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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

不死の愚者たち

作者: 右回游
掲載日:2026/04/23

魑魅魍魎、妖怪変化。実在するモノに似て非なる何か。人の恐怖、創作心より生まれるモノ。

此れ等は多くの物語に於いて寿命と云う概念を持たず、永く生きるモノとして扱われる。

此れ拠り語るは其れに成ろうとした、そして成ってしまった、愚者の物語。


「里の外れに住んでる爺さんのこと、知ってる?」


「あぁ知ってるよ、夜な夜な気味の悪い格好でうろついてる…」


「あれ、妖怪になりたいんだってさ」


「はぁ?なんだそりゃ」


「でも、ここ1週間くらい見てないな」


「くたばったんじゃないか?あの爺さんも相当な歳だろ」


「死んだとしたら、妖怪になれたのかねぇ」


───。


「ゴホッ…ゴホッゴホッ…」


その老人は荒屋に臥せていた


「わたしは…死にたくない…」


熱にうなされ、呼吸すら苦になる


「死にたくない…」




──気がつくと老人は森の中にいた。


「ここは…?」


熱はなく、呼吸も苦しくない


「わたしは…死んだのか?」


人らしからぬ蒼白い手が目に入る


「うわっ…!?」


それは紛れもなく己の手であった


「もしや私は妖怪に…なれたのか…?」


月明かりに照らされた川面を覗き込む

はっきりとは見えないが、この世ならざる輪郭であることは見てとれた


「やった…やったぞ!」


自由に動く体が愛おしく感じる

走って跳んで、大声を上げて…



気づけば空が白み始めていた


「朝…ひとまず家に帰るか、やりたいことはたくさんあるんだ」


木を登ると、今いるところは家の裏手にある山だと分かった


──足音がした


「ん…?」


「ひいぃっ!」


村の若者であるようだ、棒を構えて恐る恐る近づいてくる


「ばあっっ!!」


「ひいぃぃぃっ!!!」


棒を投げ捨て一目散に去ってゆく


「あははははっ!」


若者が逃げた道を辿って降りてゆくと、見窄らしき我が家が見えてくる

こうしてみると我が家すら感慨深い


──簾を上げて中に入る




「ゴホッ…ゴホッゴホッ…ゴホッゴホッゴホッ…」


そこには──私がいた


「な、なんじゃお前っ…ゴホッゴホッ…」


「あ…あれ…私が…なんで」


「妖怪…妖怪じゃ…わたしを…妖怪にしてくれ…ゴホッゴホッ…うっ…げほっ」


血を吐き震える手で足首を掴まれる

人というには冷えた手の、確かな感触が伝わる


「違う…私は妖怪になったんじゃ…」


弱々しくも握りしめていた手の力が、震えが──ゆっくりと抜けてゆく


「私は…私は」


「じいさん、生きてるか…うわっ!」


「あ…?」


時折様子を見にくる青年が地面に尻をつく 

「ば…ばけもの…はっ…じいさん!」


「そ…そうだ私は」


「どけっ!…じいさん…じいさん!…死んでる」


「あぁ…あああ」


ワタシは走った──途切れぬ叫びを上げながら──鹿よりはやく──ひとやま、ふたやまこえて──足を止めると、烏が鳴いた声と小川のせせらぎが聞こえる


「ワタシは…いったい」


倒れ込むようにして小川を覗くと─────




「…だれだ?」


不定期で投稿する短編シリーズです


人は妖怪を生み出せるけれど、人が妖怪になるわけではない、というお話でした

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