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③ー1

ベニス戦隊 ~遥かなる蒼忙~


ー 第3部 ー



ー1


明日はきっとくる、そんな言葉で自身の感情をコントロールし、

今日を明日を生きる活力と気力を得るのが人間的。

それを知人・友人にも広め、みんなで頑張って生きて行こうね、っと肩を組む。

そんな未来ばかりなら苦労等しなくて、毎日が楽しく過ぎ去る訳で。

でも、明日がないとの大前提がある時、どうするのだろう。

明日までの今を、精一杯悔いなく生きよう!

なんて、誰が言える?

明日は無いのだ、頑張る意味など無い。

人間らしく誇り高く、そんな大儀で散って逝く事が意味ある行為というなら、

それしか残されていないだろう。

それは悪あがきとも取れる。

現実を拒絶したいが為の、最後の悪あがきと…。


『統括!見てください!』

ベニス戦隊東京支部、フロア10。

オペレーショナル・ルームの巨大モニターに写し出される世界の姿。

5秒刻みで世界旅行感覚に陥れるが、今日は旅行なんて名義で楽しめる状況にない。

『世界の主要都市に、無数の宇宙船だと…』

理解できる範囲と、それを解決できる範囲と。

今回はどちらもない。全てにおいてキャパ・オーバーである。

『攻撃は開始されてません…各国の主要空港のみ、壊滅です…』

主要空港…それは空港整備法において「第一種空港」に指定された空港となりそうである。

日本で言うなら羽田空港、成田空港、伊丹空港、関西空港、中部空港の5つ、か。

その五ヶ所は激しい攻撃にさらされ、

もはやその空港としての機能は皆無であろう。

『…何か声明はないのか?』

返事がない所をみると、接触した国家はなさそうだ。

『…反撃を開始した国はありますが…』

先は言えない、言うべき言葉がない。

小杉統括と数人のオペレーター、そのまま言葉を失ってゆく。

5秒刻みの映像が、あまりにも現実離れしてるからもあり、

それに食い入る。

各国の空港が映る度、撃墜された翼にて国名が分かる。

その反対は無い、小型挺自体存在しないのか、いや出す必要もないのだろうか。

宇宙船からの攻撃と、見えない壁により破壊されている様子。

まったく、歯が立たないではないか。

このちっぽけな地球内でドングリの背比べをしていたのがよく分かる。

こんなもの、何の価値も無かったのだ。

『なす術なく…か』

数分後には変わらぬ景色が次々と映し出されるだけとなり、

無用な反抗期が終わったのだと伝わってくる。

大国と言われた国々が、抗うことを諦める。

そんな現実に、誰も感覚を取り戻せずにいた訳で。

『…羽田、羽田は?!』

牧野がようやく感覚を少し取り戻した。

そうだ、羽田に行った仲間がいる。

彼女が帰国し、彼女が送りにいってる…。

『石原!』

小杉が一番の信頼をおく者の名前を叫ぶ。

交遊歴の長い彼女はすぐに理解し、モニターを固定させてゆくのだ。

『…ひどい、なんでここまで…』

炎やら煙やら、一部にその姿を残すものの、見るべき所はない。

当然のごとく、こんな状況で命が変わりなく存在しているとは思えない。

『…連絡を、杉本さんに!』

石原の横に座るオペレーターが首を振る。

繋がらない、それが意味する事が何かまでは、理解も想像もしたくないが。

『私、行ってきます!』

フロア10、オペレーショナル・ルームを飛び出す牧野。

それを、ちょうど入室してきた川端が制止する。

『ぬしの使命を言ってみろ』

両肩を鷲掴みにされつつ、ガン睨み。

これは答えないと…(後が怖い)

『…人類に害をなすと認識される怪人の排除、です』

ガンは強化され、そこには大きな力が加わってゆく。

『そうだ、それが我々の宿命。そしてそれが今!』

左肩から外された掌が、モニターを指す。

『あれを何とかせねば、人類は滅ぶ』

川端は、聞いている。シューレより。

奴等の事を。

『ほぼ、間違いない。あれが奴等だ』

…早すぎる、それが小杉の本心。

まだ対策も何も、立てられてないのに。

弟子の感情は読み取るが安し、川端は小杉に最高のガンと共に伝える。

『泣き言は後だ、今来てしまったものをどうするかだ』

そう、どうするのだ?

あんなの、戦隊の力でどうこう出来るって言うのか…?

『奴等は組織だ、命令は縦、上から下へ』

そろそろ右肩も解放して欲しいな、と思いつつ、牧野が続く。

『つまり、あの中にも上が存在するから、そこを叩けば?』

頷く川端、流石だと目力に込める。

(いいから左手離してよ、と目力で返す牧野)

『まずは国内の事を、国内の上を探すぞ!』


国内の上、日本壊滅担当の部隊長、か。

つまり日本の中枢に来ているハズ、ならば。

小杉が示した場所は国会議事堂。

案の定、埋め尽くされる空飛ぶ円盤に国会の空。

『陣形的に推測すると、…これか?』

確証は無いし、このカメラで捉えきれてない部分に居ないとも限らない。

だが、とにかく目標は定まった。

だが…

『国内に、船団は5箇所です…本当に東京が当たりでしょうか?』

石原の推測は、有り得るパーセンテージが常に五分以上。

ならば今回もそれが当てはまり、東京が外れとなる?

『ベストは5箇所同時だが…』

偉大なる師匠の呟きに、答えを持つ男の名は小杉。

『奴等が上下なら、こちらは横を使いましょう』

分かり辛いよ!っとガンで応戦する男の名は川端。

師匠、そこは分かろうよ…と目で呟く。


『国内の各支部と連絡を、か』

本当に分かって無かったのが凄いのやら何やら。

貴方、元レッドでしょ!とか思ってみたり。

(発言すると身の危険が迫るので、思うだけ小杉)

『はい、各支部へのホットラインを開きます』

それは早い方がいい、各支部の諸事情で単独行動されないように。

『石原!』

名前呼ばれる前に始めていた石原オペレーター主任、

親指を立てて、無言の返信。

…まったく、頼もしいよ君たち。

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