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24・25 ~消失~

-24


通常、玄関から失礼します…と侵入する馬鹿は居ない。

つまり2人は【おとり役】となる。まったく、リーダーと新参者の扱いが悪い国風だな…

とレイニーは感じつつも、自らを相棒に指名したリーダーが、自ら一番危険なオトリ役をやるというのだから、従うしか選択肢は見えず。

まぁ、実力を信頼しての相方選択だろうと思われるので、それはそれで光栄よ、と。

『じゃあ、発見次第連絡を…』

特に開始前のエイエイオーは要らない。昨夜十分語ったし、このまま永遠の別れが来ても受け入れられる。

各所に配置しているベニス・セットは、その目的完遂のため、始動。


タイムラグといってもほんの1分程度の話。先陣の玄関組が侵入してから1分刻みで後陣が突入、となる。

『ピンポンダッシュ、する?』

アメリカにもそんなものがあるのか?との疑問はあれど、IQモンスターの脳にインプットされていない情報があるはず無い!

確信の杉本に苦も無く応じるレイニー。彼女が事前勉強した日本文化は何ページ分あるのやら…。

『今回に関しては得策ね、押しましょうレッド』

彼女等の期待に反して、呼び出しベルはピンポンとは鳴らず、ビー!

(そうよね、ここロシアだもんね)

変なところで異国を感じ、少しシックになる杉本。まぁ、直ぐに切り替えるのだが。

…ベルに反応し、足音が複数。一人ではない室内、かといってそこまでの複数ではない。

『3人か、一気に行くよ!』

透明だった玄関ドアの覗き窓がブルーに染まったが合図。

レッドとイエローは玄関ドアへと渾身の一撃を加えてゆく。

激しい爆音と共にドアの一部が割け、内部の者が後方へと弾かれる。

きっとロシア語で何らかを言っているのだろうが、聴く気も聴く力もない。

杉本は人間と思われる彼らに当身をお見舞いし、その意識を刈り取って行く。

(…あと一人分、あったはずだ足跡…)

そう考える間もなく微かに響くマシンガンのセーフティロックを解除する音。

鳴ったのはダイニングルーム、廊下の先にある部屋との境目から、見えているではないか先端が。

2人はすぐさま持て得る限りの力で跳躍、その先端の指し示す円錐からの脱出を図る。

が、間に合いそうない。いくらベニススーツ着用中とはいえ、指先をちょっと曲げる行為とジャンプし体ごと消える行為が同等のはずが無い。

そして更に加えるなら、いとも簡単に貫くだろう。ベニススーツの耐久力は弾丸の貫通力に劣るのだから。

(まったく、早々に…!)

指を曲げる行為に勝てるモノ。それは音速だか光速だかの世界。

『フラッシュ!!』正式名称はイエローフラッシュ、だが長いので今回は割愛。

その掛け声と同時に光り輝くイエローのヘルメット。

それはただの眼くらまし、なので殺傷能力は無い。だが、それで良い時もある。

狙われなければ、当たる可能性が減少するのだ。もっとも乱射モードに入るので、

後は当たらぬ様に祈るのみ…。

2人は時と場合で宗教家となる。頭に都合よく、と付くのだが。

今回も最大限の信仰心を見せ、祈りを捧げた結果、実る。

(神様、さんきゅー!)

普段その存在を否定も肯定もしない(つまりは無関心)杉本だが、この時ばかりは毎回思う。そして感じる、感じているつもりになる、神の存在・神のご意思を。

秒間何十発連射の最新式マシンガンでも、当たらない時は当たらない。2人にはカスりもせず、無数の弾丸は玄関ともう一つの部屋の壁を破壊するに留まる。

その刹那、弾丸の雨が止む。弾詰まりか、はたまた弾切れか。確認する余裕は無いが、

ターンし一気に距離を縮める事は出来る。

杉本は大黒柱?を使用し軽快にジャンプ、速やかに当身を敢行し、窮地の元凶の排除に成功するのだ。

『…とりあえず、これだけの様ね』

ゆっくりと辺りを見渡しながら、レイニーは囁く。ここは敵地、気を抜く所などは無い。

だが今死線を潜ったのだから、少しぐらい胸を撫で下ろしたっていいじゃないか…。

勝手な解釈ながら確かに安全なる現場、人の気配は無い。

パリーン!

壁を一部破壊された分よく聞こえる。もう一つの部屋から組が、行動を開始したのだ。

(…え?)

それは微かに臭う違和感。気のせい程度の感覚、だがやはりオカシイ。

今2人はダイニングに居る、ならば第2波の2人が裏口から入ってくるか、はたまた侵入した形跡が見て取れるはずだ。

何も無い、なのに第3波が行動を?

杉本は時計を見た、玄関突入より…今1分経過。

ゆっくりと開く裏口、こそこそ侵入するお手本の様な2人のベニス。

『む?レッドにイエロー、ならばここは外れか』

パープル岡林が緊張感無く呟く。

違う、外れはもう一つの部屋。2人は行動させられたのだ、予期せぬ事態というやつに。

『当たりはあっちの部屋!皆行くよ!』

都合よく空いた壁より室内を見つつ、3人はリーダーの指示に瞬時に反応し、

もう一つの部屋へと。


『ピンク!』

室内には一人、ピンク牧野のみ。

『何があった?!牧野、ブルーは?辻本はどこに!?』

呆然とピンクが見ている先に、杉本は視線を合わせた。青いヘルメットが見える。一部砕けたベニスメット。只事ではない?

『…突然背後から襲われて…室内に、、、そしたら空間が裂けて、中から怪人が…』

牧野は自らを呪った。(まただ、また私が弱いばっかりに…)

護られるばかりの自分に嫌気が差して、日々鍛錬とやらを積んでいたのに…!

『空間が裂ける?』

レイニーが頭の中をクルクル探す。範例はあったか、事件として刻まれていたか…

『ゲート・キャリー、か。…やっかいだな』

レイニーの呟いた意味は理解できないが、その表情から伝わる事の重大性。

『手短に説明して。子供に言い聞かす程度の簡潔さで』

レイニー静かに頷き、赤ちゃん言葉までは要らないよな?と心の中で葛藤しつつ、

瞬時に頭でまとめた手短な説明を開始する。



-25


『つまりその怪人は瞬間移動出来るって感じか、距離はそんなに遠くまで行けずで』

グリーン御堂は理解していた、彼の好きな小説によくある話だからだ。

すんなりと受け入れる柔軟性と想像力。彼にだって良いところはある。

『ねぇ…』

こちらも理解している杉本、何やら閃きイエローに問う。

『その運び屋がここから榎本と辻本を飛ばしたんだよね?だったらこの家の地下じゃなくてもいいよね、基地』

レイニーもそれに気付いていた、だからこその【やっかい】なのだ。

『わざわざこの室内でキャプチャーしたのだから、この部屋を中心とした半径10m程の話だろうけど…』

レイニーが考えながら話しているのが分かる。内容もだが、その解決方法も。

『一番厄介なのが、やっぱりこの家の地下って話。この地下10mの間は塞がっていて、ね』

コンクリートだが土砂だかを10m挟んでからエレベータールームを設置。

そこまでは怪人ゲート・キャリーが送迎をするという訳だ。

『この家の地下か、この家の半径10mにある家の中か、そんなのどうやって調べるんだ?』

珍しくパープル岡林が困惑している。確かにない、そんなのを看破できる術など。

そして時間も無い、奴等は実行するだろう悪魔の所業を…。

『分担しよう、この地下を掘る者と周囲の家屋を片っ端から探す者とを!』

御堂の進言は間違いではない、だが最善でも無い。それでは間に合わないのだ!

その時、杉本は見ていた。彼が残した物を。耳の部分が一部欠けているヘルメット。

彼女は動き出す、考えを公表するのは後でいい。

ブルーのヘルメットと自らのヘルメットを同期させる。そして調べる、ベニススーツを着ている者の状態を。その電波の送信元を。

『残念ながら一番厄介なこの家の地下よ、約12m…』

その先は言えない、言いたくない。電波が微弱すぎるだけだ、そんなはずは無い。

『とにかく場所は分かった、急ぐよ!』

ベニススーツは着ている者の肉体の状態を、逐一装着者に伝える機能がある。

心拍数・血圧・体温・等々、ヘルメットへと電波を飛ばすのだ。

杉本はそれを追っただけ、そこまではそんなに問題ではない。

(心拍数…ゼロ?そんな訳がない、まだそんな時間も経っていないのに!)

青色のヘルメットが伝える装着者の状況は、彼女にとって望まざるもの。

信じる事も公表することも無い。それが誤報や偽りであることのみを願う。

彼の死を、受け入れるわけにはいかない…。


高級ジープを玄関へと横付けする小杉。車内から一般家庭では手にすることすらない

TFT爆薬2kgを取り出し、皆の待つ室内へと。

『こう見えて、特殊班の体験ツアーを3度も経験しているのだぞ』

彼に悪気は無い、状況を正確に知らされていないだけなのだ。

湧き上がる苛立ちを何とか沈静化させてゆく杉本。まぁ、後できっちりシメる事を心に誓う。

小杉の合図で室内を出るベニス軍団。間髪いれず鳴り響く轟音と飛散する元家だった物の破片たち。

『地下目当てでも、当然上にも被害出るわな…』

遠くを見つめる小杉。所詮は体験ツアー、上部の平屋を全壊させる事は必要悪さ~とばかりにタバコに火をつける。

重ねて言うが、彼は状況を把握していないのだ。

把握している杉本、なんとなく感じているレイニーは即座に行動を開始する。

まずは杉本が瓦礫を処理し、その間に上空へと大ジャンプするレイニー。

爆発の効果で窪んだポイントを上空のレイニーに晒し、眼で合図を送る。

『スピニッシュ・ヒール!』

掘る。それに一番相応しい必殺技はベニスイエローのこの技。

くるくる回ってヒールでズドン!である。

巨大な独楽となったレイニーは、瓦礫や地下の地層を方々に撒き散らしつつ、

徐々に体を地下へと沈めていった。

(目算で今8m…そろそろ!)

突如ボコンと身体が地下へと吸い込まれる感覚、それは開通した証、そのまま入口を広げ一気に降下する黄色い独楽。

『よし、みんな行くよ!』

そんなの合図無くとも行くがなこの状況!っとも思うが、やはりリーダーのその掛け声その一言は必要なのだ。

気持ちのスイッチを入れる瞬間、これより先の行動に後悔も悲しみも無い。

完全に地下へと消えた黄色い独楽に続いて消えて行く4色のベニス。

再びこの大地に根を生やせるのは、果たして何色分のベニスか…?


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