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②-7


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駆け付けた時、1人しかいない現状。

まさか…と項垂れる前に、グリーンから一言。

『あの人は離脱だ、殺しちゃならない怪人を護るんだって』

理解できる事ではない、即座にメット通信開線も不通。

どちらかと言えば電源OFFってる感じ?

『もう少し、説明貰えないかな?』

杉本は御堂の【この時】が苦手である。不意に陰に落ちる時の御堂が。

(なんか今にも殴りかかられそうで、怖いよね…)

本来は見ないフリをしたいのだが、この時ばかりは聞かなければならない。

御堂は省略する事無く全て語った、自己都合の部分も含めて。

『人間に近い怪人?でも、怪人は怪人なんでしょ?』

単純に岡林が心配である。何をしているのだ一体…?

『探すか、置いて進むか、決めないとね』

前出通り、5人揃う事がベスト、何より御堂を押さえれている今なら彼も現れるだろう。

『そう遠くへは行ってない筈だわ』

本来ならバラバラで探して無線で~なのだが、やはり分断は危険であり、一番に御堂を抑制させる要因がまた欠落する。

赤色を先頭に、4人は現フロア探索へと進む。


『あれだけ嫌っておきながら、人間観察が好きなんだから…』

クラールの側近シューレ、ヤレヤレ顔にて少しばかりの抵抗を見せる。

そう、無意味なのだからこんなのは。

クラールはシューレの煎れたコーヒーにご満悦な表情を浮かべつつ呟く。

『困難に立ち向かい、もがき苦しみ、成長する課程、そしてそれを無毛に狩り獲る行為。』

コーヒーをワインのようにクルクル回すクラール。(それでは味は変わらないのに byシューレ)

『最高の馳走ではないか、それも相手はあのレッド、興奮すら覚えるわ』

あの、とはどの?だろう。クラールは買い被りなのだ。あのレッドにそこまでの価値は無い。

ただのターゲットの一人でしかない。解っている癖に、人が悪い…。

『まぁ、どのレッドでもいいので、早く終わらせてくださいね』

飾るだけ飾った食事セットを片付けつつ、シューレは思う。

(食べれる訳でもないのに並べたり、嫌いな人間で楽しんだり、何が本当なんだか…)

人は悩み、迷い、答えを探し一生を終える。正解に辿り着ける者は一握りで、

皆大体は納得した振りをして生活を続けるのだ。

死ぬ為に生きる、その矛盾に気付きながらも脱線する勇気も無く生命を浪費させる…、

それが人間の本質なのだろうか。

残念ながら、シューレには理解できる世界では無さそうである。

(さぁ、こっちはこっちで終わらせるかな)

表の仕事を終えたシューレ、ゆっくりと裏の顔へとシフトしてゆく…。


『お離しなさい!』

どこまでも古風な言い回しだなと思いつつ、改めて女性を見直す。

やはり人にしか見えない、それがクラールの巧みの技だとしても。

人としてしか対処できぬ…。

『私を拐ってどうするつもりだ?』

誘拐…?そうか、そう言われる行為になるのか。

そして脳内にある考えをまとめてみる。

…特に何も無いぞ? 御堂から護るためにとった行動なだけで、

その先にプランが有ろうハズもなく。

『怖~い緑のお兄さんから護りたかっただけだよ』

とりあえず、素直にいってみた。何言ってるんだ?とは思いつつ。

彼女はそれを聞き、思い出し、体を震わし、怒りの表情を見せる。

『そうだ、あの緑の…大切な部下をよくも…!』

あの緑の仲間なんだよ俺は、とは言えず。

その時、その瞳の矛先は岡林をロックする。なんだ、また不毛な戦いを?

『そなた、見たところ志のあるお方、私に力を貸しては貰えぬか?』

またややこしい展開になりそうな予感満載にて、深めの溜め息を吐き出す岡林であった。


はて、クラールはとことん同士討ちをさせたいのだろうか?

解り易い展開に、苦笑いが取れない岡林は、

とりあえず垂れ流されている彼女の作戦立案をキッチリ聞き流していた。

ノル訳もないのだから。

『ここで紫殿が背後から現れ…にっくき我らの敵の最後です!』

何時から共通の敵になったのだろう?

最後だけ聞き流せなかった男は再び溜め息の渦をメット内に精製させる。

(まぁ、向こうも4人になってるだろう、レイニーも居る、合流すれば後はどうにでもなるわな…)

岡林はメット通信を開く。相手は信頼の赤マークである。


『なるほど、状況はよく分かった…とりあえず合流しましょう』

メット通信をOFFにしていたのは事実(通信する=居場所が判明する)、

だから一応警戒したのだが、あれは間違いなく普段の岡林。

杉本の信頼する同僚である。

『こっち来るって、待ちましょう』

そう言いつつ食堂の椅子へと腰かける杉本。

『私、飲み物探してきます』

牧野は気が利く、そして料理も容姿も体型も性格も、誉める所しかない位のポテンシャルをお持ちで。

(林を好きに成ったことが、唯一のダメな所かな?)

しばしの休息中に考える事ではないかな、とか思いつつ岡林を待つ。


敵対している訳ではない(つもりだ)から、当然前から普通に現れる2人(?)

『とりあえず、御堂抑えといてよ』

レイニーに肩を捕まれる御堂、不満顔はあれど抵抗する素振りは皆無。

『(忘れるな…我らの目標はあくまでも緑色のみだぞ)』

また言ってる…先程から何度も説明してるのに聞く耳持たず。

繰り返される不毛なる時間、終わらない問答。

『(ここまでは、計画通りだな紫殿)』

けいかくどおり?

はて彼女が立てた計画とは何だったか?最後しか覚えていないが…まぁ有り得ない結末だったしな、気にする事も無いか。

全く無警戒のまま歩み寄る両陣営、それもそのはず、ここまで計画通りなのだから。

まず紫殿が友好的に接します、その後は…

勝手に耳に入っていた言葉が思い出される。

(この次、どうなるんだっけ?)

頭の体操を開始するも、残す予定に無かった物だから、降臨する訳もなく。

『よし、いくぞ紫殿!』

あぁ、何かが始まってしまったようだ。

岡林の希望や意図がどうであれ、始まりの合図を放てる者の勝ちである。

彼女は右側面へとダッシュで移動しつつ、懐より取り出した煙玉を地面へと叩きつける。

(あぁ、そうだ。右に行ったと印象付けて煙玉。その後は煙に紛れて左から御堂の背後に、だな)

全てを降臨させた男は、当然それに従う事なく煙の拡散を待つ。

不思議な感覚だった。動いていないのに景色が変わっていく。

移動中の車内から、外を眺めている感じか。

なぜ今?煙の漂い? …いや違う。

(な…体が、勝手に動いている!?)

痴漢行為で捕まった犯人の台詞『駄目な事だとは理解しているのに、体が勝手に…』

今の岡林も、その心境か(岡林が痴漢行為経験者とかではない)

(なんだ…クッ止まれ体!)

ご主人の思考に応えてくれない自身の身体。おまけに声すりゃ出せやしねぇ。

そして自らの意思であるかのように、スムーズに抜刀されいく研ぎ澄まされた、ジャベリン。

(おいおい、シャレになんねぇぞ!)

色々と試すも変わらぬ状況、覆らない計画。

そして煙発生からの移動景色にて分かる、御堂が居た場所の奥、つまり彼の背後を取ったと言うことが。

岡林が目視で緑色を捕らえたと同時に突き立てられる正義の矛。

その目的地も、一応正義として分類される側の人間。

(くそっ!止まれ、止まれ!)

その矛は彼の望みを叶えるだろう。緑に当たれば止まるのだから。

頭の中で絶叫する岡林、だがその腕は伸びきり止まる。

『やはり抑えといて正解だったな杉本』

矛先付近の棍の部分を握り、刺さる直前で停止させたレイニー。

そのままクルリとジャベリンを取り上げてゆく。

『まったく…何やってるのよオカ…』

レイニーに更なる攻撃の準備はあったが、その必要は無さそうなので止め。

煙は食堂の大型換気扇にてすぐに晴れ、見ればあっさりと捕まってるではないか彼女も、。

『まったく…やっぱりさっさと殺しとけば良かったんだ。こんな洗脳受けちゃってさ』

…洗脳?いや、そうではない。そんな事ではない。

『もし洗脳が解けないなら、ここでお別れだ』

何言い出すのだ御堂、そうではないと言ってる…いや言えてない。

まだ身体の自由は与えられていない彼には。

口をパクつかせるだけの、危険な存在である。

そんな存在をじっと見ていたレイニー、記憶の中の凡例を探す…

(洗脳はない、あの身体の拒絶ならない)

レイニーは杉本が押さえている女性を見た。

(あれが主犯?そんなこと出来る風には見えないけど)

近くで見て、それは確信となる。

レイニーは彼女の胸付近を触った(メットを外し女性であることを表明してから)。

追加の証拠、やはり普通の女性だ。

レイニーはフゥっと言葉に出してしまうレベルの溜め息を入れた。

普段なら真実の追求は最高のご馳走なのに、

こんな時に登場されても…的らしい。

だが追求は生命の糧だ!とばかりに違和感を探すレイニー。

(やっぱ杖だよね、第1容疑者は)

倒され確保されていても離さない王笏。

…目の錯覚か、掌と王笏がくっついている??

『なるほど、綺麗な水晶ね』

それは王笏の先にあり、青く輝いていた。

そう、まるであの玉の様に薄気味悪く、そしてどこか美しく。

言葉もなく足をあげ、そしてヒールをピンポイントに水晶の中点に落としてゆくレイニー。

通常よりも固めの強度らしいが、レイニーのヒールはこの世の何よりも固い(自称)。

一撃にて粉砕、中の液体は方々へと飛散し消滅してゆく。

水晶の破壊と同時に苦しみだす女性と、呪縛を解かれた岡林。

結果的に命を奪ってしまったのか?

レイニーの表情は少し曇るもそれは皆受け入れる事柄のハズ、分かってくれるハズ。

そう、信じる。

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