セミの一生
妹「暑いねー」
兄「暑いなー」
妹「朝早くからセミが鳴いてるよ」
兄「鳴いてるなー」
妹「暑いのに元気だねー」
兄「元気だなー」
妹「いっそストライキでも起こせばいいのに」
兄「……何だって?」
妹「いっそストライキでも起こせばいいのに」
兄「……ちょっと俺の頭脳じゃ認識できない文章だな」
妹「だってだってセミが鳴くのってガールフレンドをゲットするためなんでしょ?」
兄「セミ♀にガールフレンドという呼び名が通用するかは甚だ疑問だ」
妹「なのにあんなに鳴き続けてるってことは、モテてないってことじゃん」
兄「鳴き続けてるように聞こえるのはセミの数が多いからであって、それぞれの個体はそれなりに相手を見つけてると思うけど」
妹「きっとセミたちの想いはこうだ!」
セ「今日も暑いよな」
ミ「本当だよ。毎日こんな暑いとまいっちまうよ」
セ「それでもおいらたちは鳴き続けねえといけない」
ミ「なぜなら……」
セミ「「モテないから!」」
ミ「どうしてかな? そんなにおいら強面かな?」
セ「強面であることは間違いないけど、それにしたってなぁ」
ミ「おいらたちの寿命は短いんだぞ」
セ「このままじゃ苦労が報われることなくあの世行きだ」
セ「そんなのは」
ミ「イヤだ!」
セ「いっそおいらたちオスで"鳴かない同盟"を組んで、ストライキでも起こそうか」
ミ「そんなことしてどうなる?」
セ「おいらたちが鳴かなくなればメスたちは焦るだろ?」
ミ「もう求められてないのかって思うだろうな」
セ「焦ったメスたちは脇目も振らずおいらたちに寄ってくる」
ミ「うんうん!」
セ「近寄ってきたメスに渾身の一鳴きをしてみな。イチコロだぜ」
ミ「うおー! そんな手があったのか!」
セ「どれだけのメスがおいらに群がってくることか」
ミ「ハーレムってやつか!?」
セ「そうだ! ハーレムだ!」
ミ「ウハウハか!?」
セ「ウハウハだ!」
ミ「よし! おいら仲間たちに声をかけてくる!」
セ「なるべく多くの同志を集めてくれ」
セ「おいらたちの……」
ミ「一生は……」
セミ「「ウハウハだ!!」」
妹「って感じになると思うんだけど」
兄「……ごめん。発想力が豊かすぎて、ついていけないや」