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③ー8

ー8


『狙うべきは敵の旗艦、そこを叩けば奴等だって自壊する!』

『旗艦と思われるUFOはロサンゼルス上空、LAを捨てるというのか!?』

議論が熱いと、あぁ仕事してるなぁ~とか感じる訳で。

まぁ、議論に参加する気のないゲイリー・テスター上院議員(ネブラスカ州)は、

自が認める仕事してないグループなのだが。

そもそも、この議会に参加しているだけ凄いと言うもの。

躍起になって右往左往したところで、格の違う相手に、何が出来るというのだ?

蟻が象を倒すなんてのは、おとぎか夢の話なのだから。

『奴等は強い、まるで蟻と象だ…』

同じ発想をする奴がいるぞ?

と、少し乗り気になるゲイリー議員(49)


『確かに我々は蟻だ、巨象に刃向かう事自体が無謀』

ついに巨まで付いたかと、内心ニヤリのゲイリー。

『だが蟻だって、象の目を突けば視界を奪えるかもしれない』

オーバーアクションはアメリカの国技(国民的技術)。

声量と共に、そのアクションの可動範囲も増してゆく。

『口から侵入し、内部を食いちぎれば、命を奪えるかもしれない!』

…目が合った、いやそれはゲイリーだけではなく、議論を傍観している者達全員の感覚。

『我々蟻の大将が諦めたら、それこそ終わり』

ゆっくりと手を左右に拡げ、天を見上げる。

170㎝そこそこの小柄な身体が、不思議と大きく。

『我々は最後の一人になるまで、自由の為に戦わねばならない…、それが建国よりの我らの…』

小柄男の視線が拡散する。それに伴い、彼の本質的な精神は飛散し、議事堂内を覆い包むのだ。

『アメリカの存在意義だ!』

彼の名は、テキサス州上院議員ティム・サンダース(37)

『そしてこの戦いの果てに、全ては消え去るだろう。白も黒も、国境さえも…』

ティムは込める、一番伝えたかった言葉を届ける為に、貯める。

『人類はひとつなのだと!』

最も熱いと思われる心波を身体中に浴びたるゲイリー、流石に表情は変わる。

(あんな自分よりチビでガキで肌の色が悪い奴に、そこまで言われちゃな)

やれる所まで、やるしかない。

ゲイリーも心を熱くさせ、議論の渦へと飛び込んでゆく。

『こちらの力を示したいなら、既に壊滅した空港で十分示せるじゃないか!』


ゲイリーの第一声に、議論は止まる。

そして各々壊滅させられた空港の所在地を確認してゆく。

(…おいおい、こんな私の戯れ言ごとき、とっくに議論されてたんじゃ無いのかよ…)

恐らく誰かか発したハズのフレーズ。

だがそれはその都度拾われず、置き去りにされ、今蘇る。


『ジョン・F・ケネディ空港だ…彼ならきっと、許してくれる…』

彼、それは名称の由来となる人物。

アメリカにより産み出され、アメリカにより殺された、第35代大統領。

『無茶を言うな!ニューヨークが近すぎる!』

そら、最もだ。便利なモノが逆転すると、とてつもない厄災となるのだ。

火付け役のゲイリー、先程とは違う意味で傍観者。

話の終着点を楽しみに待つ。

『フロリダ…デイトナビーチ』

それまで沈黙していた者が動く。

それは最初から決めていたことなのか?

答えは彼の中と、数人の補佐官の中にしか。

『もう一つは、ニューメキシコ。アルバカーキ』

議会から言葉が消える。

何を言っているのだ?

もう一つ、とは?

『二ヶ所同時に攻撃をする』

そんなの世間が許す訳がない。

『フロリダは地理的な理由、ニューメキシコは…この愚を行うに相応しい』

トリニティ実験の事を言っているのだろう。

人類初の核実験、アメリカの犯した最大の愚。

いや、最高の愚か。

『旗艦を叩かない以上、最低2箇所は落とさないと効果はない』

大陸の端に落としても、彼等は落とされるかも?な恐怖を抱かないだろう。

都市を人質に取るだけの事、どうせ落とせないのだろう、と。

『自国に2箇所同時に核攻撃を行う…それも威嚇の為に』

そして意味を成さないかも?なのに。

『とんだ蟻の大将だな我々は』

完全に静かになる議会、そんな事言われても…である。

『大統領』

挙手をし、発言許可を求める前出のティム上院議員。

『日本のカミカゼが、ある意味美しいとさえ感じてしまうのは、究極の自己犠牲だからだと思います』

ティムは私の勝手な考えですが、の言葉も添える。

『究極の自己犠牲、我々にもあるんじゃないでしょうか?』

ニヤリと笑うべき所だが、そこは耐え静かに頷く大統領。

『先駆者の開拓したこの大地に落とす理由、これならば許してくれるだろ』

議会全部をゆっくりパーンする。

全上院議員とアイコンタクトを取る大統領。

『外敵を葬り、自由を取り戻す事。その為の犠牲なら、先駆者も笑って差し出すだろう…』

大統領は目を閉じる…それに合わせて議会内の全員が次々と閉じる。

そして自然と繋がれて行く手と手。

それが中心の大統領を包むように、幾重にも、半円を描く。

『…皆、聞こえるだろう? …先駆者の声が』

大統領の問いに応じて、次々発言してゆく議員達。

誇りを取り戻せ、仲間の敵討ちだ、自由を我らに等々、先駆者が言っているぞ、と。

熱くなりながらも冷静なゲイリーには分かる。

これはただの酔狂であると、そんなの聞こえるハズ無いではないか。

だが酔わねば決断できない事だってある。

都市を一つ、消滅させるのだ。

人類が産み出したる、最悪最強の兵器にて。

この先1世紀以上、歴史の針を停止させるのだ。

シラフで始まる訳もない。

そしてそれは、最小限の広報活動実施後に、宇宙より舞い落ちる…。

『敵はロサンゼルスにあり…』

アメリカ侵略の旗艦(と確信している)。

それが、攻撃目標である。

『決行は3時間後の19:00ジャスト!』

大統領の宣誓は、基本的には絶対。

『皆の勇気と健闘を祈る!』

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