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破滅確定の悪役幼女に転生してしまったので、頑張って生き残ります!  作者: 魚谷


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18/20

18  助けるための方法

剣術大会の決勝戦で、ジクリスは対戦相手によって右肩を砕かれてしまう。


それが将来を嘱望された公爵家の公子であるジクリスの運命を大きく変える。


日常生活を送るには問題ないところまで回復したものの、以前のように自在に剣を扱えるところまで回復するには至らなかった。


そのせいで騎士団長への道は閉ざされてしまった。


それでもジクリスは公爵家の嫡子。


普通であればどうにでもなるはずだったが、昔から祖父や父のようにこの国を守る立派な騎士団長になることを唯一絶対の目標として頑張ってきたジクリスの心は大きく歪み、闇が巣くった。


素行が乱れ、家族との諍いは絶えず、ついには口論の末に父親を刺して出奔。


行き着いた先が闇ギルドだった。


そこで彼は暗殺者として、裏社会で生きていくことになる。


そこまで身を堕とした彼を救ったのが主人公──というのが、ジクリスルートのストーリー。


今のジクリスに剣術大会を欠席して欲しいといくらお願いしても、受け入れてはくれないだろう。


だから別の方法で彼を守らなければならない。


幾つもの魔導書を読み漁った結果、今の私に出来るのが守護の加護をつけた魔導具の製作だった。


私は魔力を操るための練習と称して材料を集めてもらい、魔導具作りに没頭した。


全てはジクリスの未来を閉ざさないために。





週末、フュリオと剣術大会へ出かけた。


ちなみにパパはどうしても外せない会議があるから不参加。



「そう言えば家を出る時にパパから何か言われてたけど、なんだったの?」


「……お嬢様に変な虫がつかないよう、しっかり目を光らせるよう言われました」


「変な、虫?」


「……閣下は、お嬢様がジクリスのことを好きなのではないか、と気にされているようで……まさか恋しているわけではありませんよね!?」


「大丈夫。あくまで純粋に応援したいだけだから」



フュリオは露骨にほっとした顔をする。



「安心いたしました……。ジクリスと知り合ったきっかけは私なので、もしお嬢様がジクリスに恋しようものなら……」


「どうなるの?」


「おそらく閣下は私を虫に変身させ、一生、カゴの中で暮らす羽目になるでしょう」


「そこまで!?」



パパ、いくらなんでも荒ぶりすぎ!


会場へ到着すると、私は選手控え室を兼ねたクラブハウスへ顔を出す。


ジクリスはすぐに見つけられた。


なにせ、そこだけやたらと色とりどりのドレス姿のご令嬢と、そのお付きの人たちで人だかりができていたから。



「ジクリス様、頑張って下さいね!」


「ジクリス様は最強ですもの。優勝間違いなしですわ!」



キャアキャアと黄色い声が聞こえた。


他の参加者たちが、令嬢たちに囲まれているジクリスに押さえきれぬ嫉妬のこもった目を向けている。


その中にはジクリスの未来を大きく歪める子爵家の嫡子の姿もあった。



「なあ、あんたら」



ジクリスがうんざりしたという声をこぼす。



「はい?」


「うるさいし、邪魔なんだよ。集中したいんだ。さっさと消えろ」


「も、申しわけございません!」


「私たちったら……。客席で応援していますからっ」



令嬢たちはキャアキャアと歓声をあげながら去っていった。


あそこまで凄まれてもそのテンションを維持できるとか、ファンてすごい……。


ジクリスは「はぁ」と思いっきりため息をつく。


そんな彼の元には花束やらハンカチ、ジクリスを象った手の平サイズの手縫いのぬいぐるみやら応援グッズが山になっていた。


と、不意にジクリスが顔を上げた。目が合う。



「師匠!」



令嬢たちに見せていたうんざり顔が消え去り、表情が明るくなった。


「ずいぶん人気だな」


「やめてください。煩わしいだけです。いなくなってくれて清々してます。……あ、今のは」


「いや、そう思うのは当然だな。同情するよ」


「ジクリス、ごきげんよう」


「お前も来たのか」


「うん。今日は頑張ってね。優勝できるようお祈りしているから」


「ああ。それより師匠!」



ジクリスは目をキラキラさせながら、フュリオと話す。


そうこうしているうちに、大会開始を知らせる鐘が鳴った。



「お嬢様、そろそろ参りましょう」


「外で待ってて。もう少し話したいから」


「急いで下さいね」


「……なんだ?」


「これ」



私はアクセサリー型の魔導具を見せる。


それは手の平サイズの小さな円形をした金属に、守護の加護を意味する紋様を刻み込んだもの。



「試合中、肌身離さず身につけていて欲しいの」


「なんだこれ」


「お守りみたいなもの」


「いらねえよ、こんなの」



突き返されそうになるのを慌てて押しとどめる。



「お願い。大会の間だけでいいから持ってて。何だか今日は嫌な予感がして……。聞いたことない? 魔法使いの虫の知らせは特別な意味があるって。ただの杞憂で終わればいい。でもそうじゃなかったら……」



チッ、と思いっきり舌打ちされる。



「また泣くのかよ」


「え?」


「泣きそうな顔してるぞ」


「う、嘘!」


「だから、こするな。……分かったよ。お前がいなきゃ師匠に稽古をつけてもらえなかったし、それに免じてつけてやる。それでいいか?」


「ありがとう! 頑張ってね!」



私は手を振りながら、クラブハウスを出た。


これできっと悲劇は回避できるはず。


私たちは会場へ向かう。

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