第2話 転生しても幼馴染の恋人と巡り逢う為に禁断の書を手に入れる旅に出た元悪役令嬢の私が何故かパーティーから追放された件
「何だよ? お前にしちゃシンプルなタイトルじゃん?」
「だって、この前のやつ阿良弥が長すぎだって」
……因みに
『転生しても幼馴染の恋人と巡り逢う為に禁断の書を手に入れる旅に出た元悪役令嬢の私が何故かパーティーから追放された件』コレが彼女が書いた前作のタイトル。これもう中身読まなくてもいいよね?
前作を読んだ(読まされた?)のは二週間前。普通の執筆ペースってのが想像付かないけど文章なんて何も書けない僕からするとかなりハイペース。その時、確かに小言は言ったけど、それでも内容は良かったんだ。基本的な言い回しとか技法とか、そんな物は後から学べばいい。何故かはわからないけど、真夏の書く稚拙な小説はいつも僕だけは楽しく読めた。そう、僕だけは。
文芸部には年に二〜三回発行している会報誌がある。その冊子は基本的には部員オリジナルの小説が掲載されている。
文芸部の新入生は全員、入学後すぐにその冊子に短編小説を掲載する決まりがある。
その時、文章の書けない僕はある先輩の提案で「図書館にある入荷して間もない小説の書評コーナーを二人で担当するのはどうだ?」と助け舟を出して貰った。先輩と二人で選んだ本を読み終わったら、フリートークをして、その内容を出来るだけ皆んなに興味を持って貰えるように先輩が文章に起こすのだ。
その時、みんなが今までに書き溜めていた小説を掲載する中で、真夏は会報用の新作をたった一日で書き上げて提出した。
しかし、入学して最初の会報に載せられた真夏の小説は、部内だけに留まらず普段は文化系部活の活動内容に意見なんてしてこない一般生徒からも様々な酷評を受ける結果となってしまった。
対して、当時真夏と同じ新入生という立場の僕が先輩と担当した書評コーナーは、ありがたい事に生徒のみならず教師陣からも高評価を頂いた。
それ以降、真夏は会報で小説を発表するのをやめ、その代わり僕に執拗に作品の感想を求めてくるようになったのだ。
「真夏。まだ最後までは読んでないけど、コレって真夏のオリジナルだよね? なんか似たような感じの小説、昔読んだことあるような気がするんだよね」
僕の問いかけに胸の前で腕を組んだ真夏が鼻をフンと鳴らして勿論だと答えた。そして何かを言いたそうにキラキラした眼差しで僕を見つめてくる。早く先を読んで感想を聞かせろとほっぺに書いてある。
その視線から逃げるようにノートへと目線を落とす事で返事とする。そのまま黙って真夏の小説を読み進めた。真夏は傍で、僕が読んでいた文庫を手に取りペラペラと頁を捲った後、別の創作用のノートとペンを取り出し、時に頭を掻きながら新作のアイデアなのかプロットなのか、幾つか箇条書きの様なメモを書き殴り始めた。