平原祭 終わる戦
何故だ?
弱点である逆鱗を砕かれ、もはや全身に力が入らなくなった我――龍神姫は、絶望と共に自分の失敗を探す。
(我は神ではなかったのか? 我は、すべてを超越した、存在ではなかったのか? だから、我はここまで強大な存在になれたのではなかったのか?)
目につく生物すべてを食らい、あらゆる生物の特徴を宿し、自分は完成された生物=神になったはずだったのに。
この男たちは、それをやすやすと砕いていきよった。
出会ってみればなんということもない。小さく脆弱な肉体しかもたぬこいつらが……完全な肉体をもつ我を下したのだ。
そんな理不尽な状況を、自身が倒れ伏してなお、我には信じられなかった。
「わ、我は神……神のはずだ……神になったはずなんだ……」
「まだ言ってんのか、お前は……」
「っ!!」
だから必死に否定の言葉を呟いていたのに、それすら叩き潰された。
「どうやら救いがたいバカのようだ」
我と同じ、神々の力を宿した剣を持つ、絶対神が。
…†…†…………†…†…
自分の敗北が信じられないのか、ブツブツうわ言を漏らす龍神姫に、とどめを刺すため近づいた瑠訊は、眉をしかめながらため息をついた。
そんな瑠訊の様子を見て、俺――賢者の石は、彼が何となく迷っていることに気付いた。
今まで獣ならいくらでも狩ってきた男ではあった。
確かに、狩った獲物には敬意も払ったし、自分たちの身勝手な事情で殺す謝罪もしていた。
だがやはり、意思の疎通ができる生物を殺す時には、それ相応のためらいが生まれるものだ。
意思の疎通ができない動物を殺す時とはまた違った、やり難さがそこには存在する。
俺はそれでいいと思う。初めての意思疎通が可能な相手の惨殺を、ためらいなくやるようなら、必要なこととはいえ俺もちょっと引く。
だが、やはり彼女は殺さなければならない……。
「神よ……」
「天剣の主よ……」
「我らの一族の恨みを……」
「我らの一族の悲嘆を……」
『どうか晴らしてくれ……!!』
侵略され無理やり従わされていた獣人たちが、口々にそう言って瑠訊の背中を押す。
今まで彼らが受けた仕打ちが、焼き滅ぼされた彼らの集落の記憶が、彼らの怒りをもはや理性を凌駕するところまで加速させていた。
そこには、年老いた親を殺された子供がいた。子供が使い潰された親もいた。
そんな彼らを宥める言葉など、瑠訊は持ち合わせていなかった。
だからこそ、彼には龍神姫を殺す以外の選択は取れない。
「というわけだ、龍神姫。くだらない戯言以外に、何か言い残したい言葉はあるか?」
だからこそ、瑠訊は自分の葛藤とも区切りをつけるために、最後に龍神姫に言いたいことを言わせる、時間を与えた。
「あっ……」
その言葉に自分の末路を悟ったのか、巨大な龍は目を見開きガタガタと身震いしだす。
「や、やだ……」
そして、彼女の口をついた言葉は。
「やだ、し、死にたくない……。死にたくないっ!!」
悲鳴のような懇願だった。
それを聞いて辛そうに顔をゆがめる瑠訊とは対照的に、彼の背後にいた獣人たちの瞳に烈火のごとき怒りが宿る。
もう止まらないな……。その瞳を見た瞬間、俺はそうさとり、
黙って、大切な者たちが殺された獣人たちの怒号を聞いていた。
「ふざけるなっ!?「お前は俺の親父を、お袋を殺した!!「返せよっ!! 俺の子供を返してくれっ!!「女房をどうしたか覚えているのかっ!! ぼろ雑巾のようにして捨てた俺の女房を、覚えているのかっ!!」命をもって償え!」絶対に許してなんぞやらん!!」償えっ!!」償えっ!!!」償えっ!!!!」
憎しみと怨嗟の大合唱に、控えていた大風彦は驚いたように目を見開き、龍神姫に襲われた集落を見てきた瑠訊はため息交じりに首を振る。
つまりそういうこと。
これほどの罵詈雑言を浴びせられて当然のことを、龍神姫はしてきたという事実を、瑠訊は知っていた。
「幸いなことに、俺の集落に被害は出なかった……。だから、正直俺にはお前に対する恨みはない」
「じゃ、じゃぁ……」
だが、龍神姫にはそんな言葉は届かない。いま彼女にとって重要なのは、自分の首を落とす力を持っている瑠訊の言動なのだから……。今まで蔑み馬鹿にしてきた獣人の言葉など、彼女には届かない。
だが、獣人たちの言葉は、瑠訊にはしっかり届いている。
「でも、俺はお前を殺す」
「っ!!」
「これほどの数の人間が死を望むお前を……俺は生かしておくことができない」
場の空気だと言えばそれまでだ。はねのけることはできるだろう。
だがしかし、意識有る生物というものは《空気》で生きるものだ。これほどの怨嗟の空気を瑠訊がはねのけ、龍神姫を生かすと決定するなら、獣人たちの恨みは、自分たちの期待を裏切った瑠訊自身に向くというのを、瑠訊は大陸にいた幼少時代で十二分に学んでいた。
誰も彼もが下を向き、誰かを生贄に捧げでもしないと生きていけなかった子供時代を過ごしていたから、瑠訊はそのことを知っている。
「戦争にはけじめが必要だ……。そしてケジメというのは往々にして、その軍を率いた頭がとるものだ」
「やだ……やだっ……」
「覚悟を決めろ。龍神姫」
「我は……私は……か、神なのに」
「お前は神なんかじゃないよ。だからここで死ぬんだ!!」
「っ!!」
裂帛の気合いのような鋭い瑠訊の指摘が、龍神姫の心をえぐった。
そして、龍神姫は思い知る。
自分が神ではないことを。
自分がここまで至ったのが、本当にただの偶然だったことを。
自分の本質があの入り江にいたころの、矮小なウミヘビであったころと何ら変わりないことを。
そして、自分の命が、ここで潰えるのだということを。
「あ、あぁあああああああああああああああ! あぁああああああああああああああ!!」
龍神姫の目から涙が零れ落ち、子供のように龍神姫はむせび泣く。
そのあまりに悲痛な泣き声に、怨嗟の声をあげていた獣人たちも思わず口をつぐみ、瑠訊は目を閉じる。
なんて馬鹿なことをしたんだ……。なんて自分はおろかだったんだ……。そんな後悔がはっきりとわかる彼女の泣き声に、その場にいたすべてが思わずバツの悪そうな顔をして、俯いた。
その時だった。
「お、お待ちを……」
隻腕の虎の獣人が、瑠訊と龍神姫の間に割り込んできたのは。
虎武だ。
「っ!? お前っ……どうやって!?」
「ん? あんた……あの時の?」
集落でとらえられているはずの男の存在の俺が驚いている中、瑠訊は一発でその虎男の正体に気付いたのか、懐かしい顔を見たと瞠目する。
俺があわてて戦場に視線を走らせると、はるか向こうから、否麻がヒーヒー言いながら駆けてきていた。
「あいつ……勝手なことを!!」
あとで説教だっ!! と、俺はちょっとだけ怒りながら、
「ど、どうか姫を……姫様をお助けくださいっ!!」
平伏した虎武を見つめる。
瑠訊を恨んでいるはずの男が、瑠訊に平伏し龍神姫の助命を嘆願していた。
そこにどれほどの葛藤があるのか、俺にはわからなかったが……虎武が本気で、龍神姫を慕っていることだけは分かった。
「できん相談だ。見ていただろう? さっきの獣人たちの怒声を……」
「罪なら私が背負いますッ!! 龍神姫の側近として、すべての暴虐に手を貸した私も同罪でございますッ!! 私も龍神姫の罪を共に背負います。私の首でいいなら喜んで差し上げますッ!! だからどうかっ……姫様の命だけはっ!!」
そう言って地面に額をこすりつける虎武の姿に、瑠訊は思わず難しい顔をしたが、俺はそれよりもある言葉が気になっていた。
側近。そう、虎武は確かにそういった。
そして側近というものは、たいてい一人じゃなく大勢いるものだ。
ましてや龍神姫が率いた巨大な軍勢のような組織ならば、なおのこと。
おまけに、見目麗しい女たちはその側近たちの慰み者として、褒美として与えられていたはず……。
龍神姫の支配で、甘い蜜を吸っていた奴らがいたはずなのだ。
慌てて俺は獣人たちの集団の中に視線を走らせる。
そこには虎武の出現を、青い顔をしてみていた獣人たちが何人かいる。
さらにその獣人たちの声帯を透視で見た俺は、さきほど聞こえた怨嗟の声と照合を重ね、
怨嗟の声をあおるようにあげていた怒号を、その獣人たちが出していたことに気付き、一気に頭が冷えた。
(あぁ、懐かしい感覚だ……。こんなの大和がガキの頃に怒った時以来だったか?)
頭が冷えるほどに、一気に冷静になるほどに……俺は怒っていた。
なんてことはない。先ほどの怨嗟の声は確かに獣人たちの、ウソ偽りのない声だったのだろう。
だがそれは同時に、自分たちに甘い蜜を吸わせてくれていた龍神姫が敗れたのを皮切りに、側近たちが彼女を裏切り、自分たちの罪をすべて彼女にかぶせようと、作り出した狂気でもあったのだ。
龍神姫よりもなお悪質。いや、それ以上の悪行かもしれない。
そんな奴らを許しておくわけにはいかなかった。
「ならば、罪の減刑に一役買わせてやろう。虎武」
「っ!! な、なんなりとっ!!」
だから俺は、静かな声音で司法取引を持ちかける。
賢者の石? と、俺の怒り狂った声を久しぶりにきいた瑠訊が、若干顔を青くしているが、今はそんなことを気にしている余裕はなかった。
「お前の仲間を売れ。お前と同じく、龍神姫の側近をしていた奴らはどこの誰だ?」
『っ!!』
瞬間、獣人たちに紛れていた顔を青くしていた人物たちの顔色が、瞬時に真っ白になり、慌てた様子で獣人たちの波をかき分け逃げようとするが、
「このっ、恥知らずどもがぁあああああああああああああああああ!!」
『ぎゃぁあああああああああああああああああああ!?』
逃げた人間対象に向けられた、威圧を含んだ大和の怒号が彼らの鼓膜を射抜き、その身を地面に伏せさせた。
「お、おまえら……まさか姫を守ろうとせずに!?」
そんな彼らの姿に、虎武は信じられないといわんばかりの顔をして呆然としていたが、
「獣人たちを。そいつらも龍神姫の悪行に手を貸していた奴らだ。とらえておいてくれ。あとで俺が沙汰を下す」
『!? は、はいっ!?』
突然現れた龍神姫と同等の悪党たちの存在に、脳内での処理が追いつかないのか、獣人たちは目を白黒させながら、取りあえず地面にうずくまった獣人たちととらえていく。
彼らの憎しみの視線が龍神姫から一瞬外れた。
その隙を見計らっていたかのように、大和が瑠訊の前にやってきて、虎武と同じように膝をつき頭を垂れた。
「父上。私からもお願いします……。彼女の命に今一度、生きなおす機会をお与えください」
そんな大和の言葉は意外だったのか、虎武と龍神姫は大和の背中を驚嘆したような顔で見つめていた。
「お、おまえ……」
「ど、どうして……。私のことを、あんなに怒っていたのに……」
俺としても大和のその動きは意外だったので、なんとなしに大和が次何を言うのかを聞いていた。
大和は答える。
「人は……いつだって間違えるものだ。僕だってそうだった。父上や叔母上たちの特別な力を見て、自分は神様だって勘違いしていた時があった。今思い出すととても恥ずかしいんだけどね」
苦笑いをする大和の脳裏には、きっと黒歴史認定されているあのころの記憶が思い出されているのだろう……。
「僕にはそれを正してもらえる機会が与えられた……。いや、正してくれる、厳しいけど優しい神様がいてくれた……。そこにぶら下がっている喋る小石なんだけど」
(って、バレてるしっ!?)
いつの間に気付いた!? あれは完璧な犯行だったはずだっ!? と、俺が驚いていたら、瑠訊が若干気まずげな顔で頬をかいていることに気付く。
「お前が漏らしたのか……」
「いや、いいじゃんべつに。大人になって分別もついたから、教えていいと思ったんだよ」
「えぇ……。俺は優しいおっさんポジをずっと保持しておきたかったのに……。あんな残虐非道なことしたなんて、何で教えるんだよ」
「自覚があんなら、あの時の仕打ちを、少しは反省しろ」
「だが、断る」
俺のおかげで大和が更生したんだろうがっ!! と、言い合う俺と瑠訊を、苦笑しながら見た後大和は龍神姫たちの方を向いた。
「君は確かに悪いことをした。幾千人の人々に恨まれたって仕方がない所業だ。でも、君だけが悪いわけじゃないと僕は思う……。さっき逃げようとした獣人も、恐怖し唯々諾々と従うだけだった周りの獣人も、きっとみんなが悪いんだ。なんでって? キミの勘違いを正そうとする存在が、君の周りには誰一人としていなかったからだ」
命を取られるという恐怖もあっただろう。
だが、獣人たちは確かに証明してくれた。
命を懸けてでも守りたいものがあると。
その勇気を、大和の言葉を聞く前に彼らは出すべきだったのだ。
命を懸けてでも、龍神姫の勘違いを正して見せるという……そういう覚悟を。
「だから、君の罪はみんなの罪だ。君の罪は僕らも背負う……。だから一緒に学んでいこう。今度は、みんなが笑顔になれるように、何が悪くて何がいいのか……いっぱい、いっぱい学んでいこう?」
大和は最後に笑って龍神姫たちに手を差し出した。
龍神姫はそれに目を見開き、虎武は涙を流しながら、
最後はその手を取っていた。
「ごめん……ごめんなさい」
最後に龍神姫から、決して出なかった謝罪の言葉が漏れた。
その言葉を聞いた獣人たちは、驚愕の表情で固まり、
『……………………………』
ため息をついて、龍神姫を罵るのをやめた。
心中ではまだ言いたいことがあったのだろう。
だが、彼女の真摯な謝罪を聞いてなお罵詈雑言を浴びせるような低俗な矜持を、彼らはもっていなかった。
そしてようやく終わった戦場を見つめ、瑠訊はため息交じりに剣を収め、
「さて、全部終わったところで後始末だ、お前ら!!」
「後始末?」
「おう。まずはこの戦いで死んだ奴らの弔いだろ? それから……今まで死んだ奴らが、安らかに眠れるように祈るんだ」
ちょうど否麻もいるしな? と、瑠訊は悲しげな笑みを浮かべた後、
「祭りだ、お前らっ!! 俺らの集落からありったけの食糧を出す!! 飲んで、食って、騒いで、祈れっ!! 嘆き悲しんでいる死者たちの魂が、その悲しみを忘れるくらいの笑顔で、送ってやろうぜっ!!」
そんな大和の宣言に、獣人たちは目に涙を浮かべながら、
『おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』
戦争の終わりに、歓声を上げた。
のちにこの祭りの日は日ノ本義国の祭日となり、日本でいうところのお盆に相当する『平原祭』になることなど、この時の俺は知る由もなかった。
…†…†…………†…†…
「でっ!! そ、それからどうなったんですかっ!!」
「いろいろ大変だったぞ? 戦没者の慰霊碑作ったり、荒らされた土地を瑠訊の剣使って何とか整えなおしたり……。あぁ、あと龍神姫の各地の神格たちに対する謝罪旅行に、大和がついて行ったっけな? 帰ってきたときにはなぜか龍神姫と恋仲になっていてびっくりしたが……。あと、意外な恋人で上げられるのは否麻と、虎武だな。戦争が終わった後もやたら会ってるな……と思ってはいたんだが、まさか結婚するとは。そして、それよりも意外だったのは、俺があまりに早すぎたやつらの結婚を『電撃結婚』ってほめたら、明石記で虎武の神格に『雷神』が付け足されていたことだな……。いや、まぁ、確かに電撃なんだけどさ……」
「明石記の信じがたい曲解ね……。というか八割がた嘘じゃない……」
「そんで、一度集まった龍神姫の軍勢の連中にも妙な連帯意識が芽生えていたらしくてな。分かれるのが嫌だからって、近くの平原に巨大な集落作って……。それがいつの間にか始まりの都になっていたんだよ……。んで、そいつらが王としてお迎えしたいってわざわざ高草原に、大和を呼びに来たんだよ。あの時の大和の驚いた顔と言ったら……。まぁ、いつのまにか王様になっているんだから、そりゃ驚くわな」
「うわっ、なにそれ!? あのいつも笑っておられる皇祖神様もそんな顔されるのっ!? あぁ、見てみたい!! 見てみたいそれっ!!」
「あ、あの姫様……。あんまり明石記の裏話を《賢気》様から聞かないでくださいっ!! いまは……今はあの神話が正しい神話ということになってるんですからっ!!」
「いいじゃないの、べつに。私が知りたいだけであって、誰かに教えるつもりはないんだから。で、で? 他には一体どんな騒動があったの!? 流刃天剣主様たちは、どうやって神様になったの!?」
「そうだな……あれはたしか」
「賢者様、お願いですから、姫様にこれ以上余計なことは吹き込まないでぇえええええええ!!」
俺――賢者の石の神官を代々している、狐獣人の末孫の悲鳴を笑いながら流し、俺は目を輝かせて話をせびる姫に、嬉々としてあのころの話を聞かせてやる。
年寄りは昔話をしたがるもんさ。大目に見てくれよ、な?
*平原祭=こちらでいうところのお盆に相当する。もともとは平定戦争で散って行った祖霊たちの冥福を祈る祭りであったが、流刃天剣主と霊依産毘売の《黄泉帰り神話》とちょうど日時が重なってしまい、《黄泉、またはあの世から祖先の霊たちが帰ってくる特別な日。その祖先の霊たちを丁重に奉る祭り》として発展成長を遂げた。
ちなみに、こちらのような野菜による動物の騎獣は作られないが、代わりに祖霊の乗り物として、神術官(こちらでいうところの神社の神職に相当)が神術を施した紙の鳥を、数千羽近く作り各地で飛ばす。
そのため、この時期の神術官はたいてい徹夜でやつれている……。
《因幡羽翔姫》―—(追記)
日ノ本神話随一の踊り手にして、芸能神・癒しの神として知られる女神。
明石記によれば、元は野兎の化身であり、賢気朱巌命により知恵と力を与えられて、神となったとされる。
それゆえ、賢気朱巌命の子とされることもあれば、我が国における兎型獣人の始祖と言われることもある。
自身が神であると共に、より高位の神である《岩守塚女》の巫女としての役目も併せ持っており、踊り手となったのも、元々はそのためとされる。
のちに出てくる多くの国建神のために舞踊をささげ、荒ぶる神も、彼女の踊りを見ればたちまち鎮まったと言われる。
前述の通り芸能神、かつ巫女であり、癒しの神、神や人の心を癒す神として知られるが、むしろそれゆえに、話術、他者を説得する術に長けていたとされる。
『平定戦争』のおり、彼女が言葉巧みに、敵である仏来武霆命を説得する場面は見もの。
その縁で、のちに仏来武霆命の妻となったとされるが、それ以降のことは知られていない。
なお、出雲・大威山の「因幡神社」は、古代より岩守塚女と彼女を祀る神社として知られており、代々彼女の末裔が、神職や巫女を務めているとされる。
(にしなさとる様 執筆)




