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②ー22

ー22


天から舞い降りる物全てが、神様の仕業なんて事はない。

杉本は天を見つめた、そこは天井があるだけの殺風景なもの。

だが、それが人としての最後の景色となる?

それは嫌だとばかりに横を見た、牧野がこちらも見ている。

『…さん、杉本さ…』

そんな顔するなと言いたい、どうせ後でまた会えるじゃないか。

怪人として、シューレの部下として共に。

そのままの流れで親友を見る。

…眼が合った、それで伝わる。

そんな関係だったなと、願わくば怪人化した後も、このままでありたい。

杉本は親友へと笑みを飛ばす。

それを受けた親友も、応じて行く。

十分に戦った、そう…もう…

杉本の真横に、シューレの足が到着。

シューレは無言でテイクバック、掌に握りし自らの血肉を捩じ込むのだ。

…再び杉本は天を見つめた。

天から舞い降りる全ての物が、神様の仕業ではない、か。

ではあれはなんだろう?

あの塊は、神か悪魔の仕業なのか?

テイクバック中のシューレの頭上に、彼をすっぽりと覆うほどの塊が浮いている。

そして間髪入れず落下、気付いたシューレはバックステップにて回避。

杉本には、それが何か直ぐに分かった。

まぁ、散々落とされたのだから、嫌でも記憶させられているのだが。

『まったく、何やってるんですか?』

ニヤケ仮面似合わないって忠告、ちゃんと聞いてくれたのね…。

『…グラス…グラストゥー…』

忘れていたはずの名前は、突如降臨し、杉本は迷わず発言していた。

『グラストゥー? …聞いた事ある気もしますが…』

悩めるシューレに不要だと告げるグラストゥー。

『日本で活動してただけの存在、知ってる訳もなし…』

そして。

『貴方が知った所で無意味です、誰かに教える機会も無いですからね』

話の流れからするとグラストゥーはベニス側?

なぜ…?

そんな眼をしていたのだろう、直ぐさま彼は答えてくれた。

『杉本を殺すのが私の生き甲斐、と言っておきます』

身体は小さいのにイケメンなのだから、そんな笑顔されたら赤くなるよ、と杉本。

さぁ、立ちなさい…とばかりに手を差し出してくるグラストゥー。

『…えと、身体中ボロボロで、動けませんの…』

グラストゥーは少々驚きの顔を魅せる。

その程度の傷で?的である。

『まったく、人間とは不便な生き物ですね…』

やれやれ顔のグラストゥー、人差し指をクルンと回す。

何やら温かい綿にでも包まれている様な感覚。

…身体がゆっくりと軽くなっていく?

『さぁ、今度こそ』

再び差し出される掌、そしてその先にある笑顔。

この人、怪人だよね?となる感じ。

交差点であんな事してたのと同一人物なのかしら?

杉本は右掌をグーパーしてみる。

なんの違和感もなく動くぞ?

続いてその差し出された掌めがけて伸ばしてみる。

『勿体ぶらずに、さぁ』

一気に引き起こされる杉本、ヨロヨロっと無事起立。

『うそ…どこも痛くない』

そらそうよ、とばかりのドヤ顔のグラストゥー。

知らない間に随分と人間臭くなったもんだ。

『て、なんでここに居るの??』

メル友なんてオチもない、ロシアにいるなんて、知るハズもないのに。

『まぁ、色々と…それよりも酷い顔だ』

グラストゥーはパチンコ屋よりの頂戴品であるウェットティッシュにて、杉本の血糊だらけの顔を拭いてゆく。

『ちょっと、化粧まで落とす気なの?』

『大丈夫、すっぴんでも見れたもんだ』

時間は停止している訳ではないのだが、ここだけ突然空気が変わっていた。

怪人と人間、融合という形は多種多様であると言う事を証明している空間であった。

それを理解しつつ、その空間を裂く事を決意したシューレは、戦闘モードへと変形していく。

『さぁ、続けるのですね?』

その声に反応し、同時に声の主をみる2人。

息ピッタリである。

『ごめんね、貴方の部下になってもいいかな?と思ったけどね』

それにグラストゥーは追加する。

『残念ながら先約があってね、杉本は私の所有物ですから』

こらっ!となるも、直ぐに変わる空気。

それは怒り、グラストゥーの怒りの感情が全面に押し出された表情である。

よくも杉本を痛め付けたな…的か。

まぁ確かに、後数秒遅かったら杉本は怪人化。

グラストゥーでも取り戻せなかっただろう、人間の杉本を。

『あ…』

杉本は気付いた(遅いけど)、後ろの二人も治して貰おう。

『…?。。。私が人間の為に魔力を使うなんて、有り得ないですけど?』

さっき使ったのは誰だよ、とか思いつつ。

『いいじゃん、ちょっと位!』

怒った顔も可愛いな、そんな顔されたら了承してしまうな。

『ダメです、今から私と杉本2人が戦うんですから』

『じゃー観客でいいから!』

折れたグラストゥー、全力のやれやれ顔にて2回指を回す。

温かい綿に包まれた二人、復活である。

『…なんだか反則だよね怪人てさ、やっぱり』

アメリカ式のヤレヤレ顔のレイニー、かといって怪人に成りたい訳じゃない!

『ありがとうございました、グラスさん』

深々と頭を下げる牧野、また目の前で仲間を失う所だった…。

グラスさんに照れるのか、感謝される事に慣れてないのか。

顔を赤らめたグラストゥー、何やらゴニョゴニョ。

『何照れてるの?子供じゃあるまいし…』

『案外可愛いじゃない、グラスちゃん』

戦闘中に戦闘を忘れられる時がある。

血生臭い環境の中でも笑顔になれる。

それは仲間がいるから、心を通わせた仲間が居てくれるから。

…シューレにそれはない。

いや、勿論居た、フレダスト星に。

それを思い出すと胸は痛む、そして本当に必要なものが何かを、思い知らされるのだ。

だからといって、もはや…。

『さぁ、2対でも4対でもいいので、早くして下さい。待ちくたびれました』

これは失礼とばかりに前へ出る2人と下がる2人。

杉本もベニスソード終極を手にし、心身ともにリフレッシュである。

『で、プランは?』

『出たとこ、です』

戦いを楽しめると良い、だか結末には必ず血が流れ、命が消えてしまう。

それでも楽しめる、異常な感覚かもしれないが、そうでなければ本来の力を発揮する事なく、消える側の命となるのだから。

この楽しみし両陣営、結果がどうあれ遺恨等は残さないだろう。

散々楽しんだのだ、文句言うのは御門違いってもんである。

『行くぞ杉本!』

あ、段々とタメ口になってきたな…と思いつつ。

それはそれで悪くないな、と杉本の心の談である。


グラストゥーは得意の結晶の塊にて刀を精製する。

右手と同化した、結晶刀である。

『それ、簡単に割れちゃうんじゃないの?』

気になる事は聞く、それが座右の銘…の、ひとつ。

グラストゥーは軽く2,3回振りつつ。

『固さの調整してるから、結構カチカチ』

外観は変わらないのだが、まぁ本人が言うなら…と忘れる。

一方の杉本、やはり終極が手に馴染む。

カッコ付けて朧持たないで、早々に終極持てば良かったと、少し後悔。

左右より挟むパターン…ではない。

彼女等の出たとこは前後。

背の低いグラストゥーを前に、後ろから杉本が攻撃を与えるのだ。

『即興であれですか…なんかお似合いですねぇ』

観客になる=おばちゃん化する訳ではないのだが、ちょっと入ってるレイニー。

愚痴りつつ、観戦。

影響を受けやすい牧野もおばちゃん化しつつ、共に観戦となる。

前方からの厚みのある攻撃、なかなかに強烈。

防で手一杯のシューレ、たまらずバックステップにて逃走。

も、逃がさぬ2人はそれよりも速くダッシュし、更なる厚みを加えて行くのだ。

シューレにとって、全快の杉本だけでも読み違えてるのに、更にそこに得たいの知れぬ結晶使いのコラボ。

リズム等を掴みきれていない今、後手に回らざるを得ない訳で。

幾度となく刃が皮膚を裂き、硬化させた皮膚だけでは防ぎきれない攻撃力であると体感。

ならば攻めるのみである。

『カルセルトグル!』

両拳からの一斉射出、受けるは結晶使い。

『グラス・カーテン…』

変な名前だ、たぶん日本生活の中で名前を変えたのだろうけど。

仮面のデザインを含めて、この人センス無いな…とか杉本が考えてる間に、グラストゥーの前方に展開される結晶の壁。

それは激しい着弾音の後、崩壊。

そして消失する2つの人影。

見失った期間は僅かだが、戦いの中では大いなる時間。

『…上か!』

言葉と同時に切られる両肩付近、流れ出る青き鮮血と痛みに反応したシューレの声。

『うーん、刀の幅すら入らない、か。なかなかの固さだ』

結晶の色か血糊か分からない刀を眺めつつ、グラストゥーは思う。

致命傷に成らない、と。

目の前の生物が自身と同等の生態能力を持つのなら、後数秒で傷は塞がるだろう。

…ほらね、血も止まってるし。

少々やっかいな敵である事を再認識したグラストゥー、相方を見る。

『なんかないの?必殺技』

ん~と考えながらも考えていない杉本。

だって必殺技と呼べそうなのは、多分あれだけ。

『あるにはあるけど、必殺技かな?位のモノよ今や』

一度破られたし、ちょっと使うの怖い、もあるが。

『ん、それだして。フォローするし』

まったく軽く言うなよなぁ…とか思いつつ、杉本は嫌な記憶を消す作業に取りかかる。

あれは痛かった、死んだかと思ったし。

だが恐怖とは乗り越えるもの、ここでそれを…

杉本はグラストゥーを見た、そうか彼がいる。

もしまた破られようとも、彼のフォローがあるならば、再び痛みに苦しむ事はないだろう。

『OKじゃ、フォロー宜しくね!』

杉本、今日覚えたばっかの技に頼りきりな自身を笑いつつ、いざ放つ。

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