第５９話 タッグマッチ
マロトーンに向かって走り出したラストとエギルは挟み込むように互いに外側から曲がっていく。
それに対し、先ほど隙をさらしたエギルの方が弱いと判断したマロトーンはそっちに攻撃を仕掛けていく。
「ガアアアア！」
「うるせぇんだよ！」
咆哮ととともにマロトーンは拳を振りかざした。
それに対し、エギルは雷を纏わせて身体能力をあげるとその攻撃をいなずと同時に体の捻りを利用して地面に刺さった腕の関節を狙って斬りつけていく。
その背後でラストが剣に炎を纏わせてマロトーンの背中を斬りつけた。
炎による燃焼ダメージはマロトーンを大きくよろめかせる。
そこに挟み込むように二人は挟撃していく。
「「っ！？」」
しかし、その攻撃は外れた。避けられたのだが、その躱され方が異様だったのだ。
マロトーンはウエスト部分を大きくくびれさせてまるで上級魔族バズーのように体を軟体化させたんのだ。
加えて、その体を大きくねじっていくと戻す勢いと同時に腕を振り回してラストとエギルを同時攻撃していく。
それぞれ振り回された拳に直撃するとそのまま大きく吹き飛ばされていった。
体を元の状態に戻したマロトーンは叫びながら死に体のエギルに向かって追撃を行っていく。
しかし、それは飛んできた投げナイフが体に刺さって爆発したことで防がれた。
「そうはさせませんよ」
横槍を入れたのはサラシャであった。
サラシャは少しばかり動けるようになった体で起爆魔法陣が付与されている投げナイフで攻撃したのだ。
「ガアアアア！」
その攻撃に怒った様子のマロトーンは四つん這いでクラウチングスタートを決めるように一気にサラシャに向かった。
「砲電」
そこへエギルの指鉄砲から放たれる雷エネルギーを凝縮させた砲撃が放たれていく。
だが、背後から攻撃が来ると読んでいたのか右う手を盾のように変形させるとその砲撃を防いでいった。
「今だ！」
しかし、それは同時に動けないということでもあり、攻撃のチャンスでもある。そして、その好機を逃すまいとラストが一気に突っ込んでいく。
マロトーンは近づけさせないと左腕を向け、そこからいくつも枝分かれしたような触手を伸ばしていった。
それをラストは躱し、弾き、切り落として前に進む。
そして、ついに剣の間合いに入ると狙い目である関節部分に意識を集中し始める。
だが、マロトーンがそうはさせないと続けて攻撃を仕掛けた。
伸ばした触手が意味ないと悟るとそこから一気に斧状へと変化させてそれを横に振り抜いたのだ。
それに対し、ラストは体勢を低く保ち続けたまま、地面にダイブするように突っ込んだ。
その時同時に、体を反転させるように捻りながらマロトーンの攻撃を避け、関節部分を目で捉えると炎の剣を振り抜き、切断した。
斬られた腕が宙に舞っていく。
どす黒い血が放物線を描くように流れていき、それはマロトーンの切断面からも溢れ出ていた。
「ガアアアア！」
マロトーンが痛みに叫ぶような声をあげる。
しかし、それでラストの攻撃の手が止むわけではない。
ラストは地面を転がっていきながら体勢を立て直すとすぐさま突っ込んでいく。
「ガアッ！」
ラストの接近に気付いたマロトーンはすぐさま足を鞭のようにして後ろ回し蹴りをした。
それをジャンプで避けたラストであったが、その回避先を狙ったように巨大化させた右拳がラストを襲った。
「ぐっ！」
「ラスト様！」
ラストはそれを剣を横にして受け止めていくが、勢いは殺せずにそのまま壁へと叩きつけられた。
叩きつけられたラストの壁にめり込む様子を見てサラシャは思わず叫んだ。
そして、マロトーンは右腕を筒状にするとそこに魔力を凝縮させていく。
動けないラストに強力な一撃をぶち込むようだ。
だが、その攻撃は同時に隙が出来るタイミングでもある。
そこへ注意が外れてるエギルがマロトーンへ一気に接近した。
その時、マロトーンがニヤリと笑うのをサラシャは目撃する。
「エギル様、お気を付けください！」
嫌な予感をしたサラシャが注意喚起を促した。
そしてほぼ同時に、その右腕の砲台が反転して向かって来るエギル方へ向く。
だが、エギルは決してその進みを止めることはなかった。
「遅っせぇんだよ」
エギルは雷負荷を上げて身体能力をさらに引き上げた。
そして、一気に上がった速度で跳躍してマロトーンの砲撃を躱していくと体を横に捻りながら、マロトーンの右腕に体ごと斬り上がっていく。
そのままマロトーンの背後に着地すると体を低姿勢のまま飛び出させて、マロトーンの右脚の関節を切り離した。
片足を失ったことで体勢が崩れていくマロトーンにさらなる追撃を加えようとエギルが動くが、そこは残りの片足で踏み切ったマロトーンが跳躍することで躱した。
「ガアアアアア！」
すると、威圧するように叫んだマロトーンはその右腕を半径五メートルほどの円盤状にしてエギルに叩きつけた。
その範囲攻撃をエギルは間一髪範囲から逃れることに成功した。
だが、その抜け出した瞬間を狙っていたようにマロトーンは残った左足を鞭のようにしならせてエギルを攻撃していく。
「がっ！」
それはエギルに直撃して、地面を跳ねながら壁が凹むほどに強く叩きつけられた。
しかし、休む暇を与えないとばかりにラストが動き出した。
ラストはマロトーンがいる位置に跳躍すると首に向かって刃を振りかぶった。
それに対し、マロトーンは切り落とされた左腕を向けるとそこから一本鎗のように瞬く間に腕を伸ばした。
その攻撃はラストが悪魔の力を借りた驚異的な反射神経で体を捻って避けた。
だが、空中での攻撃であった分体勢は崩れていく。
「まだだ！」
ラストは自分に気合を入れるように叫ぶと右腕でその槍を掴んだ。
その瞬間、高熱を帯びている黒腕化した右手で握られた槍は熱で燃えていった。
その苦しみにラストに距離を取らせようと右腕を元に戻して、さらには大剣へと変化させるとラストに向かって振り下ろしていく。
「気炎斬」
しかし、この好機を逃すまいとラストも反撃に打って出た。
それは悪魔の魔力で腕力を上げて、さらに剣に纏わせた炎による強攻撃。
ラストの刃とマロトーンの大剣と化した右腕が交わったその時、ラストの剣がその刃に斬り込んでいきそのまま切断した。
マロトーンの刃が空中を舞っていく。
また同時に先ほど火力を上げたことによりラストの右手が掴んでいた左腕が肩まで燃焼が広がって、左腕は肩から完全に消滅させた。
とはいえ、マロトーンは切断した部分から再生こそしないものの一時的にそれに近い状態で攻撃できる。
故に、攻め手が失われた今こそ絶好の討伐チャンスであった。
ラストは剣を持つ左手を順手から逆手に持ち帰るとマロトーンに向かって投げた。
それはマロトーンの胸部の中心に突き刺さり、そこから周囲に広がっていくように燃焼が始まっていく。
空中でその一瞬ともいえる攻防をしていたラストとマロトーンはそのまま落下。
その時、ラストは後は任せるように攻撃の手を任せた。
マロトーン越しに見える人物に対して。
「これで終わらせてやるよ―――鬼雷双撃」
エギルは両手に持つ双剣に雷を纏わせ、それをブレードのように刀身を伸ばしていくと腕をクロスさせたままマロトーンに突っ込んだ。
そして、マロトーンの首に二撃の刃が同時に襲い掛かり、マロトーンの首は刎ね飛ばされていった。
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