表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君のいない場所  作者: ヤン
第二章
30/41

第十五話 君のいない場所

 時は、静かに流れていく。


 (さい)は、自分の好きな曲を書いて、アスピリンのメンバーとバンドの音に作り上げて、ライヴでそれらを披露する。それは、楽しい日々だ。


 誰かの話によると、あれから間もなく、三原(みはら)山田(やまだ)サエ子は別れたらしい。が、才にはそんなことは、もうどうでもよかった。ただ、思う。


 三原は、才のことをどう思っていたのか。それだけ、知りたい。


 恭一に代わって初めてのライヴの後で、三原に殴られたあの時、才は三原に思いを伝えた。が、三原はそれについて、何も言ってくれなかった。


(少しくらいは、好きでいてくれたのかな)


 あの、中学一年の時の戸惑ったような三原の表情。触れられた感触。まだ消えることなく、はっきりと覚えている。


 何故、選んだのがサエ子で自分ではなかったのか、と才は考える。それは、好かれていなかったということか。それとも、別の理由があったのか。


 考えても答えは出ない。それは、わかっている。答えを知っているのは、三原本人だけだ。


(少しくらいは……)


 そう考えて、首を勢いよく振った。想いを断ち切るかのように、そうした。


「あれ? サイちゃん。どうしたの?」


 恭一(きょういち)に訊かれ、才はただ、笑みを返した。恭一は、首を傾げたが、


「そう。なら、いいんだけど」


 美しく笑んだ。才は、やはりこの人をヴォーカルに選んでよかったと、こういう時に心から思う。


 ステージの定位置で、恭一の斜め後ろから彼の背中を見る。それを見ながら、時々ふいに、昔そこにいた人を思い出す。


(もう、過ぎたことだ)


 心の中で自分に言って納得させようとするが、どうも上手くいかない。才は大きく息を吐き出すと、メンバーを順番に見て微笑んだ。


「じゃ、行こうか」


 才が、先頭で歩き出す。高矢(たかや)(はじめ)・恭一の順で、ステージ袖まで来た。四人で手を重ねると、「行くぞ」「おー」と小声で気合を入れて、ステージに出て行った。


 今日も大入り。すごい熱気だった。恭一にヴォーカルが変わってから客層は変わったが、前よりもより多く入ってもらえるようになった。とてもありがたいことだ。


 恭一が最後にステージに出て、音楽が始まった。元々の素質だったのか、恭一も今は楽しそうにステージで歌っている。日々、レベルアップしている恭一。出会えてよかったと、心から思う。


(ミハラくん。オレは、君のいないこの場所で、頑張ってみるよ)


 恭一の背中を見つめながら、才は、いなくなってしまった人に思いを馳せていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ