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第72話 電波塔破壊作戦#1

『―――作戦は以上だ。直ちに部隊を再編成せよ』


「ま、やられっぱなしは癪に障るし。いっちょやってやるか」


「とはいえ、現状の厄介さは変わらないわ。特に未だ悪魔の姿を見ていないという辺りが」


 部隊の作戦を聞き終え、周囲を警戒しながらリナ達は行動を始めた。

 これから行われるのはこちらの部隊の通信妨害をしていると思われる電波塔の破壊。

 そのうちの一か所にリナ達は向かうことになったのだ。


 全員の顔色が明るくない。

 その心中には未だ一匹も悪魔を倒せずにして隊員の数が減らされているという現状にとても歯噛みするものがあったからだ。


「ぼやいてたって仕方がない。俺達のやることは変わらない」


「そうね。今できることを着実に。それが次は電波塔ってだけの話よ」


 エギルとルクセリアの言葉にグラートとリナは頷くとそのまま再編成された部隊の一つへ合流した。

 そして、リナ達はその部隊の最後尾につき、背後への警戒を任される。


「敵襲だ!」


 移動していると突然、部隊のリーダーが全体に叫んでいく。現れたのは先ほどの狼の機械であった。


「壁を設置!」


 リーダーの合図に土や氷など壁が作れる魔法を持つものは地面にそれを作り、遮蔽物に身を隠していく。


「リナ、あんたの出番よ」


「えぇ、わかってるわ。ただ魔力が少し心配ね」


 リナは地面に手を付けると再び氷を周囲に張っていく。

 それに足を取られた狼へ遮蔽物に身を隠した隊員達が一斉に射撃で撃破していった。


―――ドオオオオン!


「「「「!?」」」」


 その時、突如として爆発音が鳴り響いていく。

 咄嗟にリナ達は上空を見たが上に鳥型の機械は見えない。


「地上だ! 虫型の機械が自爆特攻してくる!」


「チッ、厄介すぎるだろ」


「それもそうだが、リナの魔法で凍り付かずに向かって来てるってことだよな」


「魔法に対する知識があり過ぎよ。うちの特魔隊に欲しいぐらいだわ」


「ともかく、私の魔法で無理ならグラートの土魔法で物理的に遠ざけるしかないわ」 


 グラートは土の壁から地上を這って近づいて来る僅かに魔力を持つものに土の針を飛び出させて攻撃していく。


「部隊は壁を作りつつ、そのまま前進! ゆっくりでいい! 着実に進むぞ!」


 そして、舞台は壁を作りながら進んでいく。

 その最中、いくつもの爆発音や銃撃音が周囲を覆っていき、耳がおかしくなりそうな大きな音と砂煙で聴覚と視覚の両方が正常レベルに働いているとはいえなくなった。


 その時、上空に多数の魔力反応が確認された。


「不味いわ! 上空から来る!」


 狼と虫で道を制限されながら、その方へと注意を向けさせることで上空への警戒を緩くさせる。

 そして、気づいた時には遅いと伝えるかのような空爆へ。


 余程精巧なプログラミングをしないと不可能な機械だけの部隊にリナ達のいる部隊は戦慄していったが、もしここで引けば全てが終わってしまう。


「空中へ照準を向けよ! 一匹でも撃ち漏らせばこの作戦全てが破綻するぞ!」


 部隊のリーダーが叫ぶ。

 そして、その刹那に空中に向かって鳥型の機械への一斉掃射が行われた。


 鳥型の機械は奇襲に特化したような構造のようか、狼の魔物よりかは幾分か楽に破壊することができ、リナ達は変わらずの前進をすることができた。


 それから数分後、リナ達は電波塔に辿り着いた。

 電波塔のそばはまるで嫌がらせのように遮蔽物を消した奇麗な更地が広がっている。

 加えて、そこには先ほどの狼の機械とともに魔族の姿があった。

 その光景にグラートが呟く。 


「どうやら今まで見なかった魔族は電波塔の警備に当てられてたみたいだな」


「不安要素があるとすれば悪魔の姿が見えないということね。

 もしいればそれだけで戦況が覆らないこともあるし、逆にひっくり返されることもある」


「といっても、ビビっても何も始まんねぇだろ。

 それよりも、電波塔そのものを破壊した方が手っ取り早くないか?」


 エギルは自身の手に持っている魔剣銃のグリップを確かめる。

 その横では片目にディスプレイをつけたようなルクセリアの姿があった。


「ダメね。フェイルから貰った魔力型情報集積スカウターによれば、あの電波塔は特殊な魔力の膜が張られてるみたい。加えて、その魔力の膜の出所はあの電波塔から」


「チッ、つまりは電波塔を破壊するにはどのみち内部に入らなきゃいけねぇってことか」


「そうじゃなくても、魔族を残しておくと厄介よ。

 恨みを持った魔族は凶暴になり人をより食べるようになる。

 そして、ついには強力な悪魔へと昇華する可能性もある」


 そのリナの言葉にグラートは思わず首を傾げた。


「だが、フェイルからの話だと悪魔と魔族には覆らないような違いがあるみたいなのがあるって感じじゃなかったか?」


「あくまで可能性よ。そうじゃなくても人間を食べ続けた魔族が他の魔族とは一線を画すような強さになっていた事例はあるんだから」


『全体へ連絡。これより作戦内容を伝える』


 部隊のリーダーからの連絡だ。その通信に全員が耳を傾けていく。

 作戦内容をはこうであった。


 今から部隊を三部隊に分けて、それぞれ等間隔で塔の周りへと配置につく。

 そして、同時に塔への奇襲を仕掛け、その中で塔の中へ行けそうな部隊がそのまま電波塔の中枢へと向かって制圧。


 しかし、もしそれでも厳しいようなら十分に敵が三部隊に引き付けられた状態で、リナ達第四部隊がその隙を突いて塔への制圧に向かう。


 そして、その際の負傷者への気遣いはしてはならない。最上の命令は電波塔の破壊である。


「これって仮に俺達の前でおっさん達のどれかの部隊が塔に入ったら俺達はどうなるんだ? 遊撃か?」


「ま、恐らくそうなるでしょうね。でも、作戦としてあたし達の部隊を別で編成してる時点で十中八九あたし達が出張ることになるでしょうよ」


「ハッ、上等! 奴らに散々舐めさせられた辛酸の返しが出来るならな」


「だけど、それで周囲への警戒が盲目になるのはダメ。

 私達の一番の目標はラストを瀕死に追いやった怠惰の悪魔をこの手で倒すこと。

 そのためにはこの場の誰一人かけてはならない」


 リナの言葉に三人は思わず黙った。しかし、その瞳に宿している決意は全員同じであるようだ。


「で、俺達が突入するにはなんか策あんのか?

 電波塔の周りには広い更地があって普通に向かうじゃ目立ちまくりだ」


「そうね。もしなんか使えるとしたらフェイルに貰った認識阻害装置かしら」


「アイツ、なんでも持ってんじゃねぇか」


「らしいわね。ま、あの子からしたら身近な人が傷ついた姿なんて見たくないのでしょうよ」


「それがあればここまで来るのももう少し楽になったんじゃないか?」


 グラートの質問に対し、リナは首を横に振ると答えた。


「そもそも宣戦布告自体が急だったから作るのが間に合わなかったらしいわ。

 悪魔との戦闘以来作れたのは四つだけらしい」


「まるでこの瞬間を読んでいたみたいな偶然さね」


「そうね。でも、このおかげで活路が開けるのなら今使うしかないわ」


 リナは認識阻害装置をそれぞれに渡していく。そして、簡単に使い方の説明を始めた。


「その装置のボタンを押せば起動する。ただし使えるのは一回限りで時間はおおよそ5分と聞いてる」


「それまでに塔を破壊、か。やるしかないか」


「加えて、それで自分の姿が完全に隠せるわけじゃない。

 あくまで存在が薄くなって気づかれにくくなったぐらいらしいからそこも考慮して」


『三部隊、配置が完了した。これより電波塔破壊作戦を開始する―――突撃!』


 そして、リナ達による電波塔一つの破壊作戦が始動した。

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