その人は『今は』真面目に働いていたが
「なんであの人があんな苦労しなくちゃいけねぇんだ」
居酒屋で涙ながらに語る同僚。
「汗水垂らして、誰よりも真面目に働いているっていうのに」
俺たちの仕事は主に庭木の手入れなどといった一般に言う造園業である。つい先日、七十の大先輩が倒れてしまったのだ。頼れる家族もおらず、貯金もさほどなく。入院するのも大変だったようだ。
「なんであの人があんな目に遭うんだ」
そう苦しそうに言う同僚に俺は何も言えなかった。
家族がいないのは不倫三昧で離婚され、子供達も不倫して家庭を壊した父親に愛想をつかしたから。貯金がないのは不倫の慰謝料や養育費を払わなくてはいけないのにギャンブルがやめられず浪費したから。入院するのを苦労していたのは、貯金がさほどないということと、そういった過去があった為誰も保証人になってくれる人がいなかったから。とは言えなかった。
ここ数年の姿を見て真面目に働いているところしか見ていないと、今までずっと真面目に働いてきたんだと思ってしまうんだな。なんて思いを馳せた。
なんで自分が知っているかというと、じいちゃんに聞いたからだ。どういうことかというと、じいちゃんは銀行員だった。そんなじいちゃんに大先輩は『銀行員なら慰謝料もなんとかする方法知ってるだろ!』と近所に住んでいて挨拶くらいしかしたことのないじいちゃんに突撃したから。 慰謝料なら銀行よりも弁護士では? なんて思った、じいちゃんだけではなく居合わせた家族もそう思ったが玄関先で『どうすればいいんだ』と大声で騒ぐから仕方なく玄関で話を聞き、それは弁護士に相談した方がいいと説得したらしい。弁護士は金がかかるとごねた大先輩にじいちゃんは警察にも相談しようと提案。警察にいくとまずいことだけはわかっていたのかすぐに帰ったらしい。その後も何度か来たが家族みんなで『警察に相談しよう』の一点ばりで追い返したようだった。就職先にそんな大先輩がいることを知った父ちゃんはじいちゃんと相談のもと俺に大先輩の数々のエピソードを教えてくれた。
じいちゃんが教えてくれたそれらのエピソードからわかるのは大先輩はかなり楽観的でその場が凌げればなんとかなると思っているところがある、ということだった。そして、その場を凌ぐために他人の手を借りようとするの。助けを求めることは悪いことじゃない。でも。
そんなことを思い出していると、酒が入って涙ながらにも同僚は話出した。
「あんまりだから、俺、保証人になったんだ。頼れる人いないって言うし」
そう口にする同僚の言葉に体が固まった。
「病院の、入院するときに書くやつあるだろ。アレだよ」
俺の反応を保証人の意味を誤解しているものだと思ったのか、心配するなとでも言いたげに言う。
「大丈夫だって、入院だけだし。借金とかの保証人になったわけじゃないし」
ふと、じいちゃんの言葉を思い出した。
「確かに不幸が続いた、でもそれらは備えていればなんとかなったことと自分がしでかしたことがかえっているだけだ。かわいそうに見えるが、自業自得としか言えない。
もし、もしだ。あいつが自分の境遇を理由に助けを求めたとしても手を貸すなよ。
そんなことしちまったら最後までおんぶだっこをせがんでくるだろうから」
最後。最後っていつまでだろう。
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