セカンドライフ
初仕事を終えてから1週間、俺は暇をもて余していた。
ミヤから当分は仕事が無いと言われ、宇宙旅行を楽しめると喜んだ。
でも考えてみてくれ、宇宙船での生活ってやつを。
起きて飯を食う。宇宙を見る。寝る。
何もねーんだよ。
当たり前だけど仕事が無いと何も無いのが日常なんだ。
だからミヤに直談判だ!
普段ミヤ居ると言っていた部屋へ赴き扉を叩く。
「ミーヤーちゃん、あっそびーましょー。」
ここ1週間、時々世間話もしていてミヤとはなかなかに打ち解けたと思う。
俺の女だと言っても過言ではないかもしれない。
「は?何です?何しに来たんです?」
扉を開けて睨み付けられながら言われる。
おっちゃん泣きそう。何かしたかしら?
「いえ、何か気持ち悪い事を考えてそうてイラッとしてつい態度に出ただけです。気にしないで下さい。」
エスパーですか?
ミヤと俺の心の距離は結構遠いらしい。
「で、何しにきたんです?」
「いや、暇だから何かないかなーと。」
仕事がしたいとは言わない。働きたくないから。
「ここに来たって何も無いですよ。」
「ミヤって普段なにしてんの?」
「何か起きないかなーと思いながらボーとしてます。最近はクロの構成サンプル弄くって遊んでます。」
この娘、人の細胞でなにしてんのよ。
「じゃぁこの船の行き先とか目的は?」
「無いですね。」
は?
「前にここは宇宙船であり世界だと言いましたよね?世界に存在理由を問うて答えがあるとでも?」
「・・・無いです。ごめんなさい。」
怒られた。
じゃぁミヤって何者?
そもそもここにはミヤしか居ないって言ってたけど、元はドコから来たんだろう?
「私は何なのか、ですか?さぁ何なのでしょうね?それに、クロが来る前からここに居たとも言えますが、クロが来た時から存在が始まったともいえますね。」
禅問答みたいだ。いや哲学か?
「何も分からないって事か・・・。」
「それは違います。この世界に繋がる全てを知っているから答えが無いんです。」
うん。俺には分からない事が分かった。
「あれ?じゃあ、この前の仕事って何の為にやったの?そもそもこの世界に居るなら協力しろって・・・。」
「あれはクロにこの世界の法則の一部を理解して貰う為にして頂いただけです。言いましたよね?普段は放置すると。そして協力して欲しいと言ったのは、クロはこの世界では異物でありエラーだったのでそれを解消してもらおうと思ったのです。ですがその必要は無くなりました。」
と言いますと?
「クロにやって頂く仕事も協力して頂く事も無いです。好きにここに存在して下さい。」
暇なのをどうにかしようと思ったら、ずっと暇なのが確定しました。とほほ・・・
「行き先も目的も無いのかぁ。何か楽しい事無いの?」
「楽しいですか。それは人が生きる中で感じる事ですよね?ここには存在しないモノです。」
無いのかー。どうしよう。
「・・・そうですね。私もそれを感じてみたいです。ですから私はこの世界をそのままにして他の世界に生まれ変わります。ですからクロは私を探しだして下さい。」
何でそうなる?
「1人乗の女性を探す為に世界を旅するとか楽しそうじゃありません?趣味に合いませんか?」
合うね。燃える!
「では、クロさん。来世で会いましょう。」
そう言って微笑むミヤを綺麗だと思ったのを最後に俺は意識を失ったのだった。