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③ー10

ー10


そういえば着たいと願った時期もあった。

戦隊員となり、悪と分類される怪人を倒すのだ!…と。

まさかこのカタチで、このタイミングで叶うとはな。

小杉は青のベニススーツを着用してゆく。

そして思い出す、つい先日までこの服を着ていた者を。

…まだ喪すら明けていないのに、戦いにほり込まれる我々は何なのだろう?

戦いを欲している訳ではないのに。

安定と安心と、誰も傷つかない恒久的平和。

そんなのを望むのは角違いなのだろか。

いや、今まではそれを望めたんだ、この日本ならば。

何時しか現れた始めた怪人と対峙し始めるまでは、か。

…思いの外、スーツの着心地が良い。

どうやら微調整されてる様だな、中年向けにな。

ヘルメットを被り、直ぐに外す小杉。

(まだ、被るの早いよな…)

彼は歩む、皆の待つフロアへと。

準備でき次第、オペレーション開始。

その自らの進言に従い、行動するのみである。


国会議事堂までは車で30分少々で、

今はその車内となる。

ちょっと緊張してプルプル震えている青色。

あくまでも武者震いだ!っとメット越しに瞳が光っている訳で。

『日本で良かったと、また言えそうです』

運転を担当してくれている…誰だったか?

垣本?いや、椿原?

なんせ今年入社したての若者である。

まだ、まともな交流もなく顔だけで判断している状況なのである。

(そんな余裕もなかった! 小杉談)

まぁ、名も知らぬ彼の言いたい事は分かる。

日中、広がっていた暴動の渦は、潮が引くかの如く沈静化。

一部の暴れ足りない者達が、集まり燻っているだけである。

日が沈んだから帰りましょう、とかでは無い。

まぁ、基本的に暴れていたのは若者達。

飽きた…もあるだろうが、何より義務教育等で育まれてきた【良心】というものが働き、

彼らにブレーキを踏ませたのだと思いたい。

本当に最後の夜なら、こんなことをしている場合ではない、とかも感じて。

『確かに素晴らしい国だ、…何としても残したい』

極論を言おう、日本以外絶滅しても構わない。

日本さえ、日本人さえ無事に翌朝を迎えられたならそれでいい。

そんな極端な考えを持つことが、小杉の本質ではない。

だが今は世界の平穏を望むとかは無謀なのだ。

目の前の敵に全力で当たること以外を、

考えるべきではないのだ。

そう強く、言い聞かせるのだ自分に…。


『あれじゃな…』

倉橋、当然乗っている。旧知の友が命を張るのだ。

自分の開発兵器を信じて。

現地に来ない訳がない。

ゆっくりと停止していくハイエース。

そして名も無き運転手は告げる。

『はい、ここがちょうど100m付近です統括』

少し声が震えている。

邪悪の根元を黙視した為か、はたまたこれから目の前の人物が死んでしまうかも?

があるからか。

『よし、予定通りここからは徒歩だ』

振り返り、バイザー越しに旧知の友を見る。

『じゃ、ナビ頼むな倉橋』


一歩、また一歩と死地へ繋がる道を歩む。

それは人生と同じである。

最後のオチが分かってるのに、その何時とも言えぬ日までの道程を、

歩み続けるのだ。

そう言う意味では恵まれている。

あの見えない線を越えたら分かるのだ、終わるかどうかが。

『現時点60m…』

友の声が不満とかではないが、どうせならここは女性の声が良かったと思う。

絶世の美女とかも捨てがたいが、やはりここはイチ確である。

(…しまった、やはりちゃんと最後に…)

一応、死ぬつもりで来てはいない。

だから挨拶もそこそこに来てしまった訳で。

もう一人の石原には、連絡すらしていないし。

足が鈍る、行動を拒絶する。

誰も死にたくはない、本能がそうはさせない。

だからこの歩みは意思、勇気やら何やら詰め込んで、人としての生き方を示すのだ。

滅ぼされてたまるか!と。

『ストップだ小杉、次の一歩で越えるぞ』

本当に何も見えない、まぁ発展したレーダーと思えば見えなくて当然だが。

一度深呼吸し、腹をくくる。

そして三角柱のシールドを天へと掲げるのだ。

(頼むぜ、相棒…)

物を相棒と呼ぶのは、小杉の交遊関係が薄いからとかでは無くて…。

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