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第71話 怠惰の悪魔へ続く道#3

 遊撃隊の目の前に現れたのは全身が機械で出来上がったようなメタリックな狼で、その背中にはおおよそ見たことのない銃器と思られるものが搭載されている。


 それを今まで見たものはいなかった。それどころかなんであるかわからなかった。

 しかし、理解できることもある。


 あれはおおよそ特魔隊の科学技術力を上回っていて、一体で人を数十人殺すには十分すぎるということ。


「全員、あの魔物を全力で排除しろ! でなければ、殺されるのは俺達だ!」


 先頭のリーダー格の男が全体に声をかけるように叫んだ。

 それと同時に、周囲にいた魔物達は一斉に動き始める。


 野生の狼と戦っているようなしなやかな駆動で障害物を降りると瓦礫が広がった地面を走り始めた。

 そして、背中に搭載された銃器の先端を動かしていくと一斉に発射していく。


「皆、車の後ろに!」


 リナはすぐさま仲間に呼びかけた。その指示で全員が乗って来た装甲車を盾にするように動いていく。

 直後、その車にガガガガガッと無数の鈍い色の鉛玉が撃ち込まれていった。


 周囲からは撃たれたような特魔隊員の声が無数に響き渡っていく。

 恐らく、間に合わなかったが、咄嗟に魔力障壁を展開したものの貫通して撃たれたかのどちらかであろう。


「こっちも反撃しないとジリ貧になるわよ!」


「わかってる。機動力が高いならその足を奪ってしまえばいいのよ。

 グラート、私が動きを止めたら追い打ちで拘束して。残りのあんた達はそれを破壊」


「あぁ、了解した」


「ぶっ壊してやるよ」


「オーケー、やってやるわ」


 リナはすぐさま指示を出すと自分は地面に手を当ててそこから周囲に氷を張っていった。

 広がっていった氷は動く狼をコケさせたり、警戒して立ち止まった狼の足を覆うようにして増々広がりを見せた。


「グラート!」


飲み込む大地(グラウンドバインド)


 グラートは目視で位置を確認すると動きを止めた狼の足もとから土で出来た鎖を出現させ、それによって雁字搦めに拘束していった。


「拘束完了!」


「行くぜ!」


「ちゃっちゃと片付けましょう!」


 グラートの拘束がされるやすぐにエギルは全身に雷を回して拘束で移動していった。

 熱を持ったその体は足元の氷の地面を誘拐させながらメタリック狼に接近、一気に剣を振り抜いていく。


―――ガンッ


「固ったっ!?」


 しかし、その所撃は弾かれてしまう。

 その瞬間、剥き出しの銃器がエギルの方へと向いていった。


「まず―――」


 だが、その銃器は根元から撃ち込まれた風の弾丸によって破壊されていく。

 すぐさまエギルが背後を見るとドヤ顔のルクセリアの姿があった。


「これで撃たれる心配はないわよ。これで貸し一ね」


「はっ、舐めんな!」


 その時、エギルはラストが刀に炎を纏わせた時のことを思い出した。

 それを咄嗟に再現しようと剣に雷を集めていき、それで刃を赤熱化させていく。


「これ以上、貸しを作ってたまるかよ!」


 エギルは再び剣を振っていく。

 すると、その件はメタリックの狼の体を溶かしながらスパッと切断していった。


 そして、そのまま他の拘束されている狼もスパスパと切断していく。

 銃器の軌道を瞬間的に躱しながら右手で銃器を斬ると左手でトドメという風に。


「へぇ、負けてらんないわね。なら、あたしもちょっとやる気見せようかしら―――風貫烈撃の弾丸ペネトレーションバレット


 ルクセリアは二丁拳銃を向けると片方で銃器を破壊するともう一つで狼の目へ弾丸を放っていく。

 貫通力の高めた弾丸は高速で狼の目へと着弾した。


「それだけ精巧な機械なら目なんて精密すぎるもので覆われてるでしょ。

 人間だって目は弱点なんだから......って最後まで言わせて欲しかったわね!」


 斬撃も伴う風で打ち込んだのにその目にはヒビが入ったのみであった。

 そこに思わ示キレたルクセリアは素早くもう一発同じ目に銃弾を入れて今度こそ目を貫通させる。


 その瞬間、狼の脳に当たる部分で斬撃属性の風の弾丸が動き回り、その狼はそのまま動きを止めていく。


「もう少し魔力を込めないとキツいわね。でも、下手に魔力を使い切るのもね~。ま、それでやられるよりはマシね」


 そして、ルクセリアも次々に魔物を倒していった。

 その様子を車の後ろから眺めていたグラートはリナへと話しかける。


「とりあえず、二人は順調そうだぜ。そろそろ俺達も加勢するか?」


「そうね。氷で捉えられる狼も少なくなってきたし。

 あのメタリックなボディも魔法を無効化しないことが幸いだった」


「あの狼は初見殺しって感じが強かったかもな」


『―――......て!』


「待って、今フェイルから通信が入った」


「通信が回復したのか!?」


 リナはインカムを耳に押し当てて注意深く耳に意識を傾けた。

 どうやら通信は完全に回復したようではないみたいだからだ。


「フェイル、応答して!」


『離れて! 今からそこから離れて!』


 切羽詰まったようなフェイルの声。

 多少雑音が混じっているが確かにリナの耳にはそう聞こえた。


 リナはすぐさまインカムのチャンネルを変えると戦闘中のエギルとルクセリアにその場から離れるよう指示を出していく。


「戻ったわよ。何があったの?」


「おい、まだ敵は残ってる―――」


――――ドドドドドドドドドッ


 その戦場に突如降り注いだ細長い筒状の爆弾。

 それは無数に戦場の辺り一帯にばら撒かれるように降っていき、地面に着弾すればたちまち大きな爆発と爆風を作り出していく。


 まるで連鎖していくのように爆発音が響き、その場一体は一瞬の赤い光と大量の黒い煙で覆われていった。


 その爆風によって吹き飛ばされたリナ達は近くの店の窓へと叩きつけられ、そのまま店の中に入っていく。


 その窓には先ほどまで盾にしていた装甲車すら吹き飛ばされたのか窓へと叩きつけられた。

 だが、それが幸いにも逃げ場のない店内へと爆風が流れ込んでくるのを防いだのであった。


 リナ達はひとまず鳴り続ける爆音が続くまでカウンターの裏で身を隠すことにした。

 それから数分間の続いた耳がおかしくなりそうな音が止むとリナ達はゆっくりと店の扉へと近づき、その扉を少しだけ開けて隙間から覗いていく。


 しかし、そこから見えるのは黒煙のみ。

 どこもかしこも焼けたようなニオイがしてくる。

 もしかしたらこの場所も焼けてるかもしれない。


「ちょっとどきなさい。あたしが吹き飛ばしてあげるから」


 ルクセリアがリナの前に出ると扉の隙間から銃口を出し、黒煙に向かって風の弾丸を放った。

 それは黒煙に穴をあけるように進んでいくとたちまち爆風を起こし、近くの黒煙を吹き飛ばしていく。


 そして、近くに敵の気配がないことを確認すると全員で外に出ていった。

 そこは正しく地獄絵図。どこもかしこも焼けの原で、装甲車も人も機械の狼も一緒くたに燃やされている。


「これは......惨いな」


 その惨状にグラートが眉をひそめながら呟いていく。すると、リナ達にフェイルから連絡が入った。


『皆生きてるよね!?』


「えぇ、生きてるわ。幸いにもね」


『良かった。とはいえ、確認できてる時点でも被害は甚大。特魔隊の三分の一がもうやられた』


「何が起きたの?」


『鳥型の機械兵器だよ。それで空襲されたんだ。

 狼の機械で虚を突かれた僕達は地上へと意識が釘付けにされて、空への警戒を怠った。

 通信妨害もあってこちらの連絡が間に合わなかった』


「なるほど、そういうことね。でも、私達はフェイルのおかげで助かったわ。ありがとう」


『どういたしまして。でも、僕のこの通信もあくまで一時的なものに過ぎない。すぐに二度目の妨害が来る』


「私達に何か伝えておくことはある? それか何かして欲しいこととか」


『それなら、今からマッピングした三か所に向かって。

 そこが電波障害を起こしている拠点だから。そうすればもう邪魔されずに済む』


「わかったわ」


『それじゃ.....あ―――だ。きを―――.....て』


 そして、フェイルからの通信が切れた。それからすぐさま、隊員全体への連絡が来る。


『全部隊、よく聞け! これより三部隊に分かれて電波塔破壊作戦を行う!』

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