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破滅確定の悪役幼女に転生してしまったので、頑張って生き残ります!  作者: 魚谷


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26 病に侵された樹

ヨルンが飛べば、城がみるみる小さくなっていく。



「すごい! 都があんなに小さく……!」



殿下が驚きと興奮に満ちた声をあげた。



「もっと高く飛びますよ」

「もっと!?」

「当然だろ! ボクを何だと思ってるんだ?」

「さすがはスレイプニルだ!」

「へへん!」



ヨルンは鼻をピクピクさせながら得意がる。

可愛い。

殿下も楽しんでくれてるみたいで嬉しい。

私たちを乗せたヨルンは言葉通り高く高く舞い上がると、あっという間に王都は見えなくなってしまった。



「殿下、どこへ行けばいいか教えて下さい」

「えっと、あ、西の……川に沿って移動してくれ」

「ヨルン、お願い」

「よーしっ」



ヨルンは足を素早く動かし、川沿いを飛ぶ。

街道では馬車が行き交い、周辺を巡回する衛兵隊の一団が見えた。

さらに途中、鳥の群れと並走しながら、ヨルンは抜けるような青空を駆けていく。

そして山を一つ越えると、「あそこの村だ!」と殿下が言った。



「ヨルン。人がいなさそうな場所で降りて」

「えー。目的の場所まで飛べばいいだろ」

「村の人に見つかって騒ぎになったら大変だからだめ」

「ちぇっ」



ヨルンは人気のない場所で降りてくれた。



「ヨルンは本当に凄かった。ありがとうっ」



殿下はヨルンの首を優しく抱く。



「もっと褒めてもいいぞっ」

「ヨルン、あんまり調子に乗らないの。さ、殿下。行きましょう」



私たちは村へ歩いていく。



「久しぶりの思い出の場所はどうですか?」

「あの頃と何も変わっていない。のどかで、のんびりとした空気が流れていて……」

「そうですね」



確かに殿下の言う通り。

人でごみごみした王都とは空気だけでなく、流れている時間までまるで別物だ。

村の外ではヤギや牛が放牧され、親の手伝いをしている子どもたちが群れから離れそうになる仔ヤギを抱え、群れに戻している。

麦わら帽子をかぶったおじいさんが道端の石に腰かけ、パイプをくゆらせながら、うつらうつらしていた。



「殿下たちが一緒にお昼を食べた大きな木はどのあたりですか?」

「村を抜けた先にある丘だな。あ、ここからでも見える」



殿下が指さした先を見れば、確かにここからでも立派な木が見えていた。



「おや、見かけない子たちだね」



そばを通りかかったおばさんが私たちを見てくる。



「私たち、遊びに来てるんです」

「そ、そうですっ」



私が慌てて言うと、殿下もウンウンと頷く。



「へえ。こんな何もないところにねえ。何もなさすぎてつまらないんじゃないかい?」「そんなことありません。実はここに来るのは二度目なんです。少し前に遊びに来たことがあるんですけど、その時のことが忘れられなくて、親に頼んで連れて来てもらったんです」

「奇特だねえ。で、これからどこに行くんだい?」

「あの丘です。あそこの立派な木の下で以前、家族みんなでお昼を食べた思い出があって……」

「あの木はね、この森の守り神なんだよね。うちのひいばあさんの頃からあったみたいな話もあるからねえ。だから、残念だよ」

「どういうことですか?」

「あの木、病気になっちまったみたいでね。いつ倒れるか分からないから切り倒そうって話があって……。ついさっき、男衆が向かったばかりなんだよ」

「そんな!」



殿下がびっくりした顔をすると走り出す。

私は慌てて後を追いかけた。

殿下は脇目もふらず走り、丘を駆け上がる。

私たちが丘を上がりきると、おばさんの言う通り、斧を構えた男の人たちが木を囲んでいた。



「待って下さい!」

「なんだ、お前ら」

「その木を切り倒すって本当ですか!?」

「ああ。そうだよ。危ないからどっか行ってな」

「本当にもう治せないんですか? 王都にいる学者の人とかに相談してみたらどうでしょうか」

「もう手遅れだよ。見てみろ」



立派な大木は幹が灰色に変色している。

さらに他の木々は鮮やかな深緑の葉を繁らせているにもかかわらず、この木だけは葉がほとんど落ちて、ところどころ灰色に変色した枝を晒して、寒々しかった。

殿下の部屋に飾られていた生き生きとした大木の面影はどこにもない。

殿下は呆然とした顔で立ち尽くす。

あんな楽しみにしていたのに。



「ほら、分かったら……」

「待って下さい。私、魔法使いなんです。少し時間を下さいませんか!?」

「魔法、使い?」

「はいっ」



私は手を広げると、火を生み出す。



「うぉっ!?」

「まさか本当に?」

「あんな子どもが?」

「なんで魔法使いがこんな場所に……?」

大人たちが不思議そうな顔で、私を見る。

「週末まで時間を下さい。魔法で病気が治せないか調べてみますから。皆さんだって、この木の病気が治るんだったら、それが一番いいはずですよね。お願いします!」

頭を下げると、大人たちが困惑した顔を見合わせる。

「頭を上げてくれ。分かった。でも週末までだからな。それを過ぎたら切り倒す」

「ありがとうございます!」



大人たちが丘を下っていくのを私たちは見送る。



「オリヴィエ、どうしてそこまで」

「殿下が寂しそうな顔をしていましたので」

「私のために?」

「……もちろん、村の人のためでもあります。この木を治すことができたら、みんなが幸せになれるはずだから」

「ありがとう!」

「今日のところは戻りましょう」





屋敷へ戻った私はパパのところに向かった。



「パパ、お願いがあるの!」

「どうしたんだ。いきなり」



息を切らせて部屋に飛び込んできた私に、パパは驚いていた。



「木の病気を治す魔法を教えてっ」

「フュリオ、茶を」

「パパ、今はお茶なんていいから」

「まずは深呼吸をしろ。心を落ち着かせるんだ」

「う、うん」



フュリオがお茶を運んできてくれると、私たちは窓辺のテーブルに移動してお茶を飲む。



「……落ち着いたか?」

「うん」

「まず順序だてて話すんだ。お前は殿下のところにいたはず、だな」

「実は……」



私は殿下と王宮を抜け出したことを正直に話した。

そこまで話す必要はなかったかもしれないけど、誤魔化してもパパにはすぐ見抜かれてしまうのは分かりきっている。

下手に嘘をついたら、もしかしたら協力してくれなくなってしまうかもしれない。

今の私には殿下と城を抜け出したことを怒られるよりも、そっちのほうがずっと不安だった。

話を聞き終わると、パパは溜め息をこぼす。



「まったく。何事もなかったら良かったものの……」

「……ごめんなさい。でも私が提案したの。殿下は何も悪くないから」

「お前が殿下を思ってしたことだというのは分かった。だが、もう二度とやっては駄目だ。いくら魔法が使えると言っても、お前は子どもだ。もし何かあったら……」

「へ?」

「ん?」

「殿下を連れ出したことを注意しないの……?」

「なぜだ。殿下が自分の判断でお前の提案に乗ったんだろう。それで仮に何があっても、

それは殿下の問題であって、お前のせいじゃない」



予想外の反応に、ぽかんとしてしまう。



「オリヴィエ。俺は何だ?」

「え? パパ? 国一番の魔法使い……?」



どうしてそんなことを聞くんだろう。



「違う。俺はお前の父親だ。父親が自分の子どもを一番に心配するのは当然だろう?」

それはそうかもしれないけど、状況的に特殊だよ!



……嬉しいけど。



「それはそうと、木の病気だな。ひとまずその木の状態を見に行こう」

「本当!?」



パパは立ち上がると私を優しく抱き上げ、頭に右手を乗せた。



「その木の場所をイメージしろ。そのイメージを伝って、移動する」

「うんっ」



あの丘をイメージした次の瞬間、私たちは眩い光に包みこまれた。


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