縁
妹「友達連れてきたよー」
加「お邪魔しまーす」
兄「いらっしゃい」
加「あっ、亜麻音ちゃんのお兄さんですね。はじめまして、高校の同級生の本藤加菜です」
兄「ゆっくりしていってね」
加「普段からいつもリビングにいるの?」
妹「そうだよ」
加「くつろぐのは自分の部屋で、とかじゃないの?」
妹「うん、お兄ちゃんと話してるほうが面白いから」
加「へー、仲良いんですね」
兄「こっちは必死だけど」
加「なんとなくですが、胸中察します」
兄「わかってくれるの? 俺の苦悩」
加「亜麻音の友達やってますから」
兄「それはそれはご苦労様です」
加「お父さんお母さんは?」
妹「平日はいつも10時過ぎまで帰ってこないの。仕事が忙しいんだって」
加「じゃあ大変だね。お兄さんと分担で家事とかやってるの?」
妹「いや、家事は専らお兄ちゃんの独壇場だから」
兄「……だれかがやってくれないせいでね」
加「いいなー、なんか気の置けない間柄って感じで」
妹「まぁ腐れ縁ってやつだから」
兄「……その表現はズレてる」
妹「えっ? 腐れ縁じゃないの?」
加「腐らせちゃダメでしょ」
兄「それ以前に兄妹に使う言葉ではないんじゃないかな?」
妹「腐ってちゃダメなら"新鮮縁"だね」
加「聞いたことない」
妹「じゃあなんて言えばいいの? あたしたちは兄妹の契りを交わしたんだよ?」
兄「交わしてない。交わすもなにも、お前が生まれてきた時点で俺たちは兄妹だから」
妹「えー!? 契ってないの!?」
兄「"ちぎって"とかいうと真逆の意味っぽい」
加「大変ですね」
兄「大変だよ」
妹「それでそれで、あたしたち兄妹は何縁なの?」
加「いうなれば"血縁"?」
妹「お尻がどうしたの?」
兄「……そのケツじゃない」
加「なんかあたしが恥ずかしいこと言ったみたいじゃん」
妹「"おしりとおしりでお知り合い"ってやつだ。なるほどー」
加「……なぜ納得?」
兄「お知り合いって、兄妹よりランクがさがっちったな」
妹「それじゃ兄妹の契りとして、お尻を合わせよー」
兄「契らない!」