第73話 電波塔破壊作戦#2
部隊のリーダーの通信により、電波塔を囲む三部隊が一斉に突撃を始めた。
それに気づいた魔族と機械狼達が一斉に攻撃をしていく。
飛び交う銃弾と魔族による魔法攻撃、それに対抗するような部隊の銃撃と魔法攻撃。
それらは一気に入り乱れて苛烈さを時間とともに増やしていく。
「始まっちまったな。いざこうみるとあの戦場の中に突っ込んでいくのは中々に危険だな」
「気づかれにくくなるってのは何もメリットばかりじゃないみたいね。
敵だけじゃなく見方からの流れ弾にも注意しなければいけないわ」
「それにここから見える限りでも入り口付近は意地でも通さないように警備についてる魔族が動かねぇな」
「そういう時こそ気づかれにくさを利用して一気に制圧するのよ」
第四部隊として待機しているリナ達はフェイルから貰った認識阻害装置を使いながらゆっくり距離を詰めていく。
その最中で目の前で繰り広げられる人と悪魔の全面戦争にも見える戦いに改めてこの場にいる意味を理解させられたような気になった。
すなわちすぐそばに死が隣歩いているかのような、黒い外套を纏った骸骨が鎌の刃先を首もとに近づけているかのような。
ともかく、背筋が冷えるような緊張感というものであった。
『そろそろ頃合いだ。突っ込め!』
「合図が来たわ。行くよ!」
リナが声をかけて先頭を走っていく。
その後ろにグラート、エギル、ルクセリアの三人が続いていった。
足を運ばせるたびに刻一刻と銃撃と争いの砂煙、爆発による焦げた匂いが近くなり、濃くなっていく。
しばらく走れば左右に動き回る魔族、機械狼、部隊の人間が入り乱れるように殺しあっていた。
部隊の人間が機械狼を倒せば、その隙を魔族が攻撃して殺していく。
その魔族をさらに別の部隊の人間が殺す。そのような光景が。
それでも部隊の人間は善戦してる方かもしれない。
それは魔族同士に協調性というものが見られないからだ。
知能が高い機械狼が魔族をサポートするように動いているが、それでも魔族の自分勝手な動きに振り回されてるようで、基本的に二人一組の形で戦ってる部隊によってその隙が狙われ倒されている。
しかしそれでも、魔族が驚異的な回復力で肉を切らせて骨を断つと言わんばかりに突っ込んでくるので、そこが部隊にとって攻めきれない部分となっているようだ。
その僅かな差を潰せるのか、それとも覆されるのかのカギを握っているのがリナ達第四部隊であった。
その勝利条件はいち早く電波塔から流される有害電波を止めること。
それさえできればそのことに動揺した魔族に隙が生まれて、部隊が一気にその隙を潰して殲滅してくれるはず。
確実にそうなる未来はまだわからない。ただ、それを決めるのが今という瞬間だ。
「見えた。俺が一気に接近して入り口の魔族に斬りかかる。
だが、恐らくそれと同時に近くの狼が気づくはずだ。そっちは任せた」
「そんじゃ、あたし華麗なる狙撃で決めてあげましょうか」
エギルは全身に雷を纏わせる。その影響で体に付けていた認識阻害装置が誤作動を起こして姿が露わになってしまった。
「チッ、忘れてたぜ。ま、だがこの距離なら間に合う」
地面を蹴ると雷光が電波塔の入口へと駆け抜けていく。
そして、エギルは素早く両手の剣を振るって魔族二体の首を刎ねた。
そのエギルの姿に狼が気づき、背中に搭載した銃器を向けていくが、その狼の頭に風穴が開いていく。
「見えないが何者かがいるぞ! あぶり出せ!」
魔族の一人がそう告げて別の魔族が地面に電流を走らせていく。その瞬間、エリア範囲内に入っていたルクセリアの認識阻害装置がショートさせられた。
「くっ、やってくれるじゃない! だけど、実は暴れる方が性に合ってるのよね! そっちは任せたわよ!」
ルクセリアは未だ認識阻害装置の効果を受けているリナとグラートに声をかけていく。
その声をエギルにかけたものだと勘違いした魔族の一部が入り口近くにいるエギルに襲い掛かっていった。
「好都合だ。俺もお前らには晴らし足りない恨みがあるからな!」
エギルは好戦的な笑みを浮かべると入り口から離脱し、その周辺を手薄にした。
その僅かな隙間を突いてリナとグラートは入り口からはいっていくとグラートが土魔法で入り口に蓋をした。
「ふぅー、これですぐには外部から入ってこれない。ただし、自ら逃げ道を塞いだともいえるけどな」
「挟撃を受けるよりはマシよ」
「んで、目的の場所はこの上か?」
二人は上を見上げていく。
そこは壁に沿って螺旋階段が続いていて、最上辺りに足場があるのでそこが最終目的地である。
しかし、そこに向かうまでには空中に鳥型の機械が飛んでいたり、手すりにつかまっていたり、内部侵入を警戒した魔族が螺旋階段を上り下りしている。
「どうする? どっちかがヘイトを買ってその隙にもう一人ってのが一番理想的だが、その買う方はかなりの危険を伴う」
「攻める方もそう変わらないわよ。ただ純粋的な守りに関しては―――」
『侵入者発見』
「「!?」」
突然、鳥型の機械がリナ達を見て告げている。
しかし、リナ達の認識阻害装置は特に効果が切れている様子はない。
「魔力感知......いや、魔力の塊と言える魔族がいる時点で判断がしずらいはず。まさか温度感知!?」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇ! 来るぞ!」
リナ達に向かって螺旋階段の上の方から魔族が大量に降りてくる。
また同時に鳥型の機械も襲ってきた。
「リナ、破壊は任せた」
「え―――!?」
その瞬間、リナの足元から円柱が高くそびえたつように生えた。グラートの魔法によるものだ。
それによって、リナは螺旋階段を大きくショートカットするように上にあがり、さらに突き出された影響で空中に投げ出された。
空中には鳥型の機械が無防備に飛んでいて、上に残ってる魔族も少ない。
「えぇ、やってやるわよ!」
リナはグラートの意思に応えるように空中に氷のつぶてを作り出し、鳥型の機械に向けて一斉に射出していった。
数体の機械はそれで破壊できたが、まだ複数体は避けて残り、さらにグラートに向かった機会も戻ってきている。
そして、それらは翼から銃弾を放っていった。
リナは空中に浮かべた氷のつぶてを薄く延ばしていくとそれを足場のようにしてその場から跳躍、さらにさまざまな場所に氷をばらまき足場を作っていくとそこへ次々に飛び移っていく。
銃弾を避けながら機械を破壊していく。
一部避けきれずに腕や足を掠めていくが、それでも歯を食いしばって動き回り、鳥型の機械を全て破壊するとその勢いのまま最上階の扉付近にいる魔族に向かって飛び蹴りをかましていった。
「氷蓮残花」
リナは足に魔族の一体を踏みつけたまま、背後から襲い掛かる二体の魔族に対し、その場に花弁が鋭く尖った花を咲かせていく。
その花弁が魔族を貫き、そのまま凍り付かせていった。
しかし、途中でリナを追うように引き返してきた魔族が時間差で襲ってくる。
だが、その攻撃を予測していたように手にしていた魔剣銃を上に投げ、魔族の注意を一瞬そっちに引かせると腰に携えていた剣を抜きながら振り返った。
魔族はその攻撃が来るとわかり咄嗟に後ろに跳んで距離を取ったが、それでも避けられなかった。
それは彼女が持っていた剣がただの剣ではなく、蛇腹剣であったからだ。
鞭のようにしなって遠心力とともに襲い来るその剣に取った分の距離を潰されて両断されていったのだ。
そして、上にいる全ての敵を倒すと扉を蹴破って目の前にある機会に剣サイズに戻した蛇腹剣の刃先を向けていく。
「これで終わりよ!」
リナは思いっきり装置に刃を突き立てていく。
―――ドゴオオオオォォォォン
その直後、リナのいた場所は巨大な爆発に包まれた。




