③ー9
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武器を持たぬ者は、その矛先を自らより弱き者へと向け、無秩序に暴れる。
それを見ているだけの、秩序を維持したる使命もつ者及び、
逆に秩序を乱していく維持したる者がいる。
それは街を少しづつ崩壊させてゆくのだが、
ある程度の武器を保持したる者達は、抗う。
某大国よりの払い下げの戦車やロケットランチャーにて円盤を攻撃。
更には同じ思想の仲間と共に、マシンガンを乱射しつつ突撃。
それが成功する可能性は皆無なのだが、
この抗戦は世界各所にて繰り広げられゆく。
各々が人類の為に…とかを掲げている訳ではないが。
目の前の気に入らない存在を排除する為に、戦う。
奇しくもこの時、各所の内線は停戦され、
昨今の人類史上初、人類間紛争ゼロの日となったのだが、
それはそれで、虚しき現実である。
(武器を持たぬ者が暴れているので、完全にゼロでもないし)
普段、内戦を起こしていた者達の銃口は皆、
宇宙よりの奴等へと向けられ、
昨日どころか数時間前の敵と共に、戦ってゆく。
無謀とか無駄とか、感じる事無く。
…まぁ、最終的には無力だとかは思い知らされるのだが。
『…ここも全滅か、はたまた心折れたか』
切り替わる画面を停止させつつ、状況を把握してゆく。
『…残念ながら、どこの戦いも参考にならないね…』
見たくないものを散々見せられて、牧野のテンションは最下層に堕ちていた。
大切な仲間を探しに行けぬ苦しみも重なって、
この状態。
『…理想は世界に示せることだ、潜入の方法を』
蟻と象ではないが、皆分かっているだろう。
内部から、食い破るしかないんだって。
御堂の声は皆の総意。
返事がないのはシカトされてるからではない。
(御堂的には少し不安みたいだが)
『ピンクの盾で、防げないのかアレ?』
…本気で言ってるの川端さん?
と思いつつも、聞かれた問いには答えねば、である。
『開発室室長の倉橋さんに聞いたところ…』
牧野は偶然発見した枝毛に落胆しつつ続ける。
『死にたきゃ、どうぞ…と』
そんな分かりきった事を…とか周りは思っているだろうが。
『だったら、防がなくていいから受け流せないのか?』
牧野は倉橋の言葉を思い出していた…。
ーーー
巨大な力を止める事と弾く事は難しい。
なんせその巨大な力と同等の力をブツけなければ成らないからな。
だが、どんなに強大でも少しの力で、方向を反らし曲げる事は簡単かもしれないな。
お前さんの流源の動きを参考にすれば、な…
ーーー
『なんじゃ?騒々しい…』
嫌々な顔の割には口元がゆるんでいる。
皆で会いに来てくれてありがとうな、という感情でもあるのか倉橋くん…?
『殺戮シャワーの屈折シールドねぇ…』
そう言いつつ、何やらごそごそと。
現れたるは三角柱に尖り輝くシールド。
『来るのが遅いわ、と言いたい所じゃが…』
要するにあの殺戮シャワーの成分が分かってない以上、
これで屈折させられるかは未知数。
いや、むしろ地球外の成分なのだ、させれる訳もない?
『じゃ、誰かが命賭けて試せばいいんだ、簡単じゃないか』
じゃんけんで決めよう!っと提案した者が敗北する。
それが一般的なあるある。
ベニス戦隊的あるあるは、発言者がそれを実行するというもの。
言い換えれば、発言する時は自らが実行するつもりで、他人任せはダメよ、である。
『…いいのか小杉? な~んも補償せんぞ?』
先程見たんだ、自分の後任となれそうな人物の姿を。
自分がここで仕切らなければならない絶対的理由は無い。
『倉橋の勘で造ったんだろ?俺はその勘に賭けるだけだよ』
笑顔で見つめ合う二人を、この時だけは気持ち悪いと思えない牧野であった。
『円盤の下から行くとシャワー、上からでも同じかな?』
流石に行かせられないと思っている岡林、代替え案を模索する。
『下なら何が来るか分かってるんだ、わざわざ知らない方を選択する必要もない』
意思は固し、か。
このまま行かせて良いのか?
ここはシュタッと手を挙げて、やはり統括の代わりに俺が!
っともう一度、本意気で言うべきか。
『岡林…』
悩める彼に語りかける統括、それにより思考はフリーズす。
『もしもの時は、頼むぞ』
確かに先程、組織改編なり今後の展開なりを記録したUSBを渡されたが。
…縁起でもない。
だがその眼力なり圧なりで押される岡林。
彼には了承するしか選択肢が残されていなかった訳で。
『小杉』
残された選択肢を実行する前に、川端よりの横槍。
内心、有り難き岡林。
ドサッと無造作に川端から小杉へと渡される、何やら見慣れた物。
『これ着ていけ、助かる可能性上がるだろ?』
青のベニススーツ、今は主なき青色。
…てか止める所か押す、か。
岡林は自身の論点が既に無意味であることを悟る。
『統括、ご武運を…』