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②ー20

ー20


愛しているから、間違った考えに至った時に止めに行く。

その結果、愛した人を失ったとしても、か。

牧野には無い、その選択。

もし愛した人が間違った道に迷い混んだなら、探し出し説得し、でも駄目なら…

きっと私も一緒に迷うだろう。

だって好きなんだもん、失いたくないもん。

失ったからこそ分かる、失うと言う意味と重さを。

次の無い感覚を。

『牧野、左右から』

意識を戦場に残しつつの回想、速やかにスイッチを切る牧野。

左手に握られた残月、その託された意味が分からぬ牧野ではない。

ステイシアの想いを、全部込めて。

『…戦うのですか?何のために?』

どこまでの本気かは分からない、だがこちらからはある、大いなる訳が。

『貴方が人類に害を成す存在だから排除する、それだけよ!』

ほほ~うと感心した表情にて応じるシューレ。

ほんと、どこまで本当なのやら…。

『私が与えるのは栄治、人類の繁栄…』

何を仰っているのだろう?

散々実験と称して命を奪ったくせに!

『あと少しなんです、本当の意味での永遠の命』

左右の二人、しばし耳を傾ける。


【永遠の命、欲しいですか?】

老いもせず、病気にも成らず、怪我も直ぐに完治。

あげるよ?と言われた時、何と答えるだろう。

老いて逝くから人生だ!

…まぁ、否定はしない。

今の顔で、永遠に?嫌よ!

…そんなに嫌なら整形もあるよ。

ずっと二十歳、永遠の二十歳!

…なんなら10歳位の子供のままにも出来ますよ?

得る事は多そうだが、逆に手に入らないものや、味わえない出来事がありそうである。

入学、卒業、別れ、引退、今年が最後ですという悲愴感、オリンピックの価値(4年後頑張ればいいや感満載)…等。

それすなわち涙という概念が、体感からではなく演出等による創られたモノからしか生まれないという悲しみがある訳で。

永遠の輝きというダイヤが、本当に永遠なのかを確かめる必要はないのだ。

『欲しくないのですか?永遠の命』

左右の二人は顔を見合わせる。

アイコンタクト、出来たはずだ。

『私の夢はね、孫に囲まれて余生をおくる事よ』

あぁ、牧野らしいなとか思いつつ。

『巻き戻しはしたいけどね、今からの永遠なんて無用』

クラールが消えようとも、この心の想いは無くならない、か。

レイニーはまだまだ引きずるんだろなとか思いつつ。

『いいのですか?奴等が攻めてきた時、どうするのですか?』

『奴ら?』

そういえば言っていた、昔話だし関係ないとか思ってたのだが。

『永遠の命なくして、人類の存亡はないですよ?』

そうなのかも知れない、でも考え方だ。

そこが人類の終点、歴史の最後の1ページ。

それならそれで、いいじゃないか。

人で無くしてまで、人類を残すなんてのは矛盾。

『全人類怪人化、それ以外に無いのですよ?』

レイニーは即座に否定する。

そして堂々と、この発言に魂を込める。

『それなら全人類ベニス化計画よ、それが人類としての本当の栄治、繁栄じゃない?』

全人類がベニススーツを着用し、戦えば良いのだ。

ベニスレッド312049とかのシリアルナンバー付きで。

…なるほど、膨大な費用は各国家予算をかき集めれば良いのだ。

ありかもね…と牧野。

それはシューレにも伝染した模様で、声無き笑いを。

『いいでしょう、分かりやすい。生き残った側が全人類○○化計画を遂行すればいい』

そう、どちらかのプランが採用されようとも、奴らに対抗する事は出来る、ハズ。

『人類の事は人類で、悪いけど退席願おうかしら?』

レイニーは構える、親友の忘れ形見ベニスソード終極を。(勝手に殺すなby杉本)

『私達には、人としての意地があります』

竜泉流にも剣技は存在する、それを披露すべく残月を討伐対象者へと突き出す牧野。

『やりましょう、最後の1滴まで…』

肘から両拳にかけて硬化させてゆくシューレ。

それが彼の戦闘スタイル、皮膚を鋼鉄の様に固くも柔らかくも出来る。

特に誰が鳴らした訳ではないが、3人の脳内にゴングは響き、いざ開戦。


どんな時でも、目覚めるという言葉はいい。

一日の始まりであり、新しい自分の発見であり。

だからこの状況でも清々しい気分に…

なる訳もなく!

腹部の違和感と、うっすらと残る記憶とを擦り合わせ、見つける現実。

(…まずい、カッコ付けて一騎討ちして完敗て、恥ずかし過ぎる…)

杉本の脳内を駆け巡る言い訳の弁、まぁそれを全て発言した所で、聞いてくれる人は居ないのだが。

また独りぼっちだ、おいてけぼりだ。

辺りをキョロキョロするも、仲間どころか敵さえいない。

…唯一眼に止まるは日本刀。

(あれは…朧よね?)

近くに所有者らしき人影はなく、そういえば私の終極も無く。

何が何だか分からないまま、とりあえず立ち上がる杉本。

脱力感が酷いし、何よりお腹が痛む。

本当ならこのまま休みたい、だが本能のまま朧を手に取る。

歴代最高は本当のようだ、残月とも違う輝きに、心が奪われてしまいそうである。

『…杉本…』

弱々しく消え去りそうな声、聞き覚えのある声であり、何やら似た展開の経験が…

『…ステイシア』

ゆっくりと歩み寄る杉本、…血色が悪い?

いえハーフだしそんな肌の色だっけ?

そんな頭の中であるとは想像していないステイシア、ある方向を指差す。

それはシューレが最初に現れた扉、その先を示す指。

『あの向こうに何があるか…2人が戻らないんだ…』

状況を簡潔に聞く、シューレだか奴等だとか、脳内パンクだ。

でも、分かる。

これだけは覆らない。

仲間の敵は敵、共に戦うのが私の勤め。

脱力感だとか言ってられない。

みんなだって限界なんだ。

『行くけど、貴女は大丈夫?』

ダメと言われても、処置する術は無いのだが。

『…あぁ、かすり傷だよ』

痩せ我慢であり嘘であり、でもそれに今は甘える。

『すぐ終わらせて帰ろうね!』

精一杯の強がりには、最大限の空元気。

二人は多くを語ること無く、別離してゆく。

もう少し、話しとけば良かったもしれない。

後で思う事になる位なら…。

壊された扉をくぐる杉本。

お決まりの戦闘音に、意識を注ぐ。

…聞こえない、つまりは更に遠くか小休止か。

はたまた何らかの形で決着している、か。

少し心が震える。

最良の形で決着しているならいい。

主役の出番残しといてよ!っで、済む話。

笑い話として。

心臓の鼓動が聞こえる感覚のまま前進する杉本。

先に見える開かれた扉へ、と。

ガキーンという衝突音。

恐らく間違いない、シールドで防いだ音だ。

今だ戦闘中である事を確信した杉本の足は逸る。

『ん?もう動いても大丈夫なのですか?』

さっき見た顔だ、クラールを征していた人物。

言葉は下からでも、クラールに命令していた雰囲気の男、これがフレダスト星人のシューレか。

なるほど、元人間と言われても何ら疑う事はないだろう。

…そもそもフレダスト星人の外見とはどんなのかしら?

脳内を活性化真っ最中の杉本に構うこと無く、言葉は足されていく。

『まぁ、随分と時間が経ちましたからね、大丈夫かと』

言われて杉本は時計(ベニススーツに付けられているベニスウォッチ)にて確認。

(…3時間??)

何分まで覚えてない為、正確な時間ではない。

だが自身がクラールと戦闘を開始してから3時間も経過しているのか?

『…はぁ、はぁ…動いちゃダメです、よ…』

シールドを杖代わりに立っている(のがやっとの)牧野、残った力にて笑顔を捻り出している。

レイニーは…いた、方膝を立てたまま固まっている。

肩で息をしているのが分かる、彼女は限界なんだ。

…まぁ、生きていたのだからそれでいい。

『大したものです、ベニススーツ、ここまで続けられるとわね』

無傷では無い、だが致命傷は受けた様子がない。

それ程の敵か、勝負になるだろうか?

この傷付いた身体の私で。

まぁ、そんな悩みに意味はない。やるしかないのだ、3人の中で動ける部類に入る自分が。

『これなら確かに、出来るかもしれませんねベニス化で』

ステイシアから聞いてない部分、杉本にはピンと来ない。

『どうでしょうお二人さん、全人類じゃなくて半人類づつにしますか?』

レイニーは今、体力の回復に全力投球中なのでシカト。

代わりに牧野が地面に座り込みつつ答える。

『…交渉の余地はないです』

頭が固くて頑固、それは親父譲りよと牧野談。

『そうですか…残念です』

1厘も敗けを想像していないシューレ、今は上からモード。

『貴女達を認めると言っているのです、共に奴らに対抗すればいい』

半分は多い、かといって数人では意味がないし、何よりその数人に死ねと強要しなければならない。

とうてい飲めないし、自分か身内が当たった時、どうすれば良いのだ?

『…来るかどうかも不明なモノの為に、怪人化召集の札は切れない』

牧野の中にある残された闘志に灯を。

だが、身体は反応してはくれず、状況は座りこんだままである。

『いいから、休んどいて牧野』

リーダーとして、年上として、先輩として、前へ。

『クラールがこだわった理由、聞けず終いでした…そこが唯一の心残り』

自分で奪っておいて、何を残すというのだ。

『貴方にも分かるように、きっちりと教えてあげるから』

答えの知らない自分が何を教えると言うのだ?

とか、思いつつ…。

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