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破滅確定の悪役幼女に転生してしまったので、頑張って生き残ります!  作者: 魚谷


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15/19

15 発表会へ

「お嬢様!」



フュリオが、私とヒューゴの間に割って入る。



「こちらは、塔主であるゼノン様のお子様だ! 指一本でも触れれば斬り捨てる!」



フュリオが剣をヒューゴに突きつけようとするのを、私は「邪魔しないでっ」とやめさせる。


「お、お嬢様……!?」



助けるつもりが叱責され、フュリオがショックを受けた顔をする。


フュリオのフォローは後でするとして、今はヒューゴだ。



「あなた、ヒューゴさん、ですよね?」


「! どうして私の名前を……」


「優秀な魔法使いだと、パパから名前を聞いたことがありまして」


「塔主様が私の名前を……!? な、なんてことだ……塔主様が私を……」



ヒューゴは恍惚とした表情になる。


私が小さく咳払いすると、ヒューゴがはっと我に返る。



「一体どうしたんですか? もし良ければ事情を教えてくれませんか?」


「……お恥ずかしい話ですが、研究の成果を上げられていないんです。私は平民出身で、成果を上げられないと研究費を打ち切られてしまい、ここを去るしかありません……。これまでの勉強の費用、王都への旅費を出してくれた両親に合わせる顔もなく、このままでは路頭に迷うしか……」


「何の研究を行っているんですか?」


「新しい魔導具の開発です。商工組合から依頼を受け、商品開発の協力に携わっているのですが、もうすぐ締め切りだというのにまったく進んでいなくて……」


「お嬢様、参りましょう。お嬢様が関わるような者では……」


「フュリオ。静かに」


「……はい」


「アイディアは何もないんですか?」


「……たたき台はございます」


「見せてもらえますか?」



ヒューゴは今し方自分が飛び出してきた部屋へ取って返す。


そこにはいくつもの失敗作と思しき魔導具とその部品が転がっていた。


ヒューゴはそのうちの一つを取り上げる。



「これです。これはスイッチを押すことで、属性を持つ魔石の効果を切り替えられる機構なんです」


「何か使えそうですね!」


「そうなんですが、商工組合の望む、どのような家庭でも使えるような製品というものが全く想像がつかなくて……」



がっくりと肩を落とす。



「ここまで出来ているんでしたら、それほど難しくないとは思いますよ」


「お嬢様、お考えがありましたらお聞かせ下さい! この通りですっ!」


「土下座なんて、やめてください! ……髪を乾かす魔導具なんてどうでしょうか」


「髪?」


「はい。私もそうですが、髪の長い人は乾かすのがすごく手間なんです。うちにはメイドがいますけど、メイドのいない家庭ではさらに大変なんじゃないかと」


いわゆるドライヤー。


「フュリオはどう思う?」


「とても素晴らしいアイディアだと思います。どの家庭でも絶対に必要になるものだと思います」


「紙とペンはありますか?」


「こちらに!」



私はドライヤーの絵を描く。



「この持ち手部分にスイッチをつけて。それから、魔石で温めた風の出る送風口がここ」


「ふむふむ、なるほどなるほど!」


「お役に立てましたか?」


「もちろんです! お嬢様、あなたは命の恩人です!」


「ヒューゴさん。完成を期待していますね」


「お嬢様、お待ち下さい!」


「何ですか?」


「一緒に商工組合の方々へのプレゼンのお手伝いして頂けませんか? 商工組合の方々へうまくアピールできるか自信がなくて……」


「お前、調子にのるな。お嬢様がアイディアを下さっただけでも十分すぎる貢献だろう」



フュリオが凄むけれど、ヒューゴはめげない。



「お願いします。何でもいたしますからっ!」


「ヒューゴさん……」


「お嬢様、あまり甘い顔を見せすぎてはいけません」


「分かりました。協力しますねっ」


「本当ですか!?」


「お嬢様!?」



のりかかった船だしね。


うまくいかなくても困るもの。



「閣下には何と申し上げるのですか」


「そのまま伝えるわ。それに新しい魔導具ができることは魔術塔にとってもいいことでしょ?」


「それはそうかもしれませんが」


「──何をしている」


「パパ!」



フュリオとヒューゴさんは背筋を伸ばす。


パパは私を抱き上げると、射るような視線をヒューゴさんへ向ける。



「なぜ、お前が娘のそばにいるんだ」


「そ、そそそそそそれは……」


「説明なら私がする。お願いもあるしっ」


「……お願い?」



私はヒューゴさんのことを説明する。



「ヒューゴさんみたいに優秀な魔法使いがいなくなったら魔術塔にとっても大きな損失だと思うの。だから絶対に協力してあげたくてっ」


「こいつがそんなに優秀とは思えないが」


「でもスイッチ一つで魔石の効果のオン・オフをできる機構は色々な魔導具への応用が可能になるでしょ。これまでの魔導具はいちいち魔石を取り外したり、装着しなおす手間があったし」


「……確かにそれは見込みがありそうだな」


「でしょ?」


「だが、二人きりで会うことは禁止だ。私が付き添う──」


「だめっ」


「なぜだ」


「パパがいたら、ヒューゴさんが萎縮しちゃう。パパは塔主なんだよ? ヒューゴさんは繊細なんだから。見てよ。今だってパパがそばにいるっていうだけで、緊張で倒れちゃいそう。フュリオがいてくれれば大丈夫よ」


「……分かった」



パパは溜息混じりで、頷いてくれる。



「ありがとう!」


「フュリオ、くれぐれも目を光らせておけ」


「お任せ下さいっ」



せっかくのチャンスを無駄にしないように、頑張ろう!


翌日から魔術塔に通い、ドライヤーの開発を手伝った。


無事に試作品を完成させ、いよいよプレゼン当日。



「おはようございます、ヒューゴさん!」


「お、お嬢様……」



ヒューゴさんはぐったりしている。



「すごいクマですけど、眠れなかったんですか?」


「は、はい……。今日のことを考えただけで目が冴えて……」


「睡眠魔法は?」


「使いましたが、それでも目が冴えてしまって。精神が不安定だと魔法の利きが悪くなるので、そのせいかもしれません……」



ヒューゴさんは消え入るような声をこぼす。



「ヒューゴ。お嬢様が貴重な時間を割いて協力して下さったんだから、失敗は許されないぞ」


「ひ……!」



フュリオに凄まれ、ヒューゴさんは悲鳴を上げた。



「フュリオ、プレッシャーを与えてどうするの」


「……分かってはいますが、ヒューゴがあまりに自信なさげだったので、喝を入れようと」


「騎士のあなたとはメンタルが違うんだから。──ヒューゴさん。あなたは今日まで頑張ってきました。あなたがどれほど努力して開発を進めてきたかは、分かっています。絶対にうまくいきますから、自信を持っていきましょう!」


「はい、お嬢様!」



どうにか気持ちを立て直してくれたみたい。


私とヒューゴさん、フュリオは魔術塔の会議室で、商工組合の方々を出迎えた。

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