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君のいない場所  作者: ヤン
第二章
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第一話 山田 サエ子

 文化祭が終わり、日常が戻ってきた。が、(さい)(はじめ)は、お昼休みを教室で二人で過ごすようになっていた。時々、四人で弁当を食べていた頃を思い出すが、すでに慣れ始めていた。


 バンドは一応継続されている。時々スタジオで音を合わせてみたりしている。そして、いつかはライヴハウスでやろうと、四人で決めている。


 授業が終わり、創とともに昇降口へ向かっている途中で、知っている人の後ろ姿を見てしまった。その人は、付き合い始めたばかりの彼女と、何か楽しそうに話している様子だ。


(ミハラくん……)


 その背中を、じっと見つめる。が、才のその視線に気が付く様子は全く見られなかった。そのことが、才の心を傷つけていた。


 隣を歩く創が、才が何も言わなくなったことに気が付いたようで、「サイちゃん?」と呼びかけてくる。才は、はっとして、「え? 何か言ってた?」とあわてて返した。創は肩をすくめ、


「サイちゃん。最近、変だね」

「そんなこと、ないだろ?」

「変だよ、文化祭からこっち。いつも、何か考え込んで、塞いでるみたいに見えるけど」

「まさか」

「まさかじゃないから」


 創が、真剣な顔で言う。才は、どう答えたものか、考えてしまう。


「ミハラくんとサエ子さんが付き合ってるのが、面白くない?」


 山田の名前がサエ子だと、この時知った。何故創は彼女の名前を知っているのだろう、と思わなくもなかったが、特に確かめたりはしなかった。


 才は、冷静に、と自分に言い聞かせてから創を見た。そして、押さえつけた声で、


「別に。二人が付き合っていようがいまいが、オレには関係ないし」

「そうかなー。オレには、そうは見えないんだけど。ま、いっか」

「関係ないからな」

「何度も言うと、余計に怪しいって勘繰りたくなるよ」


 そう言って、創は、くくっと喉の奥で笑った。才は、反論しようとして口を開いたが、やめた。言えば言うだけ、からかわれるのがわかっているからだ。


「まあ、冗談はともかく、サイちゃんを心配しているのは、本当だよ。あの人……山田サエ子さんさ、評判悪いからね。ミハラくんのことも心配してるんだ、オレ。どうしてミハラくんは、サエ子さんと付き合おうと思ったのか、それがわからない」

「評判……悪いんだ? あの人」


 つい、反応してしまった。創は、神妙な顔つきで頷いた後、


「そう。評判悪いよ。人のものを欲しがるんだって。で、取り上げてでも手に入れるらしい」

「へー。じゃあ、被害者がいるから、評判が立つんだ?」

「詳しくは知らないけど、そうらしい」

「て、言うかさ。ミハラくん、人のものじゃなかっただろ。スギちゃんは、ミハラくんが誰のものだって言いたいのさ」


 感情的になるまい、と思うのに、だんだん言い方が強くなっているのを感じていた。創は、はーっと息を吐き出してから、


「それはさ、オレよりも、むしろサイちゃんの方がよく分るんじゃないの?」

「何だよ、それ」


 才に言い返され、創が黙った。俯いたまま靴に履き替え、さっさと歩き出した。才も急いで靴に履き替えると、後を追った。

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