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③ー3

ー3


『まず、皆さんに伝えなければ成らない事があります』

出羽の開口一番は、現実を突き付ける事。

嘘や幻では無いという現状を、伝えなければならない。

『報道等でご存知でしょうが…今人類は絶滅危惧…』

種を付けかけて止める。

彼も冷静ではないのか、確かに両拳は握られ、その中は汗の洪水にてベタベタである。

『奴等の要求が成された時から、カウントダウンが始まります』

隠す必要はある、そして政府発表しない方が良い時もある。

知らずに果てる方が良い、と。

だが出羽は公式発表の形を選んだ、絶滅危惧種なのだ我々は。

それを理解したる者が集い、何かの融合が発生し、新たなる道が見えるかもしれない。

結局、お手上げなのだ。

何も、政府としてやれる事が無いという虚しさ。

そして絶滅するしかないという未来。

そんな状況でも、我々は胸を張り、チカラいっぱい生き、そして死を受け入れる。

潔く、悪に染まらず、美しく。

日本人の持つ武士のDNA、それに託す。

『明日、死ぬかもしれない』

出羽は溜めた、そして立ち上がり頭を下げる。

深々と。

『それが、今地球が、人類が、日本が、直面している全てです』

TVショーやらネットやら、各種にて論じられ、資料も出され、奴等の存在を騒ぎ立てられている今、

この説明だけで理解できるだろう?…である。

『今だに、何の連絡も無いのですか!』

ざわつく会場と、ようやく座り直した出羽と、それを待っていた記者の質問。

だが、その答えは決まっている。

『奴等が来て、もうすぐ丸一日。今だに連絡は無い…世界中どこにも』

記者の中には、現実を深く受け入れすぎた者もいる。

だが、逆に何かを残したくて声を張り上げる者もいる。

出羽はその者に答え続けるのだ。

『いや、何もコンタクトなしに総攻撃は無い』

それは過去の歴史と資料が証明している、と。

『対策は、何も無いのですか?』

出羽は息を吸い込み、ゆっくりと吐く。

そしてこれからの発言に、希望を込めるのだ。

『詳しく話すと、その可能性が消えるので…』

出羽は握り締めた右拳に左手を重ねてゆく。

まるで祈りの仕草、神に…ではない、彼等に祈るのだ。

『ですが、必ず果たしてくれると、私は信じています』

出羽はカメラ目線でその想いを飛ばした。

全国のベニス戦隊に、届くように強く。

『皆さんも、信じて、祈っていて下さい』

何に祈ればいいのだ?

具体的な姿を示してくれなければ、祈れる訳もない。

だが、それでいいのだ。

各々が信じる何かに対して、祈りを捧げる。

そうしてくれたなら、バカな行動を取る輩も減るだろう(少しは)

『何かまた、公式発表出来る事があれば…』

出羽の国民放送は、終了した。

それを観た者が何を感じ、その後どうするか。

最悪なベクトルへと進まなければ良いが…

それはベニス戦隊が成功者となるかどうかよりも、確率の低い祈りとなりそうだった。


一般的に、明日地球が滅亡しますよ…と聞かされたら、どうなるだろう?

愛せる人と、最後まで共に…は綺麗事?

いやそうなる、そう考える人々は必ずいると思われる。

だが愛せる人の居ない者は、幾つかに分類されるだろう。

①絶望し何もしない者…まぁそれでよい、被害はない。

②絶望し泣き叫ぶ者…まぁ、それでよい、煩いだけだ。

③理性を無くし、やりたい放題…やっかいである、でもまだ軽犯罪。

④理性を無くし、本当にやりたい放題…やっかいである、重犯罪。

⑤理性を無くしたフリをし、やり放題…理性が残っているだけに、やっかいである。

⑥先導する者に追従する者…最もやっかいである、群集は薬にも毒にもなる。

日本人はどこの割合が多いだろう?

①か②であって欲しいと願うも、恐らくは⑥。

何も考えられず考えず、回りに合わせ行動する。

善悪の区別やら、あろう訳もなく。

右と言われれば右を、左に皆が動けば左に。

その群集が去った後は、見るも無惨な焼け野原、か。

『統括…?』

小杉は我に戻され、少し恨む。

出来ればもう少し、現実逃避していたかったのに。

ここで…とか言う限定ではなく、彼女は統括と呼ぶ。

パパと呼んでくれた時代だってあったのにな…。

『今日の会合、そろそろですよ』

昨日、顔合わせ程度で終わった全国ベニス戦隊初の隊員間ネットワーク会合。価値を見出だすのはこれからである。

『よし、行こう』

議長として、小杉は今日も出席す。


4つ目のモニターは今日も真っ暗。

やはり出席はせぬ、か。

期待していた訳ではないので、特に何も思わぬ小杉は、進行す。

『どこか、動きのあった所は?』

北海道の椿原がモニター内にて挙手している。

やらせときながら、滑稽な絵だ…。

『一部の宗教団体が、円盤の下にて祈りを捧げています、まるで神様のように』

総理が祈れとは言ったが、そこに行き着いたか。

なかなかの発想に、少し浸る。

『日本語と英語で、あなた方に捧げ尽くします、と横断幕を…』

殺し滅ぼそうとしている相手に、捧げれるものが何か、分かってんのかな?

この星から居なくなれ、と言う相手が君達なら残ってていいよ~って?

…はて、これまでのパターンにあったのだろうか?

小杉は調べるべき事柄を忘れぬようにメモっとく。

もしかしたら、今回の最大のキモになるかもしれない!

『警察が再三退く様に言ってますが、さっぱり』

勿論、遠くから拡声器にて、だけど。

(近付けない、普通は)

『とりあえず、そのまま様子を見ましょう、どう対処するかも見たいし』

我ながら議長っぽくしてるな…と御満悦の小杉。

さぁ、次なる話題を振ってくれたまへ~。

『いいですか?』

沖縄ベニスの新垣…は欠席。

代わりに沖縄ベニスの頭脳、比嘉が。

『予定通り今夜、福岡支所に移動しますが…』

沖縄ベニス担当は九州。

沖縄に居ても、なので早々に移動し、福岡支所へ。

それは前回決めたこと。

『各支所との連携、我々に一任と…』

沖縄ベニスだけでやるか、はたまた九州各支所のチカラを結集するか。

沖縄ベニスに任せてある。

やり易い方で、頼むと。

『結論から言いますけど、結集させるべきです』

そこに、沖縄ベニスのやり易さなど不要。

集めるだけ集めて、ドカンと!

『…確かに、集められるがベスト』

小杉は自身に言い聞かせるように、ゆっくりと話す。

『だが今回、一番大事なのはタイミングとスピード』

それを蔑ろにする位なら、結集など不要。

思ったよりも早く結論を頂けたので、比嘉は満足し言葉を添える。

『分かりました、作戦を最優先し不要とあらば即棄てます』

怖いこと言うな、顔に似合わず?

いや小麦色に焼けた肌と黒髪ショートカット

似合わないって事はない、少し年齢からして驚いただけだ、棄てるだなんてさ。

同じ女性ベニス戦隊でも、色々おるなぁ…と、行方知れずの部下を思う、小杉であった。

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