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第13話 旅するワタシの物語

 真夏(まな)がネットへの投稿用に書き直した小説を読む。

 タイトルは『旅するワタシの物語』

 真夏が高校に入って初めて文芸部の定期刊行誌に載せた作品。この作品を酷評された真夏はそれ以降、幾つもの作品を書き続けているにも関わらず、文芸部の冊子にはひとつも発表をしていない。僕に読ませる以外誰にも見せていない。


「ねー、感想はー?」真夏がベッドの上にうつぶせに寝転がり足をばたばたと動かしながら聞いてくる。

「そんなすぐ読めねーって。つか年頃の娘が勝手に人のベッドに寝転がんなよ!」

「私さー、今回投稿しようと思って推敲しながら読み返したんだけどさ。きっと阿良弥(あらや)に言われなかったら読み返さなかったと思う。そしたらさ、このままこのお話の登場人物たちって私の中からも消えちゃってたかもって。少しわかったかも阿良弥の言いたかったこと」

 そう呟いた真夏は、恥ずかしいのかバツが悪いのか、僕の枕を両腕で抱え込んで乗っけた顔ごとそっぽを向いた。

 不覚にも、そんな真夏の仕草や態度が可愛いと感じてしまい小さな溜め息が漏れた。


「これさ。伝えたい事はわかるんだけど、登場人物少し減らした方がいいと思うぜ」

 小説の主人公である〝ワタシ〟には名前が設定されていない。それどころか、この小説の登場人物はみんな自分の名前が無いし出てこない。会話の中の自分についてが一人称なのはわかる。二人称もまぁアリだろう。

 この書き方には真夏なりの狙いがあるのだろうけど、二人以上のシーンの会話で誰が誰だかわからなくなっていて、まずそこで読者が離れてしまう。

 自分探しの旅に出たワタシが、旅先で起きる様々な事件や出来事に遭遇して、ワタシの思考がその都度出会う登場人物との会話で揺れ動く様が伝えたい事の一つだろう。そして最終的に外部と内部から形成されていく自己と向き合うのだ。

 それぞれの出会いは重要ではあるが、それでも登場人物はもう少し整理できるし、その方が読み易くもなる。

 その上で、例えば方言なんかを使って喋り方にもう少し特徴をつければワタシと話している人が増えても判別できる。地方毎の服装や文化の違い、考え方の違いも出せれば旅をしている臨場感も増すだろう。

 幸いにも、今はある程度の知識をネット検索で得られる。と、途中まで読んで、いやリファイン前のものは一度読んでいるから正確には読み直してだけど、現時点で真夏に出来るアドバイスをした。

 そして、真夏の返事を聞いてすぐに後悔することとなった。


「じゃあ、これから毎日学校帰りに阿良弥ん家に寄るね。だって私ん家パソコンないもん」

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