05 解いて
連日兄に叩き起こされているから寝不足だ。僕は眠い目をこすりながらバイトに行った。忙しいランチタイムをこなし、休憩時間に社割でハンバーグを食べた。あと、嬉しかったのがパートのおばちゃんからのお土産。八つ橋だった。たくさんあったので、僕は兄のものも貰って帰った。
「兄さんただいま。おやつあるよ。八つ橋」
「おっ、サンキュー!」
兄は予定がなく、一日中部屋でダラダラしていたらしい。八つ橋を口に放り込むと、兄は言った。
「懐かしいな。修学旅行、京都だった」
「そっかぁ。まあ定番だよね」
「観光地より、旅館で部屋の奴らとトランプしてたことよく覚えてるよ」
「あー、わかる」
夕飯は宅配ピザ。眠る前に、僕は釘を刺した。
「兄さん、くだらないことで起こさないでよね」
「わかったわかった」
そして、寝てしばらくすると。
カチ……カチカチ……カチカチカチ……。
耳元で変な音がして、僕は薄く目を開けた。
「おっ、瞬起きたな。頼みがあるんだ。お前にしかできない」
「くだらないことだったら……怒るけど……」
「くだらなくなんかないぞ!」
兄が持っていたのはマウスだった。それをカチカチさせていたらしい。時刻は二時。なぜ決まってこの時間なんだ。リビングに行くと、ダイニングテーブルの上にノートパソコンがあり、画面にはトランプが映し出されていた。
「えっ? 何?」
「ソリティア! 寝れないから久しぶりにやってたんだけどさ、どうしてもこれ以上できなくて、それで……」
「もー! くだらない! くだらない!」
僕はくるりと寝室に行こうとしたが、兄に腕を掴まれた。
「お願いだよ瞬、これが終わらないと俺、寝れそうにないんだよ」
「はぁ、もう……ササッと解くね……」
ソリティアは、一人で遊ぶトランプのゲームだ。兄がやっているのはクロンダイクというもので、カードを数字の大きさ順に赤と黒、交互に並べていく。カードの並びによってはどうやっても成功しないゲームなので、兄もそれで詰まっているのかもしれない……と思いきや、割と簡単にカードを移動させることができた。
「兄さん! 移動できた。ここからは……」
兄はソファで寝落ちしていた。
「もう! また! 何だよもう!」
意地になった僕は、ソリティアを最後まで解いた。




