第1話 開幕
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
真っ暗な闇が広がる空間。
その黒く塗り潰された空間の中にて、一つの薄白いスポットライトが灯る。
スポットライトが照らすのは、漆黒のタキシードに身を包んだ一人の男。年齢は見たところ二十代後半あたりか。左右に綺麗に分けられた白い髪は、その毛先が肩や首の付け根あたりまで届いており、男性としては特徴的と言えるほどに髪が長い。
タキシードの男は大仰に両腕を広げ、高らかに声を発する。
「レディース、アンド、ジェントルメン! 皆々様、本日は我らが狂演遊戯『リバースエッジ』にようこそおいで下さいました!」
リバースエッジ。
それは、このタキシードの男が所属する結社、通称『組織』が運営する裏闘技。
試合形式は、六名の参加者全員が同時参加するバトルロワイアル。
六人が好きに殺し合い、一人が残るまで試合は続けられる。
試合の舞台は、深夜のとある地方都市。
普段は大勢の人間が住んでいる近代的な街だが、『組織』の力によって、『リバースエッジ』の開催期間に限り住民たちを排し、無人の街となっている。
無人の街を一つ、丸ごと使ったバトルロワイアル。
これだけでも極めて大規模な事業だが、『リバースエッジ』の真価は、この殺し合いに身を投じる参加者たちにこそある。
参加者たちは、それぞれが超人的な能力を有している。
単独で軍隊一つを壊滅させられるほどの戦闘力の持ち主。
あるいは、人智の及ばぬ天与の才覚の持ち主。
皆が皆、最強の殺し屋たち。
そんな六名が一堂に会して、殺し合う。
もちろん、殺し屋たちとて何の見返りも無く、このような裏闘技に参加するわけではない。
参加者六名の目的は、ただ一つ。
この『リバースエッジ』の唯一の生存者に与えられる優勝賞品。
その内容は、『生存者が望む願いを何でも一つだけ叶える権利』。
願いの内容は『組織』の力で叶えられるモノのみに限定されるが、『組織』が保有する各種リソースは計り知れないものがあり、国一つ程度なら容易く動かすことができる。よほどの内容でない限り、あらゆる願いは叶えられるも同然と言っていい。
「さぁ! それではさっそく! 今宵、刃を交える六人の参加者たちを紹介いたしましょう!」
タキシードの男がそう宣言すると、新しいスポットライトが六つ灯り、六人の男女の姿を闇の中から照らした。
一人目の参加者。
現代に生きる忍者、如月鋭介。
見た感じは、黒い忍者装束に身を包む男子高校生といったところ。
二人目の参加者。
謎の天真爛漫美少女、阿東カナ。
如月と同じくらいの、女子高生ほどの若さ。
三人目の参加者。
元三代目白鷺組組長、白鷺凪。
亡き父の後を継ぎ、極道の世界に身を投じた、外見年齢三十歳前後の女性。
四人目の参加者。
最悪の悪徳刑事、九頭巡一郎。
世の中の全てに対して諦観しているような雰囲気の、やつれた男性。
五人目の参加者。
北の死神、セルゲイ・スニマスキー。
目付きが鋭い、ロシア出身の中年男性。
六人目の参加者。
南の戦乙女、リリアン・マハマット。
常に明るい微笑みを浮かべている、二十代後半ほどのアフリカ人女性。
彼ら六人、いずれも超常。
それぞれの活動域にて、最強と謳われる殺し屋たち。
今宵、それぞれの願いをかけて、彼ら六人は闇に包まれた街で殺し合う。
生き残るのは、ただ一人。