

一応何かを返杯しようと試みるも体力の限界。

『ゥス…』

っとだけ。

(心の中では求められても困るわ!とか思ってはいるのだが)

まぁ確かに、川端は求めていないが、

少なからずここ最近の動き、悪くない。

それどころか川端の予測を上回り始めている場面も。

(後数ヶ月待てんかったか、来訪者達よ)

心の叫びが、表に出ることはない。

出したところで、この2人の実力が飛躍する訳でも、やっぱり3か月後にもっかい来ます~と、

なろう訳もなく。

今出来ることを、今最大限に発揮する。

それのみである。

『川端さん!』

オペレーター兼統括代行の石原が入室、何やら慌ただしい。

石原は整わない呼吸にも、乱れた髪の毛にも構うことなく続きを吐き出す。

『盾は間もなく完成です!…後ロシアが!』


SF映画で良く観る光景である。

まぁ、普通味方側は人間タイプであるのだが。

今回は違うので、どちらが味方かの判別は難しい。

『川端さんの言う通りでした…』

ロシアは待つタイプではないから、いつ動いてもいいように、見張っててくれ。

ゴルグエフ島よりの3隻、それに準じ送り出したドローン。

そしてそれが送ってきた映像。

異星人VS異星人の戦い、人の姿なき所での地球所有権争い。

醜くも美しい戦いの調べ、観るものの心を揺さぶるほどの戦いである。

『やはりロシアは隠していたの?』

見れば分かる事の一つが、ロシア側の異星人がフレダスト寄りであるということ。

『完全に把握していた訳ではないがな、どうせそうなのだろうな、の世界だ』

懐かしむ目、ともいえる川端の表情に、

なんとも言えぬ感情を抑えられない牧野。

奴等は憎むべき敵だったのに、それが今地球側として戦っている。

自らの意思ではなく、地球人に命令されて、従されて…。

『まぁ、お手並み拝見といこう』

オペレーション・ルームの扉は開かれ、そこに現れたるこの部屋の主。

『統括、もう戻らないんだって思ってましたよ』

『まったくだ、しぶとい男だな』

現戦力のトップ1、2の二人のご機嫌取りも大事さ~っとばかりに

話を合わしてゆく元父親の顔を見つつ。

自身が安堵している事を受け入れている石原主任。

やはり、血の繋がりは何よりも深い、か。

全てが終わったら、もう一度考えてみよう。

昔の3人には戻れなくとも、違った形があるのかもしれない。

それを見つけよう、ゆっくりと。

『さぁ統括、我々も…!』

その先は要らない、分かっているのだから。

親子の縁が、あろうが無かろうが。

『総数生産終わり次第、各所に配布…』

小杉は溜めた、そして込める、日本人の魂とか何とかは、分からないけど(とにかく込める)

『日本はベニスで…反撃だ!』

各々が声を揚げ、この時を待ちわびた事を全身で表現する。

前線で戦う、戦わないは別問題。

㈱ベニス戦隊としての活動である、担当が違うだけで、その意思は共通項。

奪われたものを、取り返すのだ。

例えその結末が、期待と離れたモノであったとしても、突き進むのみ。

ベニス戦隊の名にかけて…


人としての記憶、それがこの行為を否定するのだろうか。

アデリーダは自身の内側に芽生えている違和感に気付いていた。

それはなんとも心地よくて、現状の凄惨さを薄れさせてくれる。

『1対1でやりあうな!常に3身にて!』

最低限の言葉は理解できる様になっている、か。

それでも返事がない事に不安はある。

結果として半数以上がチーム行動をしている風なので、

由とするのだが。

(右辺のあの個体…奴等では不可、か)

アデリーダは親指の鞭を手の甲側から一周させ掌にて握りしめる。

そして硬化させてサーベルを精製、対決相手に合わせた変化となる。

右辺に見えるは銀色の戦士、中世ヨーロッパからタイムワープして来たかの如く出で立ち。

(人から異物となった私が、人の様な異物と争う、か)

変わらぬ口角、だが本人的には最大限にニヤケてるそうで。

『さぁ、どちらの甲冑が異物か、ハッキリと決めようか!』

アデリーダは軽やかにジャンプを繰り返し、目標とする銀色の戦士の眼前へと舞い降りる。

『我が名はアデリーダ、そちらは?』

発言して気付く、ロシア語が分かるはずもない、か。

そして何よりアップで見てみて分かる。

口が無い事と、そういった知力を持ち合わせていないだろう事を。

それは残念である、やはり語り合いの中から切磋琢磨が理想の…

《名はクラナハッナ、ダルサーマ親衛騎士団である》

そう、心で語れるの…

アデリーダは素直に感動し、返答の仕方に悩む。

試しに心で語ってみたい所だが、それで無音の時が続くのが怖いので。

『そう、やはりダルサーマからの…ザグナス帝国からは全体のどの位かしら?』

答えるはずだ、忠誠の意味が違うのなら。

従いたい相手と、従わざるえない相手と、

それぞれ対応は異なる訳で。

まぁ、答えるかどうかはどちらでも良いのだ。

アデリーダの目的はこの銀色の戦士を止めておくこと。

十分に果たしている。

《こんな小惑星、ごく一部で十分である、と》

そう言いつつ、戦士は両刃のサーベルを構える。

これ以上は語るつもりはない、か。

それならそれでも良い、かなり楽しませてくれそうだし。

…相手はどう思っているだろう、同じように楽しませてくれるとの見解だろうか、はたまた期待か。

もし期待なら、それに答えたいと願う。

結果失おうと、良いではないか。

《クバサスナーラスゥルー》

それ、必要?

なぜ心音に乗せて伝えるの?

なんの呪文かなんの宣言か知らないけどさ。

アデリーダは斜に構え、クラナハッナと名乗った存在の行動を待ち受けるのだ。

(甲冑が薄く輝いて…綺麗ね)

そんな思量に落ちるのは、精神が落ち着いているからであり、

現状に満足しているからである。

この者は強者であり、私を満たす存在である事が、映像からひしひしと伝わるのだ。

心の高揚、抑えられる訳もなく。

(…くる!)

大気の震えとか白銀と化した甲冑が輝いたから…

とか色々あるが、詰まるところは勘。

そしてそれは正解となり、クラナハッナの斬撃は、アデリーダへと振り下ろされる。

…アデリーダには確信があった。

人であった時の流れと、異物となった今では、

まるで違うと言うことを。

だから人のままでは越えられなかった壁が、

この姿ならいとも容易く越えて行ける。

それが嬉しいやら、悲しいやらだが。

《クワァッン!》

その叫びと共に迫る両刃の剣、それを受け止めるは親指より産み出したるサーベル。

2つは重なり、耳障りな雑音と轟音が混ざ合った異音と共に訪れる静寂。

アデリーダは自身が産み出したる物にて、この者の抱きし剣を止められる事に、

まず満足。

では、次なる満足を獲ようか…

アデリーダは刃を滑らせてスライド移動。

そしてそのまま背後に回り込み3連撃。

力は同等、ならば速さは?である。

多種の想定はしてあったが、体ごと消える、は無かった訳で。

アデリーダは悪寒を感じた側より緊急離脱。

同時に現れる両刃の剣と消えていた体。

なるほど、速さは勝負に成りそうもない。

それはつまり、自身には勝つという選択肢は無い、との事。

それが現実、突き付けられたリアル。

『ふー、まいったわね』

一番のまいったは、私では彼?を満足させられないという事。

それは辛い、同じ種族の異物としては。

だから止める、相手に合わせた変化を。

アデリーダは固めたサーベルをグニャリと変化させ、

本来の使い道へと戻す。

それは鞭、フィンガー・ウィップ。

彼女は何度か地面に叩きつけ、その感触を確かめるのだ。

『はい、お待たせ、ごめんね』

明らかに待ってくれていた彼?に謝罪し、

再開。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ