夜深 ことさり
なんでも賢気朱巌命様はこの祭りの主賓である神様と話しているらしい。
激しい争奪戦を繰り広げながら、味噌汁を食している、貫己と那岐からそう聞いた私は、ならちょうどいいと判断し御神酒を持って、教えてもらったカマクラへ歩いていました。
若宮があんな感じだから、きっと挨拶はしないだろうな……。と、判断した私――輝夜は、不出来な夫の尻をぬぐうためにこうしてその神様を探しているのです。
「まったく……結婚報告に来いと言われたのなら、あの人も一緒に来るのが筋でしょうに」
そんなことを全部忘れて、演武という名目で暴れまわる私の夫を横目で見る。
思わず長いため息をついてしまいました。
「帰ったら流慰様にご足労願ってお説教ですね……」
最近すっかり仲良くなってしまった、この国の太陽神の顔を思い浮かべながら、私はとうとうそのカマクラに到着しました。
雪でできた純白の鳥居の向こうにある、ほんのちょっとだけ大きなカマクラ。
鳥居は本来聖域を現し、女人禁制のしるしでもあるそうですが、それは瑞の時代から伝わった宗教儀礼で、ほとんどこの国では形骸化しているとか……。
というか、実装しようとした神祇官の方たちがいたそうですが、ガチギレした女神さまと巫女の連合軍にあっさり敗北して、今の体制が維持されているようです。
男より女が強い国とは、それはそれで問題ありそうですけど……。まぁ、今は平和なので、とりあえず問題は先のばし。
私は遠慮なく鳥居をくぐり、そのカマクラの中を覗き込みました。
神様に対して無遠慮な気もしますが、元異国人にして平民の私に神祇道の儀礼を説かれても仕方ありません。ここはここにいるはずの賢気様に全力のとりなしをしていただくことにしています。
本当は若宮にしてほしかったんですけどね……この役目は。と、私が内心ため息をついた瞬間でした。その光景が飛び込んできたのは。
「それがあなたの人型ですか? 賢者の石」
「そうだ! 本当は貫己に自慢する予定だったんだが、いろいろあって忘れててな! ちょうどいいと思って奔放初公開!!」
そこには、ひどく美しい印象を受ける、ずいぶんと古い服を着た美女と、なにやら神々しさなどみじんも感じない、白い服と、袴とは違うまっすぐな線を描く黒いはき物をした、普通の男の人が……。
「誰?」
「いきなり神のカマクラ覗いてその態度はないだろ……」
私が思わずそう漏らしたのを耳ざとく聞きつけたのか、普通の男がこちらを向きます。
見れば見るほどどこにでもいる、普通の男の人。服装が個性的ではありますが、それが普通の物に戻れば、ホンと人に埋もれてしまいそうな……そんな印象を受ける男で。
「誰?」
「二度も同じ疑問を繰り返して恥ずかしくないのか……。俺だよ、俺っ!」
ですがその声は、よく聞いていた神の物で……。ここにいるといわれている神のことを考えると、消去法的にあの神以外に考えられないわけで……。
私は何とか頭の中で状況の整理をつけ、若干の頭痛を覚えながら、ひとまず、
「お久しぶりですね……賢気様」
「なんだ、その信じがたいと言いたげな顔は……」
「だって、せっかく人型になるのにどうしてわざわざそんな地味な姿に……」
「え!? そんなひどい今の俺!?」
慌てて自分の姿をキョロキョロ見廻し確認する賢気様に、呆れきった視線を向けた後、私は彼の姿を私と同じような目で見ている女性――女神さまに話しかけます。
「お初にお目にかかります、岩守塚女様。今代神皇、若宮陛下の正妻をさせていただいています、輝夜宮です」
「えぇ、お話は聞いています輝夜宮。黄泉路の封じ手にして天剣八神が一柱、岩守塚女と言います。本日は無礼講です。そう畏まらなくてもいいですよ。私も女神としての自分は封じていますので」
そう言って穏やかな笑みを浮かべる岩守塚女様は、女神らしい、神々しさと美しさを誇る姿をしていました。
それも当然といったところ。神格たちは基本的に本性が人間ではありません。そのため人型になるときは、自分の見た目は初回の変化の際ある程度調整ができるのです。
そのため大抵の神々は自分の特異性を示すために、見目麗しい人間に変化するのです。その後神の人型がその姿だと人々に認識・信仰されると、その見た目が固定化されていきますが、固定化を受けるまでは結構な時間があり、その際にも見た目をわずかではありますが変更をすることが可能です。問題があるようならいくらでも調整ができるのです。
だというのに……。
「はぁ…………………」
「おい、人の姿見てため息つくのやめろっ!!」
そんなに美男子がえらいのかよっ!? と、怒号を上げる賢気様。
だって、国の最高神がそれって……あまりにも威厳に問題が。美男子とは言いませんから、せめてひげを生やしたおじい様ぐらいにしても罰は当たらないではないですか。
内心でそんな風に賢気様の感性に絶望している私を見て、岩守様は苦笑をうかべながら、助力してくださいました。
「まぁまぁ、その見た目も変更が可能なのでしょう、賢者の石? 期待に応えられる姿になったらどうですか?」
「え?」
ですが、賢気様は、できて当然と思われる岩守塚女様の指示を聞き、目を盛大に泳がせた後、
「い、いや……。これ、ちょっと、人化とは違うから……難しいというか……。これ以上は創造神の制限が働くというか」
「「え?」」
その賢気様の発言に私たちが驚くなか、賢気様は、
「ま、まぁいいじゃねぇか! 元々俺、人の姿になることだけが目的だったし!」
なんて負け惜しみ染みた言葉を吐きながら掻き消えました。
どこに行ったんだろう? と慌ててあたりを見廻すと、苦笑いを浮かべた岩守塚女様の視線の先である、岩守塚女様の隣の椅子に鎮座する紅い宝石が見えて。
「いまの、どうやったんですか?」
賢気様のような小さな神が人化変化を解いたなら、心臓か頭があった位置に本性が出現するはずなんですが……。と、首をかしげる私に、賢気様は悔しげな声音で、
「い、いまのは……俺の人間の姿を神術で投影しただけなんだ」
「は?」
信じられない事実を告げました。
…†…†…………†…†…
「つまり、あれは一種の幻のようなもので、物理的肉体をもたないどころか、ただの人の形をした事象だと」
「まぁ、そういうことだな……」
正確には神術で光を制御して作り上げた、映像なわけだが……。それをこの時代の人間に言ってもわからんよな。と、俺――賢者の石は自己完結して、できるだけ理解してもらえるように噛み砕き話す。
決して実体を持った人間になったわけでなく、あくまで人間に見える幻を操作するだけなのだと。
岩人形や土人形が作れることから考案した、俺が人の姿になれる唯一の可能性。俺自身が人の姿になるわけじゃないが、妥協の産物としては上々の結果だと俺は思っている。
一つ問題があるとするなら、それは俺が以前いた地球で生きていた時の姿以外は、とれないということだけ。
というわけで、俺は先ほどの輝夜や岩守が勧めたように、イケメンにはなれなかったわけだが……。
クソッ……。あの丸投げ女神め。痒いところに手が届かない面倒な制限かけやがって!?
「なんだってそんな面倒なことを……。消費霊力はともかく、相当面倒だったでしょう? その神術」
あきれ返った顔をして、そんなことを言ってくる輝夜。それもそのはず。神術が発達したこの国では、当然のごとく幻を操る神と神術が存在するのだが、会得難易度が非常に高いうえに、制御がこの上なくめんどくさいのだ。なにせ世界中を光の速度で駆け抜ける光を操り、自分が思うままに像を作り出すのだ。難易度は当然それ相応。俺だって映像の近代知識がなければ、見た目だけ完璧に人間にしか見えない映像投影など、実現は不可能だっただろう。
とはいえ、せっかくの自分の努力を無条件で否定されたのは癪に障るので、俺はひとまず事情説明ついでに、俺はすごいんだぞ!! という主張をしてみる。
「仕方ないだろ……。創造神である女神から《あなたの存在は世界に与える影響が大きすぎる》とか言われて、できることに制限がかけられているんだから。人化禁止もそのうちの一つなんだよ」
「えっ!? あなたそんなにすごい神だったのですかっ!?」
大まかな予想通りの反応をしてくれる輝夜に、内心ほくそ笑む俺。だが、
「こらっ。賢者の石。幼気な女の子を意趣返しで驚かすのではないですよ? 最高神として情けなくないのですか」
「ぐっ!?」
俺が内心ドヤ顔しているのがばれたのか、しっかりと岩守から叱責を食らってしまった……。無念である。
「って、あ、あの……さっきから岩守塚女様、賢気様のこと《賢者の石》と呼んでいますが……まさか!?」
「「……………………………………………………」」
って!? おふざけしている場合じゃなかったぁああああああああああああああ!?
「え、え? け、賢者の石!? なぁにそれぇ? 俺全然始皇帝とかそんな奴知らないよ!?」
「墓穴!? 盛大な墓穴を掘っていますよ、賢者の石!?」
「えぇい!? 黙れっ!! もとはと言えば誰のせいだと……」
「ほ、本当なのですかっ!?」
そんな見苦しい言い訳をしようとした俺たちだったが、当然のごとくそんなものは輝夜には通じず、彼女は目をキラキラさせながらこちらに食いついてきた。
まずい……!? このままだと俺、若宮のやつに凹られたあの龍神みたく、わしづかみにされて「とったどぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」される!? な、なにか!? 何か打開策はっ!?
と、俺は必死に自分の優秀な思考回路を高速回転させて、何とかこの状況を切り抜けるための策を、必死に……必死に考えてっ!!
「っ!! そ、そうだっ!! 輝夜! お前の両親の冤罪を晴らすために、俺が力を貸してやろうっ!! いますぐっ!!」
「え!?」
彼女が俺を求める理由を、手っ取り早く潰すことにした。
なんだかいろいろ本末転倒な気がするが、俺は自分の身の安全を優先させてもらうっ!! あんな戦闘馬鹿にわしづかみにされたら、俺の体がどうなるか分かったもんじゃないしっ!?
そんな風に内心怯え慌てふためく俺を、岩守はどういうわけか半眼で見つめていた気がしないでもないが、今はそれよりも重要な案件があるので、俺はひとまずその視線を無視することに決めた。
…†…†…………†…†…
「ちょっと久しぶりに使う透視と遠視の術式起こすから待っていろ」
といって、黙り込んでしまった賢気様を、私は期待溢れる視線を向けながら待ち続けます。
そんな私を見ていた岩守塚女様が、クスリと笑い声を漏らすのをきき、私は慌てて岩守塚女様に視線を戻しました。
「あ!? す、スイマセン! せっかく結婚の挨拶をしに来たというのに、私事を優先させてしまって!!」
「いえ。構わないですよ、異国の神よ。いえ、神……? 少し私たちとは形態が違うような気がするのですが」
「あぁ……えっと」
確かに、私たちはこの国の神々のような、原始的な(悪い意味ではなく、本当に原子の姿をしたという意味ですよ?)霊体だけの身体構造をしていません。
さまざまな諸事情が重なり、新たな生命としてこの世界の生まれ落ちた、体を構成する霊力が実体になった種族――《精霊種》なのです。
そのため、この国の神様たちは、霊力総量から見て私を神だと認識しているそうですが、でも実体があるので「神(?)」となるかたが大多数なのです。
まぁこの属性のおかげで、私はこの国の神々とは違い、若宮と交わることも子をなすこともできるのですが……。
まさか、そのことをここで言うわけにもいきません。霊体の受肉方法は我が国の秘儀中の秘儀。たとえ、お世話になっている国の神でも、こればかりは漏らすわけにはいかないのです。
だから私は、必死に岩守様の疑問を躱すための言い訳を考えるのですが、まさかこんなところでこんな危機を迎えるとは思っていなかったので、中々良い言い訳が思い浮かびません。
ま、まずい!? まずいですっ!? このままだと、この国の割と高位の神である岩守塚女様に変な不信感を抱かれて、若宮にも被害がっ!? と、私が最悪の事態を想定し、顔を青くした瞬間でした。
なぜか、いままでこちらを不思議そうに見ていた岩守塚女様が、ほっとしたような笑顔になり、慌てふためく私の頭を撫でてくれたのです。
「え?」
「うん。合格ですね……。何か隠しているみたいだったから、大丈夫かな? と、ちょっとだけ不安になりましたが、あなたがはじめに案ずるのがあの子のことなら、私としては特にいうことはありません」
その手はとても優しく、慈しみを持って私の髪をすいてくれます。そのことにわたしは驚きながら、思わず疑問の声をぶつけてしまいました。
「どう……して?」
「ん?」
「私……若宮を裏切るようなことを考えていたかもしれないのに?」
「不安そうな顔をしたあと、あの子が暴れているところを見たとたん『迷惑かけちゃいけない』なんていいたげな顔をするあなたが、そんなことをするような狡猾な女だとは思えませんけど?」
「うっ!?」
ぜ、全部読まれています……。もしかして私分かりやすいんでしょうか? と、私の私生活をあっさり貫己に見破られた過去を思い出し、しょげます。
そんな私に「かわいい子ですね」と、笑いかけながら岩守塚女様は、
「異国の神よ。異国出身である以上、この国であなたが話せないことがあるくらい、私は理解しています。きっとそれは、若宮にすら話せないことなのでしょう? ですから、それを話せと強制するつもりはありません。愛しい人にすら隠さなければならないことを、神の権限で白日の下にさらすなど、道理にもとりますから。私があの子の妻に求めることはたった一つ……ずっとあの子のことを愛してくれて、あの子のことを案じてくれる。そんな女性であることだけです」
「っ!!」
その言葉には、若宮に対するどうしようもない愛情が感じられました。
母として、子供に与える際限ない愛。私はその姿に、私を育ててくれたおじいさんとおばあさん……そして、私を命がけで逃がしてくれた故郷の両親の姿が重なります。
「え……」
そして、次の瞬間には、私の目から涙が零れ落ちていました。
「え?」
「え? えっ……。ち、違うんです、岩守塚女様。私……私……。ご、ごめんなさい! すぐ、すぐ泣きやみますからっ!!」
神の前でなんという醜態。すぐに、すぐに元に戻らないと!! そう思い、必死に涙をぬぐう私ですが、涙は次から次へとこぼれ出て止まってくれません。最後にはのども震えて嗚咽まで漏れる始末で……。
もう、どうしたらいいのかっ!!
「泣けばいいのですよ」
混乱の極みにある私を、岩守塚女様の優しい声と、温かい抱擁が治めてくれました。
思わず絶句する私に、岩守塚女様は神様らしい優しい声で語りかけてくれます。
「両親と生き別れ、右も左もわからぬ異国の大地。しかも、恋愛の果てとはいえ一国の王の妃になったのです。あなた自身も気づかぬうちに、あなたの心はきっと疲れ切っていたのでしょう」
「…………………………………」
そんなはずはない。私はずっと幸せだった。おじいさんとおばあさんに育ててもらって、若宮と結婚できて……幸せでしたっ!
そう言いたかったのに、震える喉が許してくれません。ヒクッ、ヒクッと嗚咽が漏れただけでした。
「若宮に心配をかけたくなかったから、あなたは今まで我慢をしてきた。でも、今はいいのです。今は神しか見ていません……。だからあなたは、泣いていいのですよ」
「―――――――――――――――――――――――――――っ!!」
そして、その言葉がトドメだったのか、私の頭には生き別れ、たくさんの兵士に取り囲まれながら、私を国から逃してくれた両親の姿が浮かんで消えました。
声が漏れ出て、それが大きくなっていきます。
どうやら言われた通り、私は少し疲れていたようです。
私はこの国に来て初めて、声をあげてなきました。
そのわたしを抱きしめてくれる岩守塚女様の体は、岩が本体だと思えないくらい暖かくやわらかな、やさしさに満ちていました。
…†…†…………†…†…
結局あの後、賢気様改め賢者の石は、私の故郷を調べてくれたみたいですが……。
「う~ん。よくわかんなかった。どうやら妙な結界が張ってあるらしい……。俺ほどの神格の透視を防ぐ術式だ。かなり強力なもんだろうな!! うん。俺が失敗しても仕方ないわっ!!」
という、見苦しい言い訳をしながら、私の期待を裏切る結果をたたき出してくれやがりました。
なんというか……。あの女神の制限の話すら眉唾物になりつつあります。あの人本当にこの国の最高神なのでしょうか?
私が内心そんなことを考えながら、都に帰る牛車の中でため息をついた瞬間でした。
「随分と気が晴れたみたいだな」
「それはあなたですよね、若宮?」
あちこちに戦いの痕と思われる小さな打撲痕をつけた若宮に、私は呆れきったように返事を返しました。
結局あの後。祭りが終わるまで若宮は散々暴れまわり、挑戦者300人抜きを達成したそうです。過去最高記録だとか貫己が呆れた顔で言っていたので、それがどれだけすごくて、バカバカしいことなのかはわかりました。
「いや、確かに余も気は晴れたがなっ!! さすがに余の障害になるやつはおらなんだが……奴らはなかなかの益荒男であった!!」
満足であるっ!! と、笑う若宮にわたしは苦笑いを浮かべながらよかったですねと言っておいた。
でも、
「だが、実際お主も気が晴れたであろう? 余に話せぬ悩みの一つくらいは岩守塚女殿が解消してくれただろう?」
「っ!?」
さすがにそこまでバレていたとあっては、私も脱帽するしかありませんでした。
というか、私ですら気づいていなかった精神的疲労を、この人は気づいていたというのですか!?
「然り。余たちが結婚する理由となった、龍の眼玉もいまだに使っておらんらしかったからな。余との結婚でいろいろ苦労を掛けているせいだとは睨んでいたのだが、おぬし自身はそんなものを一切感じさせなんだ……。勘違いかとも考えたのだが、おぬしも知っている通り、余は他人の心の機微にはとんと疎い! だからこそ、余がそんなことをちまちま考えても仕方ないと思い、岩守塚女様にどうにかできないかと相談してはいたのだっ!!」
そういって、余の判断は間違っていなかったようだ! と呵々大笑する若宮に、私は唖然とした後、
「もう……私の旦那様は」
わたしにはもったいない人ですよね……。と、この人に出会えた幸運を感謝しつつ、
「若宮……」
「ん?」
「今夜はちょっとその……寝かせませんから?」
「ん? なんだ? 徹夜で何かするのか!? 最近賢気様が作った《数符》か!?」
「えぇ。あなたがそんな感じでしたから、いままで言うのは控えていましたが……私たちのような新婚夫婦が夜にやることなんて決まっているでしょうが!!」
どうして、こういうところでそんな判断しかできないんですかっ!? 何度そんな雰囲気に苦労してもっていったのに、あなたが先に爆睡しているという憂き目にあったとっ!! と、ちょっとだけ怒りながら、私は若宮の唇に、私の唇を重ねます、
「っ!?」
「黒天星光夜彦様の、天下御免の祝福を」
悪戯っぽく私は笑い、その神の名を聞いて漸く意味を理解した若宮が顔を真っ赤にします。
そんな彼の仕草に可愛さを感じながら、私はこの人と本当の意味で夫婦になる決意をし、
龍の眼玉を使い、両親の安否を確認する決意をしたのです。
ですが、私はこの時知りませんでした。
賢者の石が、自分の名声に泥を塗る結論である「わからない」と告げてまで、私に結果を知らせなかった理由を。
自分でもわからないんだから、龍の眼玉を使っても無駄だと言外に知らせていたのだという事実も。
そして、賢者の石が、私の故郷と私が接触をするのを恐れていたという真実を。
それらがわからなかった私は、若宮と暑い夜を過ごした翌日、身支度を整え龍の眼玉を起動し、
《見つけたぞ……カグトリャーイ》
「っ!?」
龍の眼玉を通しこちらを覗き見ていた、巨大な猛獣の眼球を見て、失策を悟りました。
奴らにわたしの居場所が、露見してしまったのです!!
いつも思うのですが、一つの話の終わりは、なぜか戦いになるのですが……。




