第77話 目覚める希望
――――ガガガガガ
「はぁはぁ、くそっ......!」
ゼインは折れた右腕を左手で抑えながら後ろから銃撃してくる二体の機械兵士の射線を切るように距離を取っていく。
そして、物陰に隠れながら様子を見る。
そこには機械兵士の間に挟まれながら悠然と歩くグリエラの姿があった。
「言っておくけど、君らに魔力探知が出来て僕に出来ないことはないからね?」
そう言って、機械兵士が物陰に隠れるゼインに銃口を向けると再び銃撃を始めた。
それを転がって避けながら左手で魔力を飛ばしていき、逃げる道中で魔力を付与していった瓦礫と位置を入れ替えていく。
それによって、機械兵士の頭上からは大量の大小様々な瓦礫が雨のように降り注いだ。
機械兵士はグリエラを守るように身を挺しながらそれを防いでいく。
「その程度の質量じゃロクに傷はつけられないよ」
「わかってるよ!」
その瞬間、ゼインは瓦礫の一つと入れ替わり、グリエラの背後を取った。
そして、握りしめた拳を思いっきり叩きつけていく。
―――ガンッ
「チッ!」
しかし、その攻撃は機械兵士のボディの一つに防がれる。
ゼインは咄嗟に距離を取ると同時にグリエラに向かって魔力を放った。
それは先ほど触れた機械兵士と入れ替わり、飛ばした魔力の速度でグリエラに突っ込んできた。
「やっぱりその能力厄介だね」
もう一体の機械兵士が飛んで来た機械兵士を全身を使って防いだ。
すると、先ほどと同じように瓦礫と入れ替わったゼインがグリエラの背後を取って振り上げた足を降ろして踵落としをしていく。
それをグリエラは初めて腕で防ぎ、ゼインの足元から緑黒いオーラを放った槍を出現させる。
「初めて攻撃魔法を使ったな!―――反転・対極」
ゼインは身をよじって躱していくとグリエラの攻撃に干渉し、槍の攻撃をグリエラの足元に出現させた。
「っ!?」
しかし、その槍はグリエラの顎下に届くまでに霧散していってしまった。
そのことにゼインが驚いているとグリエラは不思議そうな顔で答える。
「何にそこまでの驚く要素がある?
他人が使った魔法なら未だしも自分で生み出した魔法だぞ?
なら、当然その魔法の構成術式を知っているはずだ。
それを解けばカウンターが僕に届くことはないのは当然だろ」
「簡単に言っちゃってくれるが、その構成術式を今にも殺されそうって時に一瞬で解ける奴はいないんだよ」
「自分の魔法すら自分で消せないのかい?
それはなんというか......あまりにも時代遅れ、いや乏しい頭をしてるみたいだね」
「お前らのようにほぼ不死じゃないからな!」
グリエラはゼインに先手を譲るように先ほど踵落としを防いだ腕をぶらぶらと揺らしていく。
「ほら、どうした? 僕の腕に君の魔力を付着させたんだろ?
適当な石と位置を入れ替えて腕を引きちぎったりしないのかい?」
「......っ」
「ふむ、その反応的に部分的に魔力を付与しても無理なようだね。
ま、部分的な情報は不確定要素が強いから当然かもしれないけど。
それじゃあ続きを始めよう。君が行かなければ僕が―――ん?」
グリエラが何かを捉えた様子と同時にゼインは思わずニヤリと笑った。
すると、ゼインの後ろからゼインが退避させた隊員達、電波塔を破壊しに行っていた隊員達が増援に来たのだ。
当然、その中にはリナ達の姿もあり、彼らは特魔隊最強だと思っていたゼインが平然と押されてることに戸惑いが隠せなかった。
一人の隊員がゼインに声をかけていく。
「隊長、まさかあの小柄な少年が......」
「怠惰の悪魔グリエラ。見た目に似合わず頭が酷く切れる厄介な相手だ。
さらにアイツの魔法特性は『停滞する者』。
あいつの魔力に触れれば時が止まったように行動が遅くなる。事実上の死だ」
その言葉を聞いて思わずルクセリアは呟いた。
「『停滞する者』......なんとも怠惰という称号にふさわしい感じね」
「なるほど。あの時の襲撃で俺が動けなかった訳が分かったぜ。そして、ようやくぶっ殺せる!」
「正しく見た目に騙されるな、だな。
内包する魔力がバカみたいに違う。
魔力探知すればその情報量だけで頭痛がする」
「本来大罪の悪魔というものはこれぐらいのものよ。
憤怒の悪魔が異質であっただけ」
エギル、グラート、リナもグリエラを見た感想を呟いていくとその中でリナの発言にグリエラはピクッと反応を見せた。
「憤怒の悪魔......リュウ君の姿が見えないけど、彼はまだ現れないのかい?」
「てめぇが先制で行動不能にしただろうが! 俺の目の前でな!」
「たかが腹部に穴を開けられた程度で生死を彷徨うような眠りに?
ふむ、彼の器が思ったよりも適合してなかったか?
いや、触れた感触的にはそうでもなかった。
だから、僕は覚醒を早めるための悪魔の因子を注入したというのに」
グリエラはぶつぶつと呟くと「気長に待つか」と結論付けてゼイン達の方へと視線を向けた。
「さて、これで君達は僕より数的有利にたったわけだけど......どうにもその数に対して僕の質に届いてないような気がするんだけど本当にその数で大丈夫かい?」
「おいおい、まさか敵に心配されてるんだが?」
困惑するグラートにゼインは苦笑いで答えていく。
「とはいえ、実際言ってることは間違ってない。
せめてあの二体の機械を倒さないとどうにも話が始まらないだろうね。
ま、仮に倒せてもあの悪魔一体で質は賄えるんだけど」
「ともかく、まずはあの二体の機械兵士を倒せばいいわけね」
「心配しなくていいよ」
小さな声で話していたゼインの会話が聞こえていたようにグリエラは声をかけるとそのまま言葉を続けていった。
「この機械はどうせあとちょっとで撃ち止まりになる。となれば、ただ固いでくの坊に変わりない。
そして、僕は研究者だ。どうせ廃棄するならより効率的な方を選ぶ。そう例えば―――こんな風に」
グリエラは両サイドに立つ機械兵士を掴むと足元に作り出した沼のような黒い穴にその二体の機械兵士を押し込んでいった。
それはゼイン達の両サイドにそれぞれ黒い沼から機械兵士が出現するとそれは途端に赤熱化し始める。
「戦いの中での効率的な使い方は当然これに限るよね」
「全員今すぐ障壁を立てろ!」
――――ドゴオオオオォォォォン!
ゼインの声が空間にこだまする中、機械兵士は轟音とともに自爆していった。
*****
―――ピッ......ピッ......
とある病室で心拍数を示す機械が一定の間隔で音を告げる。
「うっ......ここは......」
ベッドで眠っていたラストはゆっくりと目を開けると周囲を見渡していく。
本当に長かった。まるで数十年経過したような感覚だ。
しかし、近くのカレンダーを見ると自分の現実の記憶からそう時間は経っていない。
「皆は......?」
今頃どうしてるのか、そんなことを思いながら一先ずナースコールを押してナースを呼んだ。
すると、ガラガラと思いっきり扉が開いて急いできたようなナースの姿があった。
「め、目覚めたんですか!?」
「は、はい......そうですけど」
「意識の回復、意思疎通の様子も見られる。
こうしちゃおけない! すぐにマーリアさんに連絡しないと!」
そして、ナースはこの場を離れてどこかへ行ってしまった。
しばらくすると、戻ってきて息を切らした様子で手に持っている電話を差し出してくる。
それを受け取ると電話に出た。
「はい、もしもし」
『ラスト! 目覚めたか!』
「はい。それで皆は今どうして―――」
『詳しいわけは後だ。お前の力がいる。急いで戦闘服に着替えて指定したポイントまで移動してくれ』




