表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

卒業パーティーでルームメイトが婚約破棄されそうなんですが、あれは嫌がらせではなくトレーニングに付き合ってくれていただけなんです!

「アリシア! 僕は君との婚約を破棄する!」


 突然言い放つ王太子殿下。

 私は大いに慌てた。


「待ってください! って言うか放してください!」


 卒業パーティー。

 私の手を引く殿下。

 婚約者のアリシア様。


「君はこのリリアナ嬢に嫌がらせをしていたな」


 リリアナは私だ。

 静まり返ったパーティー会場。

 いや、ごく一部からは「アリシアが? まさか」とか「ほう、面白い」とか……。


「されてません! そんなこと誰が言ったんですか!」

「投書だ。ベランダで仕事をしていたら、こんな物が」


 懐から取り出す……紙飛行機。

 その折り目を広げる殿下。


「カレンダー……?」


 学園の隣の公園、その風景。

 日付の一つに丸印まるじるし


「張り込んでみた。夜、君たちが現れて、君がすごい勢いでブランコを……」


 あー……。


「アリシアは何かを叫んでいた。怖かった……」

「あれは違うんです、トレーニング——」

「また別の日。散歩していると……これだ」


 また紙飛行機。

 広げると……学園のプール。


「張り込んでみた。また君たち——」

「トレーニングです!」

「アリシアはプールサイドでお弁当だ。異様な光景だった……」

「ですから——」

「更にまた別の日——」


 学園の近くの観覧車。


「——君がすごい勢いで懸垂——」

「だから! トレーニングですって!」

「どうなんだ、アリシア」


 黙って聞いていたアリシア様が口を開く。


「ええ、嫌がらせをしました」

「アリシア様!?」

「君たちはルームメイトだったな。嫌がらせの理由は?」

「お答えする必要はございません」


 それで終わり。

 婚約は破棄。

 悪役はアリシア様。


  *


 寮の部屋で、私はアリシア様に聞いた。


「あれはトレーニングではなかったのですか?」

「ごめんなさい、リリアナ。私は……殿下との婚約は嫌だった。ご本人はあの通りだし」


 今回の騒ぎで、王太子としての資質に難あり、なんて言われている。


「何より、私には元々別の婚約者がいたの」


 思い出した。寝言で男性の名前……。


「私は考えたわ。運命を覆す方法を」

「もしかして、紙飛行機を飛ばしたのは……」


 答えは笑顔。


  *


 その後、彼女は元の婚約者と復縁することができた。

 私の方は。


「やあ、リリアナ。婚約者募集中だって?」


 変わり者。

 あの場で私の様子を見ていたらしい。


「募集してません! 放してください!」

「今度一緒に『トレーニング』しよう。約束してくれたら、手を放す」


 約束……婚約……ではなくて。

 まずは、この目の前の状況だ。

 つないだ手を見詰めて、私は考えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓同じ作者の他のシリーズや作品です↓

○○王子と婚約者の私

私の婚約者は王子様。今日も様子を見に行く私。

屋根裏部屋の恋する公爵様

「君を愛することはない……多分」

新婚初夜。頼りない言葉を残して、公爵様は寝室から出ていった。

― 新着の感想 ―
 お、お邪魔致します……!  コメディが好きでして、いまライトノベルを勉強中だったりする者です。  コメディっぽさもあり、恋愛の機微や策略? もありで面白かったです、読ませて頂き有り難うございまし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ