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王女シャシャ

「やめてくれ!! 弱いものイジメは、この私が絶対に許さないッ!!」


 幼き少女シャシャは脆い木の棒を手に弱いものイジメをする狼人間から、羊族を守るため立ち上がった。


「お前王女でも、女のくせに舐めた態度とってんじゃねぇよ!!」


「正義の心は!! 屈しない!! 絶対だ!!」


 ボロボロに叩きのめされても血だらけになっても立ち上がった。


 だがこの時、幼き少女は齢4歳にして社会の現実を思い知り絶望した。



―――この世は弱肉強食且つ、ヒトは欲深い。

 そんな世の中、戦いが耐えぬこの世に、1輪の花が芽生えた。

 突如として現れた、その少女は生物をこよなく愛し、あらゆる種族を従え、またそれまで存在し得なかった新たな魔法学を極めた。


 好奇心でこの世を制し、この世一の最強且つ高貴な存在としていずれ君臨することになる。



―――春夏秋冬時代66666年冬ノ国、名の通り年がら年中雪に覆われる男尊女卑の宗教が強い大国。


 そこに君臨する王には、数百という妃がおり、その間には男女関係なく、多くの子が存在した。


 とはいえ今日は、隣国との対戦を勝ち終え、王の息子である王子と騎士達が無事生還する街から王宮まで続く生還パレードの祭り日だ。


「皇太子、スリン様よ!! カッコイイわァ〜」

「第4王子ユーリ様よ!! 今日も麗しい」

「第18王子アイリーン様よ!! 可愛らしいわぁ〜」


 街の少女たちに加え、王女たちも絶えず頬を赤らめ、遊女達はお店の中から騎士や王子に向かって手に花を持ち華やかに振り続ける。


 真冬だと言うのに胸や足を強調し、顕にした服装で個々がアピールタイムを始める行為は正直、理解し難い。


 私は無理やり侍女頭におめかしさせられたスカートを無造作に掴み、逃げるようにパレードの混雑からひとり颯爽と抜け出す。


 第12王子のヨンジ兄上がチラッ、と見えたが疲れきって馬に乗りながらもボロボロだった。


 一国の皇子と言えど、体が弱い者も、戦いを好まない王子も存在する。


 だが、男ならば戦場に必ず出兵しなければならないのだから地獄だ。


 皇子と言ってもいいことだけとは言えない。


 常に命を狙われ、父上に認められなければ殺される。


 そして、各個人に任された責務を全うしなければならず、彼らはこの国のために戦う、皇族の皇子でありながら騎士でもあり続ける。


 私も男に生まれていれば……。


 そんなことは、考えるだけ無駄か……。


 戦が耐えぬ、数多の生きものが人形とし共存する時代。


 そんな時代で生き残るには大人しくしているのが1番賢い選択なんだろう。

 

 第28王女として謀反や皇太子争いに巻き込まれないためには母に小さい頃に教え込まれた「奪う強者より、守られる賢い弱者に」争いの耐えない宮殿では賢い教えとして、母親の言いつけを守っていたおかげできっと今まで生きてこられた。


「でもやっぱり従者で黒の第1騎士団の様を見て!! もう胸のトキメキが!! たくましいわぁ……」


 騎士と言うだけで、王子問わずみな、大人気だ。


 パレードなんて遠くから見ただけで満足だ、あの人ゴミには混ざりたくないのが本音であり、王女も参列しなければならないが100人以上いる王女が途中1人消えたぐらいで、誰も気づきはしない。


 居ないのがバレたら怒られるじゃ済まされないが、女に酔いしれている騎士や父上などの目には決して私は映らない。


 だが将来は、きっと姉上たちのように戦争の道具として、隣国との縁談の取引道具として売り飛ばされる無能な存在。


 それでもこの世で生きたくてレールの敷かれた人生を歩む自分自身に嫌気がさす。


 本音は性別や種族に関係なく、ヒトは自由であるべきだと思うし、男尊女卑の思想なんて一蹴してやりたい。


 だが、わたしは女で、人生などそう簡単に変えられないから、夢など志すだけで無駄だ。


 気持ちを変えて、ノートを片手に昨日ここら辺で部屋から見つけたはずのことりの巣である家を探すし写生しようと木に登る。


「小鳥さーん!! あれっ? いないッ、ないっ、ないっ!! あれれー? そんなぁ!!」


 研究して、ノートに収めようと思っていた小鳥の巣があらず、気に昇ったまま気の枝をかき分ける。


「ったく、相変わらずですね」


 突然の声に驚いてビクッ、と反射的に下を見る。


「誰?」


 こちらに背を向ける黒髪の鎧の上にマントを着た男に尋ねる。


「降りた方が、よろしいですよ」


「なっ……」


 名を聞いているのに、新人の騎士なのか一応王女の私に対してこの態度に加え、男は問いには答えず、注意するので少しムカッさせられる。


「世間的に普通の王女様って人がそんな格好で木登りするなんて、いろいろと問題ありますよ」


 そう言えば、命令により姉上達もみな今日は宴会用に丈の短いスカートを履いている。


 なのに誰かが来るとは思わず、つい……やってしまった。


 急に恥ずかしくなり、急ぎスカートを隠そうとするとそのままバランスを崩し、滑り落ちてしまい落ちると思った時だった。


「ちょッ……ちょっとお!! あわああああ、えっ!? ああああああああぁぁぁ」


「ったく……」


「あれっ……痛くない……」


「そりゃそうですよ。ちょっとどいてくれますかね、重いんですが」


「ご……ごめんなさい……」


「……」


 190以上ある寡黙な男は私を失礼にもジッと見下ろす。


 謝ってるのに許さないつもりなのか、私の謝罪を受け入れないまま、失礼にも質問をしてくる。


「一体何をしているんですか、こんな場所で」


「えっ……っていうかそちらこそ何してるんですか? ここは皇室の敷地、騎士であっても選ばれたものしか入れないんで部外者は立ち位置禁止なんですけど」


 怒り口調で目の前の大男に負けずと腕を組み、詰め寄った時だった。


 間違えるはずもない、ずっと待っていた彼が現れたのは。


 柔らかな白を基調とした雰囲気に長いひとつにまとめられたホワイトブロンド。


「ふふっ、相変わらずですね、2人のじゃれあいは」


「お、お兄様? ユーリお兄様ッ!? お怪我は?」


「大丈夫ですよ、ほら。シャシャ、久しぶりですね。離れて5年。シャシャはもう14歳ですか、とても元気に美しく育ちましたね」


 褒められ、頭を撫でられ、嬉しくて心地よくて嬉しくて涙がこみ上げ、抱きつき、彼の服をにぎりしめる。


「ッ……あの、ユーリ兄上お久しぶりです。兄上も……その」


「俺の前では禁断の兄弟愛も程々にしといてくださいよ、おふたり様」


 この男がいなければ、ついユーリ兄上に嬉しすぎて告白してしまいそうな雰囲気で危なかった……。


「私はよくてもよく知りもしない騎士がユーリ兄上を侮辱することは許しませんよ? 兄上は父上の弟の息子さんなんですよ。兄弟でも私からしたら従兄弟!! 結婚できるの!! それにしてもユーリ兄上この生意気な男は一体」


「それなら、イザのシャシャへの愛のこもった意地悪も健在だね」


 ユーリ兄上の綺麗な唇から、久しぶりに聞いた過去に幼馴染だった男の名。


「へ? イザ? あの小さくて生意気だった、あの?」


「相変わらずですね、お転婆で変人な姫さんは」


 イザらしい男は呆れたように私を見てそう、口にする。


「なッ!! お前こそ、皇族相手に相変わらず無礼よ。これでも一国の姫なんだから」


「さようで」


「本当にシャシャとイザは仲良しですね」


「えっ……違っ……」


 慕っているユーリ兄上にそんな風にイザとの仲を褒められるのは胸がチクっ、と少し傷んだ。


 まるで、ユーリ兄上が私に対し恋心がなく、女性として全く興味がない、と言われているようだった。


 それでも、ユーリ兄上が幸せそうに笑うものだから想いは、心の奥に押し込めることにした。


「見て、シャシャったら、また探検してのたうち回っていた姿で恥ずかしくないのかしら」


 遠くから見姉上たちがこちらへ群がってくる。


「お姉様、お兄様、私は体調が優れないため失礼致します」


 ユーリ兄上と謎にイザ目当てで押し寄せる女性陣から逃げるようにその場を去った。



 私も男であればあの2人に混ざって戦場を駆け抜けたはずなのに……叶わぬ夢だ。


 あれからまた宴会をそっちのけで、木に昇って宴会の灯の色取りを遠くから眺めていた。


 だが、夜は始まったばかりで深夜まで当たり前に続くはずの、宴会の灯しが一瞬にして消え去り辺りが真っ暗に染まった。


 なんだか、不吉な予感がする。


 見張り役の従者も居ないおかしな状況の宴会場の扉前に数秒止まり、宴会の扉を開く。


 そこは血の海、生臭い血の色で染まり、そこには父上、母上、兄弟たちの首が跳ねられ、胴体と頭が無惨に転がっていた。


 その姿を見て確信した、謀反が始まったことに……一体誰が……ユーリ兄上の遺体はない……。



 だけど、穏やかなユーリ兄上が謀反は絶対にありえない……なら一体誰が。


力が一気に抜け、床に過呼吸状態で倒れ込む。


「みなが……兄上……母上……はぁはぁはぁはぁ」


「ッ……どれだけ探したと!! 少しぐらいじっとしていられないんですか」


「なっ……ゔッ……」


 イザが急に無理やり抱きしめるものだから苦しくてその胸を叩くとパッと、手を離し距離を取ってくれる。


「あ、すみません。それより危ないところでしたよ、姫さん」


 落ち着かせるように私の背をすかさず、さするイザ。


「一体誰がこんなこと……ユーリ兄上は……母上は……みなは……みなを置いて私だけ逃げることなどできません……私も共にここで潔く死にます……」


「死ぬな、生きるんだ。シャシャ様お立ち下さい……」


「一体誰が……」


「それは……とにかくここは危ないので移動しますよ」


「私はここでみなと共に死にます……正直生きていても生まれながらに諦め続け、仕方ないと思っていた人生。正直、生きながらずっと思っていたんです。生きてる意味なんてないんだって……」


 イザは私の言葉を無視して、腕を無理やり引っ張ってズカズカと前へ進んでいく。


 ユーリ兄上は死んでしまったのだろうか?


 生きていれば、絶対に助けてくれる、死ぬ前に兄上に会いたい……本音を伝えたいッ……。


 兄上は賢いのに優しくてお強く、白の第2騎士団を従える長でもある、きっと生きている、生きていれば助けてもらえるかもしれない。


 死にたいとついさっきまで思っていたが死ぬならユーリ兄上の盾になって……ユーリ兄上のお役にたって兄上の胸の中で永遠の眠りに着きたい。


 そう思い角を曲がった瞬間だったイザに引き寄せられたのは。


「苦しい……イザ……」


「申し訳ありません……仕方がなかったんです」


 おかしな状況に見上げるとイザの頬は切れて赤い血が垂れていた。


 だが、それ以上に剣を振り回し、攻撃してきた男の後ろに立ち、第12王子の首から上の物を手にする、長年心を寄せていたユーリ兄上の姿に絶句する。


「兄上……兄上が謀反を? 裏切りを行っているのですか?」


「謀反になりますね。でも父上のやり方は僕にはそぐわなかったんです。シャシャもそうでしょう? それでも、シャシャは僕のこと慕ってくれると信じていたんですがね。世間的に存在されるのは困るので、特別に牢屋で飼ってあげますよ。生きた人形として。シャシャは傷つけず連れてください。国一の大将軍であるイザでもシャシャを守りながら1万を越える大軍を相手に勝利など無駄だ。私は他の仕事が山ずみなので、あとは任せますよ、ダンタリオン」


 そう言い残し反逆者であるユーリ兄上は白い霧と共に消えた。


「シャシャ様、死んでも逃げて……生きてくれ」


 イザが私を庇うとわかっていて攻撃してきた反逆者の騎士に対し、イザはその言葉と共に私を霧に紛れて隠すようにし、雪山が積もる崖の裏の秘密のへこんだ空間に私を投げ込む。


 だが、一瞬見えた白い空間にはイザの肩から大量の出血が見られ、恐怖で目の前が急に恐怖でシャットダウンしてしまう。


 イザが私のせいで……私なんかのせいで死んでしまう……。


「全部シャシャ、あんたのせいよ」


 突如自分の世界に閉じ込められ、もう1人の私が脳内に現れ、言葉の攻撃を始める。


「私のせいじゃないっ!! いや、私のせいだ」


「そうよ、あなたのせい」


 イザは1人で逃げられたはずだ……。


 あんなに強いのだからユーリ兄上側につくことも出来たはず。


 なのに、現実は私を守ってるが故に怪我を負ってもなお、かぞえられぬ敵を前に私の為だけに唯一戦っている騎士。


「何を今更分かりきったことを」


「でもユーリ兄上は……とても優しかった。小さい頃から私を1人の人間として接してくれていたはず……なのに……どうして……謀反なんて……全て、きっと真っ赤な嘘よ……兄上はあの時……今でもあの時を、過去の会話を思い出すの!! また私が小さくて齢4歳の頃、ユーリ兄上が言ってくれた。一人ぼっちで守りたいものを守れなかった時に、私に『一生僕だけはシャシャのことを無償で護ってあげます』って……だから弱くてもいいって……守られる存在でいてって……そう言ってくれたのに、なのに……なぜッ……」


「ユーリは変わったわ。なのにシャシャあんたは変化を恐れる。ただ言い訳して自分を責めて被害者ぶって生きている。とっても楽でしょ? 言い訳に逃げるのって」


「違うッ!!」


「女なんだから戦う強者より守られる弱者を選ぶんでしょ? 本物の根っからの正真正銘のお姫様ね? だからあの時も狼たちから羊を守りきれなかったの。齢4歳にして経験しているのに、言い訳をして殻に閉じこもっているあんたを見ていると吐き気がするわ。イザはこのままあんたを守るために命を落とすでしょうね? なぜ苦しむの? これがあんたか選んだ選択よ?」


「うるさいッ……」


「あんな父親を愛した母親も実に愚かね。あなたを愛しているなら残虐な父親からは逃げるべきだった」


「やめて……」


「あんたも本当はそうしたかったんでしょ?」


「やめて下さい……母上……兄上……なんでどうして私に残酷な決断をさせるの……」


「ふふ……やっと私の意見を受け入れる気になったのね……」


「うるさい……黙って」


「ふふ、それでもいいわ。そうよ、シャシャ、弱者でいる限り大切なものは守れない。あんたの母親は選択から逃げただけ。苦しいから逃げたつもりだけど、逃げたら苦しくなってることに気づいてない。それは賢さじゃない。ただの弱者。守りたいものがあるからこそ狂ったように欲張らなきゃ」


「うるさい……うるさい、うるさい、うるさい」


「ねえ、まだ戦わず守られる弱者で、か弱きお姫様でいられる? 唯一の見方であるイザが殺されてもいいの? 貴方は何もしない死にたがりで、そんな死にたがりのために死にものぐるいで戦ってるイザって何? バカにしか見えないわ」


「イザは……馬鹿なんじゃない……イザを殺すなんて、絶対にゆるさない……」


「謀反を起こしたのは剣術も知能もカリスマ性も優れたユーリであなたが想いを寄せていた人よ? 仇をとるのは謀反と同じよ?」


「それがどうした、この国だけじゃない。私は女帝として君臨し、この世を制する天下人になってやる。そのために私は剣を取る!! この手を血に染めても戦うことを選ぶ!!」


 ストレスで一気に髪の毛は真っ白に染まり、傍に落ちていた剣を手に取り何千という兵士を相手にわたしを守りながら戦っている雪山の崖下から這い上がり、重い剣を手にイザの元へ駆け上がる。


「イザ将軍をこの手にかけられるなんて光栄だ、何たる栄光」


 若騎士は嬉しそうに顔を歪ませる。


「野蛮人め!! そこを退け!!」


「シャシャ姫ッ!! 邪魔は許しませんよ」


「ッ……」


「姫を傷つけるな!!」


 他の騎士のその一言に相手の剣の力が緩むのと同時に私は剣を両手に怒りを露わにして目の前に構える。


「お前ごとぎがイザに触れることさえ決して許されないっ!! 実に目障りだッ!! お前を許さない!!」


 王族特有の赤眼が暗闇の中、怒りで燃え上がっていることは自分でも理解出来る。


 目の前の男たちは剣を落とし、後ずさる。


 だがこの気に当てられないユーリ兄上直属の騎士であるダンタリオンが目の前に立ちはばかる。


 立ち向かうが、軽くかわされダンタリオンに片手で容易に剣の相手をされたまま、もう片方の手で長い髪の毛を思いっきりグッ、と容赦なく掴まれる。


「これ以上は本気で邪魔ですよ、シャシャ姫」


 ダンタリオンは私の髪を引っ張り、あと一歩先のところで私とイザを離し、崖から落ちそうになっているイザの指を刺殺しそうにした。


 イザは殺させない!!

 

 絶対、生きてやる!!


 私はダンタリオンを鋭く睨みつけ、咄嗟に掴まれている髪の毛を自らの剣で切り裂き、ダンタリオンを背に傍に野垂れ死んでいたイザが倒したが諦めず殺そうとする騎士を体当たりし跳ね除け、イザの手を掴んだところで崖自体が脆く割れ、イザと共に崖の先の雪山の下へと落下した。


「シャシャ様ッ!!」


 落下しながら、イザは私の頭を守るように抱え込み、耳もとでイザが私の名を呼び引き寄せた。


 だが、下にあった木のおかげと、冬の雪、イザが私を抱えるように落ちたおかげで命だけは助かったが、イザは怪我で血まみれだ。


 敵がここまで来るのには時間もかかる、そしてこの距離だと弓矢は届かない。


「ピューーー」と、口笛で私は馬を呼び寄せ森を駆け抜ける。


「シャシャ様……」


 イザが深手を負いながらも私の名を呼ぶ。


「大怪我だ。お前は黙っていろ。でも、なぜ助けた……他にも助けるべき王子はいたはずだ」


 色んな感情が込み上げてきてボロボロと今頃になり、涙が溢れ出す。


「お前のせいで……お前のおかけでで……生きたいという欲が生まれた……もっと世を知りたい……羊を狩る狼でもなく、狼に狩られる羊でもなく、私は羊である者の盾になってこの世を変えてみたい!! 私の真の人生を歩みたい……そんなわがままな願いが生まれた……お前のせいだ。責任はとってもらうぞ」


 多分これが、今命懸けで助けてくれたイザへの精一杯の想いの伝え方だった……。


「はなからそのつもりですよ。俺は出会った時から、女であるあんたが戦場を駆け抜け、あの王位に座っている姿が浮かんでしまったんですよ」


 出会った時からとは、齢4歳の時。


 でもしかし、さっきの今まで父上はご健在だった。


 父上が生きている間に娘である私があの席に座る姿を想像していたとは、実に恐れ知らず。


 汚らしくも花水も涙も混じった、そんなぐしゃぐしゃの顔でわたしは、イザと共に馬を駆け抜け、心の底から違うように叫び心臓に誓った。


「成し遂げる!! これこそが、生きる証だ!!」


 これは少女にとって悲劇の始まりに過ぎない。


 この先、全てを一夜にして、奪われた少女はのちに数多ある国々を統治し、帝国のこの世で一番高貴な存在に成り上がる。


 少女は将来の伝記に初代女帝として名を刻み大魔法使いとしても天下人とし、時代に名をとどろかせることになる。







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