『夢』
江藤が、ドキマキに声を出した。
「その記事、知ったんですね・・」
そして、何も言えない。
原田の顔を見た。暗い中で、江藤は、原田の眼光が異様に光っているのを見た。
そして、原田は言った。
「江藤・・」
『親愛なる』が、付かなく呼ばれた。
「はい・・」
江藤は、それこそ、原田が、何か切れだして恐ろしいことを言う、しようとするのでは、と構えた。そして唾を飲む。
原田の言葉が続けられた。
「俺、俺さ・・『夢』を傷つけれたから・・大切な『夢』を踏みつけられたから、また『夢』に輝きを与えなきゃならない・・」
江藤は、黙ってしまった。下を向いた。
どのくらいの時間が、経っただろう。歯を食いしばっていた江藤が言った。
「原田さん、『夢』って、飯野さんのことですよね・・」
それを聞いて原田が、微笑んだ。
確かに笑った。原田は、笑ってくれた。
そして、原田が言う。
「飯野さんに、今日、想いは告げない。今からドラマの残りの脚本を徹底的に、書き直す。江藤、飯野さんとの、このドラマで、お前を伝説の名役に、するよ・・俺が、飯野さんに想いを告げるのは、その後だ」
江藤は、それを聞いて震えた。そして、原田のマンションを静かに去った。
ドラマの収録に、マイカーで向かう江藤。運転中に、考えていた。
(原田さん、あんた、本当に粋な人だよ・・俺は、あんたの夢に乗るよ・・)
夕方の首都圏。
道行く車を、優雅に江藤が運転する車が進んで行く。
もうすぐ、日が沈む。しかし、江藤の眼光は、先ほどの原田の眼光に負けないくらい光輝いていた。
決して、光は消えないというように・・・。
(終わり)




