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②ー28

ー28


交渉には時期とかタイミングがある。

だから全てをさらけ出した後の交渉は、

双方にとって満足の結果と成る事も多いだろう。

今回、始めから交渉がメインなら、

①命ある内に希望者を募る。

②希望者(身内の同意込み)が人生を全うした後、幹部クラスの怪人化を施術。

③記憶等そのままに、若返る希望者。

④施術契約事項にある【奴等】に対抗すべく訓練を行う。

⑤怪人としての力を不正に利用した場合、速やかにベニス戦隊により問答無用に排除される。

…そんな所か。

だから話の流れさえスムージーなら、誰も苦しまず、誰も失わず済んだ話となる。

無駄なことなど無いが、回避できた戦い。

そこに虚しさがあるが、声を大にする程の後悔はない。

精一杯生きたのだから、否定したくもないし。

だが、眼前の光景を受け入れたくないから、やはり否定する。

もっと上手く進めるべきだったと。

『…ステイシア、何よ優しい顔しちゃって…』

レイニーは泣いた、大声を張り上げる様な出来事ではないが、頬には伝うべき物がある。

先程のシューレ同様に、笑顔で果てれる事、

それに嫉妬するけど今すぐ真似たくもない。

やはり、死は恐ろしい。

『連れて帰りたいけど、何処に?』

杉本はレイニーを見た、彼女なら知っている?

『心当たりあるし、私が担ぐわ…』

手伝うべきか悩む、が悩む程の問題でもない。

牧野は涙を拭きつつ反対の肩を持ち上げてゆく。

もう、冷たかった。

さっきまて、あんなに温かみのある人だったのに。

『ロシア語、教えて欲しかったのに…』

拭けども流れる、だから何度でも拭く。

牧野がほぼノーメイクだから許された行為。

これが杉本なら、顔面は崩壊していただろう…

(…そこまでは盛っていない!by杉本)

『あ…!』

本当に忘れていた、失礼な!っとはあんまり思わない。

『川端さん、2人は…?』

川端も、絵に描いたあっ!という顔を披露する。

彼も本当に忘れていた様だ。

『ここで飲み込まれるようなら、もはや不要、捨て置けぃ!』

いやいや、そーゆー訳にも行かないよ、とお迎えに。

…案の定、まだ寝てるね。

川端は洗面所より、冷水を並々と注いだバケツを。

一気に彼らへと。

目覚ましとしての性能的はトップクラス、

当然の如く、2人起床す。

『…ったく、終わったよお二人さん』

もしかして岡ボシ先生と同じ扱いに成りつつある?

受け入れ拒絶の現実に、しばしボーゼンの御堂、だがそれが現実だ!

『…ステイシア』

御堂が放心中に、岡林は気付く。

さっき仲間に成ったばかりで、もうサヨナラかよ、と。

岡林はステイシアに対して頭を下げた。

そして彼女の亡骸に届く声量にて…

『申し訳ない、俺が不甲斐ないばかりに…』

それが分かってればいい、今はそれで。

川端は岡林に手を貸し、立たせてゆく。

『さぁ、最後の仕事が残っているぞ!』

残党処理、それも重要な仕事である。

『まったく、同じベニスとして見てられない』

一部あれ?っと思う表記があれど、聞き流す2人。

それは彼の指先により、身体に力が沸いて来たから。

そんな些細?な事より、こちらが優先。

『ウチの医療班、インチキだけど凄いでしょ?』

展開は不明だが、何やら不思議なる状況で。

まぁ、便利なメンバーが加わったと思えば良いのかとりあえず。

『よし、屋上へ行こう』

状況把握とヘリポート、第一歩として相応しい選択。

全員、速やかに移動を開始してゆく。


『…で、まだ連絡つかないの?』

待ち人来ず、はたまた待ってるハズの人居らず。

こっちが命すり減らしてる間に、彼方にも何かあったのだろうか。

『ま、待っててもしょうがないし…』

オペ棟の屋上に昇りし8名(内1名は遺体)

『始めますか、残党処理』

軽く言われますけど、結構な数。

中々に骨が折れそうである。

更に言うなら指揮系統を完全に失った無法地帯。

襲いかかる者もいれば、そこに佇むだけの者もいるだろう。

その全てを狩らなければならない。

それが、この旅の終点。

『ステイシアは、ここで待ってて』

5人はコウモリとなり、1人は舞い降り、1人は岡林に運ばれ。

各々が武器を持ち、各々がその意義を探し、各々が決断した最後の仕事。

虚しいだけの時間、始まる。


この消えゆく存在に、それぞれの物語があって、

その一つ一つを汲む事は不可能であり、

それにばかり眼を向けていては、

この作業は完了されない。

一部のお楽しみ時間体験中は置いといて、基本的に皆謝罪をしながらの戦いとなる。

まぁ、戦いという程の美学はどこにもなくて、

ただの殺戮、完全強者による一方的なる打破。

青く染まってゆく身体に嫌悪しつつ、仕事と割り切りやるだけである。

そんな彼女等の耳に届くヘリコプターの羽の音。

あぁ、ようやく回収信号を受けて来たのか小杉統括よ。

…音が一つではない?

『あれはロシアの…そうか、横取りに来たか』

上空を埋め尽くす数十機の武装ヘリコプター、そしてその内部よりアサルトライフル等を所持したる者がラペリングにて大地へと。

そしてそのまま銃を乱射、辺りを怪人の亡骸だらけへと変化させてゆく。

まだ、我々は命を賭けて戦ったもの同士だから許される(気がする)。

だが彼等は今突然来て、そして何の背景もなしに、ひたすらに殺戮してゆく。

人類の仇め!っとでも言わんばかりに。

そうではない、彼等は被害者なのだ、人類最大の被害者。

それを腫れ物に触るの如く、殺していくなんて。

ちょっと、止めなさいよ!

…と叫びそうな自身、だがその行為に及ばない身体。

6名は手を止めて、その一方的なる狩猟を傍観していた。

(1名は依然楽しみ中)

正直、疲れていた。この何も産み出さない最後の仕事に、

嫌気は満ち足りていたから、

ヤメられるなら、それが一番。

例え眼前で不愉快な殺戮がなされようとも、

止める=また自らがその不愉快をしないといけない?

そう思うと、身体は拒絶し、立ち尽くすのみとなる。

『…屋上に、ヘリが!』

小杉統括のレンタルヘリではない。

今来た団体様のひとつ、なぜそこに?

『彼女の遺体、こちらで引き取らさせて貰います』

流暢な英語、だからといってネイティブではない。

訓練された、限りなくネイティブの近い他国語。

レイニーの目に憎悪あるとき、相手は大体がロシアの一部の組織所属の方。

『ワレンチン・ヴォルコワ…』

知り合い?はたまたデータとして知ってるだけ?

『レイニー・クリフト、か。…知らぬ間に服の趣味が変わったのだな?』

そこは突っ込まれたくない箇所!

レイニーはモゴモゴしつつ、話を進める。

『で、軍事防諜部の上官様が、こんなところに何の御用?』

その上官様の部下の行動見れば、分かるんだけどね。

『国内の事は国内で、まぁ遅すぎるがな』

確かに遅い、もっと早くに来れたハズだ。

…まぁ、動きを検知されたら即ドカンだったのもあるので、

仕方ない事だが。

『忍び込ませておいた職員からの合図で、か。相変わらずの戦法ね』

重要な所では信頼のおける人力にて対処する。

ヴォルコワの基本戦術、昔も今も。

レイニーの言葉にトゲがあると感じるのは、

親友だけてはない。

信頼出来る部下を送り、潜入させ、結果を得る。

失敗した事もあるだろう。

その際、侵入した者は戻らない。

殺されるか、はたまた…改造されるか、か。

思い当たる節はある。

特に問いただす予定もないが。

『…とにかく、ステイシアの事、宜しく』

心身共に疲労困憊のレイニー、口論の無駄に気付き切り上げ。

『行こう杉本、我々の任務は終わったよ』

確かにこれ以上は不要、後始末は綺麗サッパリ実施されるだろう。

FSBと、ロシア陸空軍のチカラによってスムーズに。

『えぇ、日本に帰ろっか』

ベニス戦隊、クラール最重要基地を後にする…徒歩で。

『ホント、理由次第では容赦しないからね…』

旅の終わりは愚痴大会、対象は1人しかいない上司。

『お主らの手を汚す事はない、元教え子の不始末は任せて貰おう!』

少しだけ同情する、小杉統括と同性の2名。

『ばたやん、やり過ぎなんだよ毎回さ』

耳打ち効果もなく、お仕置きを頂戴する岡林。

『岡林さんの事、お気に入りなんですね』

そのやり取りが楽しくて、牧野は聞く。

嫌なこと、忘れさせてくれてありがとう、の想いも込めて。

『ぬ?…まぁ奴位だ、今だに師匠と呼ばんのはな』

永遠にばたやん、だが永遠に師匠よりはいい。

やはり何時かは越えて欲しいのだから。

『何にせよ、今回は岡ボシが迷惑をかけた。次回までに必ず…!』

その握り拳怖いです…と愛想笑い。

まぁ、確かに次は護られたいけどね、ウチの男どもに!

それは女性陣共通の認識となる。

まぁ、ある意味男性陣も含めた認識だけど。

何時しか治まっていた吹雪と、時間の経過による賜物、夜空の煌めきが。

6人の心を癒せよ語りかけている様で。

(1人は特に癒す意味なし)

それを有り難く頂戴する面々であった。

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