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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

無実の罪で処刑された神秘姫の代わりに魔法使いは断罪を決行する

作者: 兎緑夕季

「悪魔を殺せ!殺せ!」


ストゥルスト帝国の広場は民衆たちの怒りと憎悪の声で響き渡った。

向けられた本人には言い返す力はない。ギロチンの前へと引きずられる素足は血塗れ、太陽のように映える長く艶やかだった髪はバッサリと切られ、罪人の烙印を押された。


「レイラ・テリウス!神聖なる神秘姫の名を語った罪!その死をもって償ってもらおう」


レイラと同じ赤い髪を持ち、同じ青い瞳を持つ、大きなマントを翻した男が冷たく見降ろしていた。


「お父様…」

「父などと呼ぶな。魔女風情が…」


生まれて18年。家族だと信じた人が無慈悲にかける言葉に悲しみと悔しさが募っていく。


「よもや、私の娘に成りすますとはな…」


違う。私は本当に貴方の娘なの!


否定しようとしても、首に回された縄に締め付けられ、言葉は紡げなかった。

ただ、バルトニア・テリウスに懇願のまなざしを向けるしかない。

それが意味をなさないと分かっていても…。


「陛下、おさがりください。呪われてしまいます」


はつらつとした金髪の髪と同色の瞳の青年がバルトニアとレイラの間に割って入る。


「マイルズ…」


かつて私に愛を囁いた幼馴染。そして婚約者だったマイルズ・シアトニアの足が腹に強く入った。


「ウッ!」


悲鳴をあげてもかつてのように笑いかけてはくれない。


「気安く呼ぶな。汚らわしい!」


蹲り、裏切りに涙するしかできない。


「お父様。マイルズ!」


鈴の鳴くような可憐な声が脳を貫いた。煌びやかなドレス。

カールした栗色の髪を靡かせた少女がマイルズの腕に巻き付いた。


「神秘姫様!神秘姫様!」


民衆が彼女に敬愛と尊敬の歓声を捧げる。


「ミモナ。ここに来てはダメだろう」


父が妹に優しげな眼差しを向ける。

そんな表情、私に見せてくれた事なんてない。


ミモナ・テリウス、母親は違えど、唯一の姉妹だった。

自分の事を慕ってくれていると思っていたのに…。


「私も見届けたいんです。神秘姫として」

「心配なさらないでください。神秘姫は私が守ります」

「シアトニア卿。よく言った」

「もう、マイルズったら!」


頬を染めるミモナ。決意を表す婚約者たるマイルズ。そして父として娘が選んだ男を認める父。そこには一つの家族があった。今まさに処刑されようとしているレイラは絶望した。


誰も私の声に耳を傾けない。

神秘姫の称号は私の物だったのに…。


ストゥルスト帝国は1000年前、偉大なる魔法使いが作ったとされる神秘の国だ。あらゆる場所に魔法が根付き、王家も民も皆、魔法が使える。あらゆる災厄も魔法の結界によって守られる安寧の地。死の間際、偉大なる魔法使いは自分の一族である王族たちに神託を残した。


『私の魔力に適合する一族の者が魔法を管理させよ。そうすれば、国は永遠に繁栄する。よいな…』


偉大なる魔法使いの死後、予言通り、適合者が一族から現れた。彼女らは皆、偉大なる者と同じ五芒星の痣を持って生まれた。そして、彼女らは皆、その時代の王の長女であった。


レイラも戦闘王バルトニア・テリウスと魔法家系筆頭のプラウニア家のご令嬢との間に生まれた長女だった。そして慣例通り、彼女にも腕に五芒星のマークがあり、生まれた時から神秘姫として生きる事を定められた。


レイラ自身もその運命を受け入れ、魔法の知識、マナー、あらゆる学問にいそしんだ。すべては国の繁栄のために。10歳を迎えた年に優しかった母が闘病の末にこの世を去っても、悲しみに胸を押しつぶされながら神秘姫が毎年行う祈りの儀式を全うした。それが自分の使命であり、他の人々のように悲しんではいけないのだと思ったからだ。


父が新しい妃を寵愛し、一歳差の妹、ミモナを連れてきた時は驚いたが、それでも神秘姫はすべての者に慈しみを与える存在だと散々言われてきたレイラは異母兄妹を受け入れた。


「お姉さま、神秘姫は私が引き受けますから、貴方は罪人として惨めに死んでくださいね」


優しい微笑みをたたえながら、耳元で囁く妹の言葉に戦慄した。


「違う…」


晩餐会でミモナに毒を盛ってなどいない。母の実家であるプラウニア家と結託して、神秘姫の名のもとに父の王座を狙ったりなどしていない。


言い返そうとしたのに…。


「分かってますよ。でも、お姉さまの言う事なんて誰も信じないわ。だって、お姉さまのお母様は恐れ多くも陛下の子を身ごもったとウソをついて、我が子を神秘姫に仕立てた女なんだもの」


全部デタラメだ。どんな意図があって、母がそんなウソをつく必要があるの。

現に私には五芒星が…。


焼けただれ、神秘姫の証の痕跡の消えた腕を掴まれ、痛みに顔が歪む。


「心配しなくていいわ。陛下の長女として神秘姫は私がちゃんと引き継ぐから」


冷たく笑うミモナにレイラはすべては彼女の思惑だったのだと気づいた。

すべての悪行を姉に擦り付け、プラウニア家惨殺に導いた張本人。


どうして気づけなかったのだろう。仲が良かったと思っていたのに…。


今となっては、反省すらできない。父も婚約者も神秘姫だと崇めてくれた民衆も敵となってしまった。


悔しさと悲しみは振り下ろされるギロチンの歯に消し去り、視界は暗闇へと包まれたのだ。



☆☆☆☆☆



ああ…。まさか僕の愛しい神秘姫を無実の罪で殺してしまうとはね。

帝国も長く時を刻みすぎた。そろそろ、潮時かな。


未だ、眠りについているレイラを撫でながら、一人の男は遥か過去に想いを馳せる。

歴史の中では偉大なる魔法使いなんて大層な名前で呼ばれているが、その正体はたまたま強い魔力を持って生まれた少年に過ぎない。それでも、この世界を作った神の依代となり、魔力がつきるその時まで、世界を命運を握り続けると決めたのは共に歩むと進み出た愛しい少女がいたからだ。永久とも呼べる長い時を生きるというのは、それまでの人間関係をすべて捨てるという事。それなのに彼女は簡単に僕を選んでくれた。


だから、僕らは神の民たる魔法使い達が安全に暮らせる地として帝国を作った。それが、見守るのに適していると思ったからだ。しかし、帝国を守るためにかけた魔法の結界も盤石ではない。一定の周期でほころぶ。その修復を行うために少女が出向く事になった。しかし、僕も彼女もすでに神に近い存在。強すぎる魔法はほころびを治すどころか、壊してしまう可能性があった。だから、少女はリミッター変わりに肉体を持ち、何度も結界を修復した。それが神秘姫の正体。彼女は現世にいる間は僕の事を忘れている。だから、誰と生きようとかまわない。役目を終えれば、いつも僕の所に帰ってきてくれるから。僕は現世で彼女が幸せに暮らせるように配慮した。帝国を作った時に僕の大切な友人だった男をその王にした。彼の一族なら彼女を大切にしてくれるだろうと思ったから、必ず王の一族に転生させたのだ。


それなのに、彼女を…レイラを傷つけるなんて。


僕は昔言ったはずだ。生まれ変わる彼女を守れと。その事実も忘れ、言ってもいない王家の長女が神秘姫だという話を作り上げるなんて、想像すらしていなかった。


だから、この始末は僕がつける。かつての友人の子孫だからと言って許すつもりはない。


「いつもなら、もう目覚めてもいい頃なのに…」


やはり、レイラと呼ばれた少女はグッタリしている。それでも、僕のそばにいる。

時間はかかるが確実に傷は癒えている。


僕は愛しい少女の額に唇をそっと這わせた。


「大丈夫。目覚める頃にはすべて終わっているよ」


その証拠に、本物の神秘姫を殺した帝国は崩壊寸前だ。

さあ、まずは誰から始めようか。



☆☆☆

バルトニア・テリウスの場合


かつて王と呼ばれた男は廃墟同然となった城の一角で震えていた。

なぜこうなってしまった。私は様々な戦で勝利をおさめ、帝国の歴史の中で一二を争う武勇を立てたというのに。その伝説も一夜にして崩れ去った。

私の娘を騙ったとしたレイラを処刑したその時から、青空は消え、嵐と雨が降り続いている。地面は割れ、草木は枯れ果てた。挙句に神秘姫が守る結界は壊れ、魔物が至る所に湧いて出ている。


なぜだ。なぜだ。

自分に問いかければ問いかけるほど、その選択が誤りだったのではないかという感情が湧き上がってくる。


「どこだ。王は!」


レイラこそ神秘姫だったと信じるレジスタンスの連中の声がすぐそばまで来ていた。

あの子は私の娘だったのか?いや、そんなはずは…。それなら私は分かるはずだろう。

それにあの子の刻印は消えていたじゃないか。そうさ。私の娘であるはずがない。


「哀れだね」


誰もいないはずの暗闇の中にローブを纏う人影が浮かび上がる。


「誰だ!」

「僕が誰かなんて関係ないよ。実の娘をその手にかけた大悪人のお前にはね」

「レジスタンスか?奴を始末しろ!誰かいないのか?」


辺りを見渡しても無造作に押し倒された王座が見えるだけだ。


「この後に及んでまだ王様気取りとはね。僕も人を見る目がないね。全く…」


「奴を殺せ!」

「神秘姫様の怒りを鎮めるのだ」


憎悪に燃えるレジスタンスの声が再び耳を通り抜けていく。


「頼む。私を助けてくれ!奴らに見つかったら何をされるか!」

「殺されるだけだろ。レイラみたいに…」

「ひっ!」


男の殺意を向けられて、指一つ動かせない。戦闘王と称されたこの私が震えている。


「いいよ。奴らのいない所に連れて行ってやる」

「そうか。恩に切る。好きな物はなんでもやろう」


かつて王と呼ばれたバルトニアは見知らぬ男の足に縋りついていた。


「本当に救いようがない。金などもうないくせに…」

「何!」


目の前の男がマントを翻したその瞬間、私の体は炎に焼かれていた。


「ああああああっ!」


だが、次の瞬間、両手両足を縛られ、魔物の大群の前に置き去りにされていた。


ここはどこだ?


真っ暗闇の中、再び、炎に焼かれては魔物に嘗め回される。


ああ、ここは地獄だ。

あの男はきっと地獄の死者だったのだ。取り返しのつかない事をした私を罰しに来たのか。


「あははははあっ!」



魔法使いは球体の中で理性を手放した王を見据えた。


「そう簡単に死なせるわけないだろう。彼女の苦しみはこんなものではない。君は帝国の歴史と同じ1000年の時をその地獄で過ごせばいい。僕の気が済めば、その後に死なせてあげるよ」


球体の中で泣き叫ぶ男にもはや、王とは呼べない。



☆☆☆

マイルズ・シアトニアの場合


レイラが死んでから、すべてが変わってしまった。

人々は飢えに苦しみ、王の権威は失墜。貴族達もそれに続くようにその力を失った。


「お前はレイラ様の婚約者だったのでしょう?どうして、処刑を止めなかったのよ!」


悪化する帝国の状況と比例するように、一族たちから責められるようになった。


俺だってやりたくてやったわけではない。

レイラとは幼馴染だった。婚約者になったのは家同士の政略だったが、俺達は馬が合った。幼いころから彼女と運命を刻むのだと信じて疑わなかったさ。

レイラは優しかったし、いつも俺を気遣ってくれた。

だが、神秘姫の夫というのはかなりストレスがたまる。

誰とあっても、必ずレイラの名前が出てくる。誰一人として、俺を見ようとはしない。そのうち、レイラが鬱陶しくなった。

そんな時、ミモナが寄り添ってくれた。しかも、美形だが、いつも凛としているレイラと違い、ミモナは可憐でいつ倒れてもおかしくない儚さがあった。

守ってやりたいと思うのが男だろ。

そうしている間にレイラとの距離が出来たのは事実だ。


「レイラ様が民に手をあげた」

「レイラ様は本当に王の子なの?」

「レイラ様の母親は複数の男性に体を許すような女だったんですって」

「レイラ様が王に反逆しようとしているそうよ」


その頃からレイラの悪い噂を耳にする機会が増えた。


「マイルズ。もしかして、本当の神秘姫は私ではないの?」


何気なくミモナが発した言葉が真実だと思った。

だから、帝国を守るためにレイラに刃を向けたのだ。それ以外に理由なんてない。

それなのに、今、国は崩壊の危機にある。


レイラが本物だったいうのか?


空が分厚い雲に覆われた日からミモナの姿もない。彼女は逃げたのか?

神秘姫とは思えない行為だ。

ミモナの正体にもっと早く気づけばよかった。

だから、せめて処刑の責任は取る。


「王を殺せ!王を殺せ!」


レジスタンスとして、王の首を取ればレイラだって許してくれるはずだ。


「本当にそれで許されるとでも?彼女と運命を共にする権利を与えられておいて、あっさり捨てたくせに…」


どこからともなく男の声が囁く。

それと同時に志を同じくしたレジスタンスの仲間達からの冷たい視線が刺さった。


「なんだ、その目は…」

「捕らえろ!コイツも神秘姫様を処刑した奴らの仲間だ!」


見た事もない男の叫びに従うように、仲間達に抑え込まれる。


「やめろ!俺を捕まえたところで!」

「意味はない?」


真っ黒な髪の男がこちらを覗き込んでくる。


「ウッ!」


男に腹を蹴られ、泥の中に落とされる。


「確かにレイラは優しいからね。こんな事は望まないだろう。だが、僕の気は少しは済む」


男はまるで操り人形にでもなったようにフラフラ動くレジスタンスのメンバーたちに顎で指示を出した。彼らはマイルズの頭を地面に押し付けた。


俺は何も悪くはない。


マイルズ――

こちらに笑いかける幼い神秘姫の瞳が頭を駆け巡っていく。

なぜ今、君の顔が浮かぶんだよ。


「レイラ…」


その言葉が続く前に無慈悲にその首は斬り落とされる。


「お前にも王と同様に永久の地獄の中で痛みに苦しんで欲しいが、一瞬でも彼女の事を想われるのは虫唾が走るよ!」


マイルズの頭が雨の中に消えていくのを男は冷たく眺めていた。



☆☆☆

ミモナ・テリウスの場合


どうしてよ。どうして、国から出られないの!


私が神秘姫として国を盛り立てていくはずだったのに。お父様だってマイルズだって、民だって私を神秘姫だと言ったじゃない。だからお姉さまを殺したのよ。


あの忌々しい女を…。


私の方が可愛いのに。私の方が愛される価値があるのに。

先に生まれたからという理由だけでチヤホヤされる身の程知らずのお姉さま。

神秘姫なんて、ただのお飾りでしょう。刻印なんて、大げさなものまでぶら下げて、何様のつもりよ。私だって王女なのよ。お姉さまの物を貰ったっていいはずじゃない。だから、あの女を捕まえて、神秘姫の証たる刻印を火であぶってやったのに。

うまい具合にあの女を蹴落とす噂だって流したら、予想以上に早くアイツを消せた。


これからは私が一番。そう思っていたのに、雷がずっと鳴り響いている。これらのすべては私のせいだとお父様は言った。周りの連中もみんなして私を責める。


魔法も使えなくなるなんて!

おかしい。おかしいわ!


どうして、計画通りに進まないの!

マイルズだって役に立たない。

なんのために好きでもない男に腰を動かしたのかわからないじゃない。


強い雨が激しく頬を貫いていく。

着飾っていたはずのドレスも至る所が破れて、みすぼらしい。


王女なのに。王女なのに!


「クソッ!クソッ!」


このままでは終わらない。そのためにも国から出たいのに、何かに阻まれる。


結界はなくなったんじゃないの?

まさかレイラの仕業?

死んでも私の邪魔をするの?


レジスタンスの足音が聞こえる。

アイツらに見つかったらただじゃすまないじゃない。


「ここから出してあげようか?」


突然目の前にこの世の者とは思えないほど美しい男が立っていた。


「助けてください!ここは危険なんです」


ほら、やっぱり私は特別。どんな男も私が頼めば聞いてくれるの。レイラとは違う。


「いいよ」


男の優しい声が耳を通り抜けたその瞬間、私の意識は幸福に包まれた。

だが、その次に襲われるのは嫌悪感と視界の悪さだ。

体が支えられず思わず地面につく。


「ほら、君の望み通りに国から出してあげたよ」


近くで恐ろしく冷たい男の声がする。

だが、首が思うように動かない。

声を発したいのに口が動かない。


かすむ視界にただれた顔の老婆の姿が映り込む。それが、水たまりに映る自分だと気づくのに数秒かかった。


どういうこと?これは誰?


「君だよ」


愉快そうに男は言った。


私?バカ言わないでよ。私は美しいのよ。


「おい。さっさと歩け!」


別の男のドスの聞いた事に体を震わせる。


「奴隷の分際で!」


突然、背中を鞭で叩かれて悲鳴をあげる。やめてという言葉が出ない。

体中の首という名がつく部位すべてがジャラリと音を立てる。

真っ黒な鎖が伸びている事に気づき、ギョッとした。


私は王女なのよ!どうしてこんな目に!

助けて…お願い。助けて…。


醜い姿の老婆は泥の中へと引きずりこまれる。



姉を妬み、その命を奪った女にはお似合いの末路だ。だが、僕にだってレディーファーストの精神は持ち合わせている。命がつきるのはせいぜい後10年ぐらいだろう。その間、レイラが味わった以上の苦しみを経験する事で許してやるよ。


神秘姫を苦しめた奴らに罰は下した。飢えと苦しみに怒りを燃やす民衆の声がこだまする。よく言うよ。神秘姫を死に追いやった責任はお前達にもある。処刑の場に居合わせ、彼女を罵倒をしたのは誰だ。お前達も同罪だ。

しかし、あの妹王女に騙されたというのも事実だ。

だから、命だけは奪わないでやる。その変わり、神秘姫の加護の元に享受した魔法は取り上げさせてもらうよ。



☆☆☆

その後の顛末


1000年以上栄えた帝国は一夜にして壊滅した。魔法を持っていた民たちもその力を失い散り散りになったとされる。その理由は様々囁かれているが確かな事は分かっていない。しかし、美しい湖となった帝国の跡地には一人の王女の像が立てられている。国を失った民たちが作ったとされる像には文字が記されている。


「過ちを忘れるべからずと…」


像のモチーフとなった王女――レイラ・テリウスがどういう人だったのかもはや分からない。しかし、帝国なき後も多くの人に崇拝されているのも事実である。



鳥がさえずっている。


「さあ、起きて。僕のお姫様。今度は君に相応しい世界を作ってあげる。だから目を覚まして」


魔法使いのささやきに少女はゆっくりと身じろぎする。

暖かな日差しに照らされる。

目覚めの時はすぐそこだ。

お読みいただきありがとうございます。


ちゃんと、ざまぁになっている、何かしら心に響いたと思いましたら、ブックマークと評価をつけていただけると魔法使いは狂気乱舞するかもしれません。

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