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君のいない場所  作者: ヤン
第二章
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第十話 一緒に

 最後の曲が終わってライヴハウスを出ると、少し離れた広い所で、(はじめ)が誰かと話しているのが見えた。その隣に高矢(たかや)が立っていて、創ともう一人を見ている様子だ。


 (さい)大樹(だいき)は、人込みを抜け出しながら、創たちの方へ向かった。そばまで行くと、創が気が付き、


「あ。サイちゃん。大樹」

「ずっと、ここにいたの?」


 才が訊くと、創は頷き、


「この人、高校の同級生で、二番目のバンドを観に来たんだって。オレ、バンドやってるって言ってなかったから、びっくりされた」

「そうなんだ。初めまして。今度は、アスピリンを聞きに来てくださいね」


 その人に言うと、


「あ。はい。アスピリンも、いいですよね。聞きに来ます」

「ありがとうございます。でも、その時は、もしかしたら……」

「はい?」

「いえ。何でもないです。ね。スギちゃん。高矢。ちょっと話があるんだけど」


 才がそう言うと、創の同級生は一礼して、創に、「じゃあな」と声を掛けて帰って行った。大樹は、どうしようかと迷っているようだったが、


「オレ、帰る。じゃ、また」


 手を振って背中を向けて歩き出した。創は、「え?」と言って大樹を追おうとしたが、才はそれを制止した。


「大樹は、何を話すかわかってて、この場から外してくれたんだ」

「何、それ?」


 不思議そうな創に、才は真剣な表情で、


「大事なことなんだ。バンドに関わる、大事なこと」


 創と高矢が顔を見合わせた。が、意外にも二人は驚いた顔をせず、頷き合っていた。


「えっと……」


 才は、二人のその様子を見て、次の言葉が出なくなった。創が、才に一歩近づくと、肩を軽く叩いた。


「決めたんだね」


 優しく微笑む創。才は、創をじっと見たまま、「ああ」と低く言った。


「それで、次は誰?」


 横にいた高矢が、冷静に訊く。創も、「そうだ。誰?」と訊いてくる。


「て言うか二人とも、オレの言おうとしてること、認めてくれるってこと? おまえが出て行け、じゃなくて、オレと一緒にやってくれるんだ。あの人を追い出そうとしてるオレと」


 二人は、三原が好きな音楽をやはり好きだった。多分、今やっている曲も、本当に好きでやってるのだろう、と才は思ってきた。それが、これから違う方向に進もうとしている才についてきてくれるとは。正直な所、才は驚いていた。


「サイちゃん。オレ、もちろん今やってる曲も好きなんだけどさ。ミハラくんも好きなんだけどさ。でも、サエ子さんとのことは、やっぱり納得出来ない。ひどいと思う。だって……」


 創はそこまで言うと、言葉を切って俯いた。高矢は創の背中を軽く叩くと、才の方に向き、


「オレも同じだよ。納得出来ない。付き合うのは勝手だけど、他の人の気持ちを考えろって言いたい。そのせいで、体を壊す人がいる……かもしれないのに」


 明言を避けた高矢の優しさが、胸に沁みた。才は二人に向かい、はっきりと、


「あのさ。オレ、これからは、もっとメロディアスな曲をやっていきたいんだ。歌詞をもっと大事にしたいと言うか」


 二人が頷く。


「でも、二人も今やってる曲が好きだろうし。全く違うタイプの曲をやるのって抵抗感があるかな、とか、いろいろ考えて。しかも、アスピリンっていうバンドは、そもそもミハラくんのバンドだし。オレがのっとるのもどうかと思うんだけど。オレは、二人とやっていきたいし、自分の思いを大事にしたい。オレが黙って我慢すればいい。ずっとそう思ってきたけど、今回のことで限界だってわかった。もう一度訊くけど、オレと一緒にやってくれるのかな?」

「やるよ。やらせてよ。オレは、サイちゃんと一緒にやっていきたい」

「オレも、スギちゃんと同じ。サイちゃんとやっていきたい」


 二人の言葉に、才は、とうとう涙を落してしまった。


「ありがとう」


 聞こえるか聞こえないかの小さな声で、やっと言った。

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