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その転移者は特別です。  作者: 波留
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第5話 異界へ



光が止むと僕は建物の廊下のような場所にいた。

薄暗くだが等間隔に明かりのような物が配置されている。



「ここ……はっ?」


寝転んだまま周囲を見渡す


「なんだあれ……」


よく見ると少し先には10メール位の扉があった。

石材出できており、前にいた教会と同じような感じ。


「まさか……?」少しの期待を胸によせ体を引きずりながら

扉へ近づく。

よくよく考えれば、こんな大きな扉が人の……それも死にかけの奴の力で開くわけが無い。


そう思ったのも束の間、その扉は自然と開いたのだ。

ゴゴゴゴと音を鳴らし、地面を揺らしながら開く。


中に広がっていたのは室内型の祭壇のようなもの。

その祭壇の中心には玉座があり、そこに誰かが座っているのがわかった。


「…………驚いた。誰かと思えば人間……それも死にかけの。どうしたの?城に突撃でもしに来たの?」


雰囲気とは似合わないに少し陽気で妖艶な声が室内に響く。


「……誰か……か。」


「嫌な物ね、ここで死なれるのは。起きなさいよ。」


その言葉に何かの圧がかかる。

その瞬間僕は体を誰かに操られたように起立した。


「ぐぁっ!!!!」


立てるはずもない体で無理やりに立たされ、貫かれた傷がさらに広がり血が服に滲む。


そのおかげか玉座に座っている人物がはっきりと見えた。

透き通るような白髪ではっきりとしたボディライン、それを強調するかのような露出の高い服を着ている。


左右で色の違う瞳が僕を覗いていた。

そして何よりもの特徴が…………。


「翼に……角?……」


背中からは何かの紋章が浮かんでいる四つの赤黒い翼。

頭のラインにそいながら禍々しい角が前方へ向いている。これは……。


「その反応、貴方魔族を見るのは初めてなの?」


女性が話しているのに反応出来ずにいると、


「答えなさい」


「っ!」


まただッ。

言葉にかかる圧、それに操られているように自分の意志とは関係なく動く。


体全体からの激痛に耐えながら言葉を絞り出す。


「初めてです…。」



「ふーん。というかあなた、人間よね。なんでここにいるの。」


「魔法陣で……ここへ送られてきました。無能はいらないって……。」


「無能……?」


僕の言葉に疑問を持つように聞き返す女性。


「……僕は魔王を討伐するために違う世界から召喚させられた勇者組の1人です……。けど……その素質、資格が無いって……。」


「何を言ってるの?……素質なら有るわよ?意味がわからないのだけれど。」


「えっ……?」


「えって、本当に分かってないの。まあけど素質って言っても魔族の方だけどね。」


…………。

魔族……?それって人類の敵の……?そんなの……。


だけどその気持ちとは裏腹に謎の安心感があったのは事実だった。


「そんな顔しなくてもいいじゃない!!私も魔族よ!?……わかったから!いーからステータスプレートだっけ?あれ持ってるんでしょ?渡してみなさい」


何時の間にか痛みが無くなっていて、それに言葉による圧も無くなっていた。


僕は言われるがままにステータスプレートを女性へ渡した。

最初見た時は驚いた顔していたが、次第にその顔はにっこりと笑顔に変わっていった。


「ほらやっぱり!……どうせ職業と固有能力がなくて無能扱いされたんでしょ?」


「…………。、」


図星すぎて何も言えない。


「よく見て見なさい。その横」


ステータスプレートが返ってきて、職業と固有能力欄の横を見る。……。矢印?


そこには逆向きの三角形が着いていた。

慌ててその女性の方を見る。


にこにこしながら「触って見なさい」という顔で顔をクイッと動かす。それにしたがって逆向きの三角形を触ってみる…………。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Lv1


名前:来栖崎 奏


職業:無し △


半人半魔への種族変換にて職業が開花します。


筋力:50

敏捷:50

耐久:50

魔力:50


攻撃力(筋力+魔力):100

守備力(耐久+魔力):100


固有能力:無し △


半人半魔への種族変換にて固有能力が開花します



技能:無し △


半人半魔への種族変換にて技能は習得できます



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、



心臓が飛び跳ねた。

……半人半魔……?どういうことだ。



「半人半魔。半分人間で半分が魔族。人間と魔族のいいとこ取りをしたような存在ね。」


瞬間、一筋の希望が見えた。


「これならッ……!」


これなら無能じゃなくなる……だから僕はまた勇者組としてみんなと……、綾人と天音と一緒に戦えるっ!!


「やめておきなさい。」


僕の思考は一瞬にして女性に打ち砕かれる。


「なんで…………。」


「あなた正気?人類は魔族を目の敵としてるんでしょ?半人半魔になって戻ってもあなたは勇者組の経験値にされるだけよ。」


「そんなはずッ!……綾人や天音は……」


「そんなはずあるのよ。人間達はどうせ自分らを棚に上げて話してたんでしょう?あんなところに長居してたら洗脳されるわよ。」


「人間達は世界の全てを知った気になっているのよ。神様がどうとかさ。例えばあなた達に話した内容は……そうね。「魔王という存在が突如現れてそこから人間と魔族の戦争が絶えず続いている」……とかじゃないかしら。」


「…………そ、そうだ。だからなんだって……」


「あのね、世界の全てを知っているっていうのは傲りよ。」


「……ッ」


「第一、魔族全員が悪いヤツって味方が嫌なのよね。人間でもいるでしょ?善人と悪人が。魔族も同じようなもの。……善悪は教えこまれるものじゃないわ。あなたが見て決めなさい。」


善悪は見て決める……。



「だったらその内容とかを教えてくれても……。」


「だから、そんなの関係ないのよ。……大切なのは貴方な何をしたいかじゃないの?世界の全てを知っても貴方がしたいことの解決にはならないわ。」


「僕が何をしたいか……。」



何をしたいか……?そんなの元の世界に返って……。

………………いや違うな…………僕は復讐をしたいんだ。


勝手に呼び出されて、善し悪しを勝手に決め付けられ、

自身の持っているカードで生き残らなければ行けないのに上辺だけ見て見捨てた教会の奴らに。


「ふふっ、いいわね。その憎悪があなたの活動原理になるのよ。あなたの敵は、あなたの目指す未来を拒む奴らよ。」


「……そうだな。……その通りだ。」



「決めなさい来栖崎 奏。今、半人半魔へと成るか今まで通り惨めなまま生きていくか。」


そんなの決まっている。


「なるに決まっているだろう。」


「いいわね、私好みよそういうの。……私の力を自由に使う権利をあげるわ。……。」


「アスタロトの名のもとに、契約を結ぶ。」


女性……アスタロトは指から血を垂らし、その血を「飲め」と言ってくる。

僕は迷わずにその血を、指諸共噛み付く。


「あら欲しがりね、かぶりついてくるなんて。ますます気に入ったわ。……おまけつけてあげる。」


瞬間耐え難い激痛が再び体の中を駆け巡る。


「があああああああああぁぁぁ!!!!!」


例えるならそう、体の作りを諸々変えられているような痛み。

脳、内臓、骨、筋肉、細胞、DNA、全てが変えられてるような。


「存分に私の魔力を流し込んであげたわ。仕方ないから耐えれるように偶に回復させてあげるわよ。……けど死なないでね?」


ニヤリと笑みを浮かべるアスタロトを見ながら僕は激痛に耐え続けるのであった。




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