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②-4

-4


隙間風…時にそれは致命傷を与える凶器となる。

小杉にとってこの風は死神の吐息、簡単に意識と魂を刈り取ってしまう訳で。

小杉は動ける内に!っとばかりにテープにてその隙間を塞いでいく。

後で帰ってくる皆が開け辛いとかは後の話、まずは生き残らなければならない自身が。

エンジンをかけて暖房を入れたい所だが、それこそ帰りのガス欠を発生させる危険があり、

今は耐えるのみ…。

小杉は小杉で死に直面していたことを、当然ベニスは知らない。


上階へと昇る過程で分かっていくはずだった研究棟の概要。

まぁ、確かに分かった所もある。だが肝心の要、生成ポイントが見えてこない。

『恐らくは最上階、そこから各部署へと流していくのだろうけど…』

そんな会話をしているこの階が最上階。

そんな部屋、有りそうもなく、人影も少なく。

『おぃ、もう建物ごと破壊してしまおうぜ!』

小言ながら本気の呟きを魅せる御堂、彼の怨念は常に前へと突き進む。

杉本も、正直迷っていた。ピンポイントが理想なだけで、現実はそれに向かっていない。

…ならプチ爆発にて研究員を外に避難させて、か。

そんなに上手く行くものだろうか?

甘い考えの先にある物が自らの敗北であるならば、それは捨てなければならない。

勝利以外、今回は要らない。

『…爆破しよう、全てを』

レッドの決断を、誰も否定しない。それはその先に続く言葉を皆解っているから。

『上で暴れ始めたら、みんな下に行くからさ』

甘い考えは、やはり捨てられない。それが人というもの、それなくしては生きてはいけないのだから。

『了解、では通例通り男性組は北側から始めよう、そっちは南から中央へと』

プランは決まった、あとは行くのみ。

『暴れつつ、ポイントにTFT設置で宜しく…ベニスセット!』

一応やる、というかヘリコ内でやったのだが、テンションが少々上がり過ぎている様子。

それは5人共にいえる事、皆迷うことなく五指を揃え、腕を突き出す。

『ゴー!』

作戦開始の合図となった号令、まぁ作戦と言う程の何かは無いのだが。

力いっぱい暴れる、以上終了なのだから。

二手に分かれていくベニス戦隊、前回と同様の展開に気を揉む者はいない。

皆、全力で暴れるのみ…。


ここはベニスサイドで言う所のB棟18階、クラール御一行様の幹部様宿泊フロアである。

各部屋に監視モニター画像を見れるノートパソコンがあり、誰しもがその情報を得る事が出来る。

だからこの男も当然知る事となる訳で。

『来たかレッド、楽しませてくれるんだろうな?』

クラール・ハウゼン、出陣の時。


暴れると言っても研究員を殺して回る何て事に成ったら支離滅裂。

そこはとりあえずガラス製品の破壊を楽しむ女子連。

『なんだろう、悪の組織の気持ちが分かる気がするわ!』

レイニーも楽しそうである。

まぁ、一番張り切っているのはピンク牧野なのだが。

八つ当たり、そう聞こえれば都合がいいのでそうするらしいが、東京の優しきマスター特製のカクテルを飲めない苛立ちが、大きくあるみたいだ(つまりはホームシック)

…我先にと逃げていく研究員を追い立てる正義側の人間、なかなかにレアなパターンだ。

杉本は冷静に状況を分析していた。

研究員の逃げる方向と逃げ出してくる箇所を、最大限の視野で情報収集、そして。

『ストップ、あの部屋見てないね。』

見落としていた訳ではない、なら見えるところに無かった?はたまた隠れていた?

その扉は閉まると同時に壁と同化しその存在を消失させていく。

『なるほど、隠しですか』

楽しかった破壊行為の終わりが、こうもあっさりと訪れたのかな?と、レイニー不満顔。

まぁ、それも一瞬の事なので、彼女が悪に目覚めた訳ではないのだが…。

では、追い出し件破壊活動は男性陣にお任せして…3人は消えた扉の前へと立つ。

『さて、とりあえず壊そうかしらね?』

こういう所に躊躇は要らない。とっととTFTにて破壊するのみ。

隠さなければならない扉、当然重要だろうし隠せるという事は、強度はそこそこであるとの推測。

杉本は十分過ぎるほど学んだ作法にて爆弾をセット、その衝撃に備える。

ガガーンと鳴り響く爆音と衝撃、そして扉の倒れる音。

『少し様子を見ましょう…』

いきなりズドンは嫌よと間を空けるも、室内は不在の様子。

3人は一気に入室し、周囲を警戒していく。

『…なるほど、吐き気しかしないわねここ。』

そこは実験室、試験中のエキスの効果を試す場所。

当然、試されるのはモルモット。だがマウスやモンキーの類ではない。

どこからか連れ去られてきたであろう、人間。それもロシア人だけではない。

国籍不明ながら、亜細亜の容姿を持つ者も。

皆、等間隔に並べられたガラスの円柱内に、浮かんでいた。

死体か、怪人か。見分ける術も勇気も無い。

『どんな神経を持っていれば、こんなことが出来るの?』

『(こんなだよ)』

聞こえた? いや感じたに近い。

3人は同時に振り返り、何も無い空間を凝視する。

そして間髪いれず裂ける空間、現れるクラール、憎しみの終着点。

『クラール!』

その言葉はネイティブな英語、つまりはレイニーの発言。

前回、何も出来なかった。敵を討つことも、彼がエキスを受け入れた理由を聞く事も。

だから前に出る。そして問う、彼の真意を。

クラールは表情を変えない、知っていたから?はたまた何の関心も沸かないから?

おそらく後者だろう、彼の関心は別にあったから。

(レッド…次、間違った選択をすると死ぬよ?)

その胸の内は視線越しに杉本へと届けられて、受け取った側も理解する。

この次は、無いということが。

『答えろ!クラール!』

おっと、と杉本困惑す。味方側としてなら一番に聞いてあげないといけない立場。

はて、何を彼女は答えて欲しいのだろうか…?

一方の敵として、一番聞かなくてはいけない男は腕を組み、ニヤリと笑い、口を開く。

『知ってどうする?…何も変わらんよ何も』

フフフと微笑みながらだから、とっても感じ悪い。

『何よ、答えればいいじゃない!』

杉本、とりあえず乗っかる。親愛なる彼女が解答を欲しているのだから、答えてもらおうじゃないか。

『なんだ、レッドにも関係ある話なのか?ならば答えねばならぬか…』

レイニーの彼氏、いや将来を誓い合った男性がエキスを受け入れた理由。

単純に先に命を奪われて、とかならいいんだ。考えてしまっている理由でないなら。

『キサマが拒むというなら、アメリカ人の彼女に変わってもらう事にするよ、と…』

クラールは少し歩幅を広めに取り、約3歩。そしてターン、レイニーを見つめた。

『奴は泣いてすがったよ、彼女にだけは危害をってな。まぁ、適わぬ願いとなったがな』

恐れていた、とかではなく。むしろ逆で、きっとそうだと確信していた。

そして、それを聞いてしまうと私はますます、この心を熱く燃やしてしまうのだ、と。

(ペトレンコ…まだまだ貴方を解放してあげれそうにないわ。お互い様だけどさ)

レイニーは笑った、その意味を知る者は居ないが、きっと後で話せば理解してくれる仲間は居る。

『杉本、スッキリしたよ。…さぁ、終わらせようか!』

頷くレッドとその脇に並ぶピンク。

3対1の良くある正義?な展開に、誰も疑問符を付けはしないのだ。

勝者こそ正義、その理論だけは古代より脈々と続いている正論である。

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