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③ー4

ー4


『タイミングを合わせる以外は、我々にお任せ…』

大阪ベニスにも同等の指示のみ、確かに現場でなければ分からない事だらけだが。

『逆に我々のタイミングに皆が合わす…それでもOKって事ですね?』

流源は部下製作の紅茶を飲みつつ、聞く。

一応年上の上司に対して失礼だな、とかは無い。

所詮は下に見ているのだから、億単位の資産家以外はゴミであると。

ファンクラブ会員が知ったらメンバー激減か、はたまたそれが良い!っと微減で済むか、見物だな。

そんな年下の部下の振る舞いに、心に何の波も起きない男は、冷静に返してゆく。

(そもそも自分が偉いとか上だとか、考えた事もない…底辺の人間だとは思うらしいが)

『そうだ、作戦の成功…つまりはタイミングが最優先だ、その時は遠慮せず言ってくれたまえ』

見下ろしていたのに意に介されてない、それはそれで辛い。

自身が今、道化であると理解した流源は、静かにタクトを下ろしてゆく。

『分かりました、その時は遠慮せずに』


今回の作戦は、5箇所同時に決行し、その5箇所の旗艦となる円盤を奪取及び拿捕する事にある。

その為には各所の旗艦を選別する事と、その旗艦へと侵入するプランとが必要となる訳で。

そこは各所の状況によっても違うのだから、各支部に任せる事になる。

『現時点では、明確な作戦図は完了しておりませんが…』

必ず探しだす、そう瞳が語っている。

北は椿原に任せておけばよい、か。

今回もそれにならう、逆にそれのみしかない。

『まだ奴等が動くまでには時間がある、と期待して』

それまでに、潜入すべき円盤と潜入すべき方法を、探す。

『大阪も変わらない、だが煮詰めてるのでご安心を』

また各々の資産を使い盛大なる宴を開くのかな?とか思いながら、小杉は返す。

『安心できないのは名古屋、せめてタイミングだけはある程度合わせて貰わないと…』

今だに、返答ない。

直に言いに行きたいのだが、統括の身である自身は行けない。

かといってベニスの誰かも行かせられない。

(突然戦闘開始の可能性もある)

信頼できる誰かを、か。

行ってくれそうで思い浮かぶは約1名。

それは小杉の人脈が薄いとかでは無くてね。


『門倉~』

小杉は小走りに彼へと駆け寄る。

【門倉 謙介】

今年40才になったばかりのハズだが、髪の毛は小杉の3分の1程しかない。

それには色々なタイプがあるが、彼は前からである。

まだ若いのに…と思うが、本人は前からなら渋くて良い!…らしい。

『小杉統括!ご無沙汰しております!』

東京にある6つの有名どころ大学を卒業した彼は、

ベニス戦隊東京支部の幹部候補として入社。

まぁ、今の役職が広報担当部主任なのだから、期待されたレールには乗れていなさそうである、が。

これまた本人は『広報はね、テレビ局とか行けるんす、女優半端ないっす、最高っす』

だと。

彼の明るいキャラは広報向きだし、天職だろ~と勝手に思う小杉。

まぁ、今回は別の働きをして貰うのだが。

『確か有給消化しなきゃ!って言ってたよな?』

小杉とは入社当初からの関係。

18年間も苦楽を共にすれば、何かは伝わるものである。

『戦隊員とか、今更無理すよ?』

そんなブヨブヨな小太り君にお願いするかよ…

『名古屋を動かして来てほしい』


『広報の仕事で全国の支部支所回りますから、だろうなぁとわ』

門倉はスマートフォンを取り出し、スケジュールを確認。

『うん、明日の予定さえズラせば、大丈夫ですね』

門倉は使い慣れた操作にてスマートフォンを操作してゆく。

小杉には無いスキル、羨ましいとかは思わないぞ。

『はい、完成…出発は?』

小杉はポケットに納めてあった車のキーを取り出し、彼の胸へと付き当てる。

『準備出来次第、すぐに』

もとラガーメンだった時の声量が復活する。

『ラジャー!』

周囲に響く音量と迫、いいじゃないか嫌いでは無いぞと小杉。

『すまない、頼む』

軽く頭を下げクルり、そして思い出して再度クルり。

『あ、これ資料ね』

今度こそクルりし、小杉は去ってゆく。

ブヨブヨの元ラガーメンはそれを見送る。

…その瞳の奥に有るものまでは、誰にも分からないだろう。

まぁ、その容姿から想像できるモノでもなく。

これが造られた容姿とかなら、某ハリウッドのスーパースターの役作りみたいで素敵なのだが。

『さ、準備して行こ~う』

現状は、その程度である。


飛行機、新幹線、高速道路。

人類は素晴らしいシステムだか技術だかを産み出したんだと実感できる。

名古屋まで一般道にて何時間かかるのだ?

だが、門倉の脳内には【慶】の感情しかない。

これ、仕事なのだ、金銭が発生しているのだ。

運転好きと走行中のプチコンサート。

(爆音で大好きな音楽を流す訳で)

そして飲食放題。

最高だ、それしか浮かばないではないか。

門倉のブヨブヨが更に増すであろう想像は闇に捨て、今を楽しむ。

(…湘南か)

別に海を愛しているとかはない、だが特別である。

やはり湘南、その響き。

門倉は必死に寄り道の衝動を押さえつつ、突き進む。

アイツ等の名古屋へと。


事前に連絡はとってある。

それも一方的なものではない、双方向の通信手段にて、だ。

門倉に出来て本部に出来ない理由。

特にそこまでの裏はない、旧知の仲…程度の話だろう。

門倉は勝手知ったる道中を鼻唄混じりに進み、

ナビが無くとも迷うことなく到着してゆく。

ベニス戦隊名古屋支所、支部へと昇格する条件で満たしていないのは5人編成であるという1点のみ。

まぁ、そこは彼等の曲げれぬ所故、彼等が引退するまでは支所のままなのである。

藤園兄弟が名古屋で戦う内は。

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