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第63話 悪魔との戦い

 ついにカリギュのもとへとたどり着いたラスト。

 その彼に対し、カリギュは強者を漂わせるような笑いを浮かべている。


「前置きは散々やりましたから今更いいでしょう。それよりも今はこの時を楽しみましょうか!」


 カリギュは意気揚々と告げると手に魔力を込めていく。

 すると、地面が隆起し始め、そこから岩で出来た人形が現れた。


「きっとあなた達ではゴーレムなんて単語を聞いたことがあっても実際に見るのは初めてでしょう?

 別に私が操れないものは人だけじゃないんですよ!」


 カリギュが作り出した数体の岩を繋ぎ合わせたようなゴーレムはドスンドスンと重たい足取りで近づいて来る。


 それに対し、ラストは剣に炎を纏わせるとそのまま薙ぎ払いの斬撃を放った。

 それに直撃したゴーレムは音を立てて崩れていく。


「!」


 しかし、随分もろく壊れたと思ったゴーレムは壊れたそばから再生していった。

 そして、再びラストに向かって進行してくる。


「さて、どうしますか? 普通に攻撃しても復活する相手を前にして、それらを無視して本体の私に攻撃してくるのも良しですが......さすがに自ら窮地に立たせるわけにはいかないですよね」


「まだだっ!」


 ラストはゴーレムに接近すると今度は先ほどよりも細かく刻んでいった。

 そして、そのままゴーレムの間を抜けようとするも、背後から大きな気配がして咄嗟にしゃがむ。


 その瞬間、ラストの頭上に岩石が高速で通過していった。

 どうやらゴーレムの一体が自身についている岩を切り離して飛び道具として利用したようだ。


 ラストはこのまま止まっていれば的にされるだけだと考えてすぐさま移動しようと考えるが――――地面に手が吸い付いたように離れなかった。


 加えて手首が掴まれてるように違和感を感じ、やたらと重さがかかっているような感じさえする。

 すぐさま手元を見てみればそこにはゴーレムの顔らしきものがあり、地面から伸びた手がラストの手首を掴んでいたのだ。


「まさか私が出したゴーレムの数が出せる総数だとでも思ったんですか? それは些か舐め過ぎやしないですか?」


 ラストはすぐさま離脱しようと足を動かす。

 しかし、今度は両足までもが地面から出てきた手によって拘束され、身動きが取れない。


 その状態で背後から大きく拳を振りかぶったゴーレムに岩石の重さを乗算した拳を背中に叩きつけられた。


「がはっ!」


 咄嗟に背中に魔力を込めたものの、そのゴーレムの力は悪魔の魔力で強化されているのかラストを大きく仰け反らせた。


 そしてさらに、別のゴーレムがラストを思いっきり横から蹴飛ばしていく。

 それをわき腹に受けながら地面に転がっていくラスト。


 レバーに深く刺さったのか咄嗟に呼吸が出来ない。必死に息を吸おうとするほど過呼吸のような感じになってくる。


 そんなラストの様子を楽しむようにカリギュは声をかけていく。


「正直、侮りましたでしょう? 先ほどの人間を混ぜて作った人形や実際に人間を操る形での敵とは違い、これはただの岩にしか過ぎません。

 しかし、自然には自然の魔力があり、君達はそれらを恒常的に享受して自身の魔法に変換している。

 そんな自然の魔力を見破る術なんてあなたにはないでしょう? だから、気づけなかったんですよ」


「そんなことはない」


 カリギュの言葉を否定しながら立ち上がる。そして、ラストは強い眼差しを向けて言い返した。


「確かに、僕一人ではそうなったかもしれない。だけど、僕にはあいにく悪魔がいるんでね」


 その時、ラストの脳内にしばらく反応がなかったリュウの言葉が返って来た。


『すまない、遅くなった。この手の相手の攻略方法を思い出してたのだ。

 では、早速結論から述べよう。あのゴーレムは術式で動いている。

 核の場合もあるが、先ほどお前が切り刻んだ時点でそれがないとなるとそっちだ』


『ということは、その術式を壊せばいいんだろうけど、それは一体どこにあるの? 倒した時にそれらしき断片すら見てないけど』


『当然だ。やつはその術式をゴーレムに張り付けてるわけじゃないからな』


『なら、どこに......』


『地面の中だ』


 その言葉にラストは思わず驚く。


『地面の中......?』


『あぁ、恐らく、奴はお前がここに来るだろうことを予想していて、その上で先に地面の中に術式を設置していたんだ』


『だけど、そんな場面はどこにも無かったけど?

 戦闘中もカリギュの様子は警戒してたけど、別に大きな動きはなかった』


『それだけで判断しているとすれば、奴の言葉を借りるとまだ悪魔を舐めていることになる。

 魔法に関しての扱いは悪魔(おれたち)の方が遥か上だということを常に想定しておけ。

 現に、魔法というのは必ず何かを対象とする構成術式が必要だ。

 それなしで魔法を生み出せん。より複雑なほどその重要性は高くなる』


『なら、この地面を破壊すればとりあえずあのゴーレムの術式は破壊できるんだよね?」


『そうだな。一先ずそれを破壊するのが先だ』


 ラストは持っていた件を逆手に持ち替え、そのまま思いっきり地面に刺し込んだ。

 それを見たカリギュの笑みは一瞬固まる。


「大山噴炎」


 突き刺さった地面から真っ直ぐ縦に伸びた亀裂が地面に入っていく。

 そして、その亀裂から光が溢れ漏れていくと一気に爆発を起こして、その場の地面一帯を破壊した。


 その爆風でゴーレムは木っ端微塵に吹き飛び、カリギュもその爆風に対して魔法障壁を張って防いでいく。


 周囲は黒煙で包まれ、一切の周りの様子を遮断していく。

 そんな中で、その煙を切り裂くようにラストがカリギュの横に現れた。


 体を捻るように大きく振りかぶった剣を素早く振り抜いた。

 それに対し、咄嗟に防御態勢に入ったカリギュであったが、差し向けた手は無常にも切断されて空中に飛んでいった。


 ラストは続けざまに攻撃を放とうとする。

 しかし、カリギュもそれを防ごうともう片方の手を伸ばすとそこに風魔法を用いて辺りの黒煙を収束させていった。


 それによって、瞬く間にラストの目の前からはカリギュの姿が消えていく。

 姿が見えなくなりかけたその時に、ラストは正面に向かって剣を突いた。


 その剣に纏っていた炎が突きとともに前方に伸び、黒煙に通り道を作っていく。

 それで外が見えるほどに煙を晴らすことに成功したが、正面にはカリギュの姿がない。


「ぐっ!」


 その瞬間、重たい蹴りがラストのわき腹に入り、アバラが折れていくような音が聞こえながら黒煙の外に吹き飛ばされた。

 それと同時に、黒煙が周囲一帯に吹き飛ばされていく。


「はぁ、私の腕が。焼き跡までつけられて再生できないじゃないですか。

 これだから直接戦闘は嫌いなんですよね。

 とはいえ、こちらが想定していた以上の反応速度で攻撃を繰り出してきた。

 悪魔の力をそれほどまで引き出していながら未だに人間としての意識がある。

 しかも、宿す悪魔はあの大罪の大悪魔。これは本当に謎としか言えないですね。

 まるで憤怒の悪魔様本人が悪魔そのものを滅ぼそうとしているみたいにすら感じます」


 まるで確信を突くようなカリギュの言葉にラストは思わず息を飲んだ。

 そんなラストの様子を見るように視線を向けていたカリギュは「まぁいいでしょう」と呟くとラストに告げた。


「あなたの回収が目的で殺されるわけにもいかないので、ここは一つ、私のとっておきを召喚したいと思います。来い、我が僕―――ソドム、ゴモラ!」

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