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第44話 クランの初任務

「ようこそ私のクランへ! といっても、あんた達しかいないけどね」


 翌日、光輝達は一つ上の階にいるルクセリアのクラスへと訪れた。

 そして、ルクセリアを呼んでクランへの入隊を決めたことを報告するとルクセリアは嬉しそうにそう告げたのであった。


「にしても、まさかあんたまで来るとはね。知り合いだったんだ」


 そう言ったルクセリアが視線を送ったのは中等部から目をつけていたリナであった。それに対し、リナは「まあね」と返事をすると続ける。


「あの時はルクセリア先輩と共闘する意味がなかったから無視してただけ。

 でも、あなたはラストの秘密を知ってしまったし、同時に私についても推測の目途が立ってるはず」


「そりゃ当然、あの現場に残っていたのは焼き焦げた森だった。

 他にもそうすることは出来ただろうけど、そこにリナがいたからそうとは思ってたけど......まさか所有者が変わってるとはね」


 「ま、色々あったでしょうけど深くは追及しないわよ」とルクセリアは自ら一線を引いた。

 とはいえ、どの道ラストに憤怒の悪魔の存在が知られているのは事実。

 そのことに関してはいずれ経緯を話さないといけないことはラスト達にとって共通認識であった。


「それにしても、随分と判断が早いと思いましたが何かありましたか?」


 その時、ルクセリアの近くで聞いていたサラシャはふとそんなことを尋ねてみる。

 それに対し、ラスト達は本当の目的を避けながら、当たり障りない回答で返した。


「僕の立場は現状特殊でして、それで特魔隊の一員として動くのなら早めから実践に近い集団戦闘に慣れておこうかと思いまして。

 それに、リナからルクセリア先輩について伺いまして――――」


「え、リナが私のこと凄いって!? 超ヤバいって褒めてくれたってこと!?

 いや~、やっぱわかる人にはわかっちゃいますか、あたしの実力ってやつが。

 まぁ、これでもたくさんの魔族狩って来てますし? 同年代では負けなしで――――」


 そう言って鼻高らかに自慢話するルクセリアの言葉が続いた。

 それに対し、リナは心底ウザそうに「私の方が多いし」と呟き、サラシャはそっとルクセリアを横に移動させながらラスト達に告げる。


「さて、ここからは立ち話もなんですし、テラスの方へ行きましょうか」


 そして、ゾロゾロと移動していくラスト達。

 ルクセリアが一人置いてかれたことに気付くのは数分後のことであった。


 それから、置いてかれたことにややムスっと顔をしたルクセリアは改めてラスト達に尋ねる。


「で、あたし達のクランへの入隊理由は?」


「え、だからそれは実践に近い集団行動に慣れて――――」


「それが前置きぐらいはわかってるわ。あたし、変に遠回しの言い方って嫌いなの。さっさと答えなさい」


「わかりました。僕達は――――ルクセリア先輩を守るためでもあります」


「あたしを守る?」


 その言葉にルクセリアは思わず首を傾げる。それに対し、フェイルが言葉を続けた。


「憤怒の悪魔を宿すラスト君は今や恰好の標的です。加えて、その狙っている悪魔として現状わかっているのは怠惰の悪魔ということです。

 そして、怠惰の悪魔は先日のような襲撃事件を起こしてラスト君を奪取しようと行動しました。

 しかし、それに失敗したということは、今度は直接的な行動を避けて接触してくる可能性があります」


「もう大体先が読めたわ。つまりそこの悪魔君に接触回数が多いか、もしくは突然の接触があっても疑われにくい人物を装って悪魔君を奪いに来る可能性があるということね?」


「はい、そうなります。もちろん、ルクセリア先輩が強いことは知ってます。

 これまでの実績が物語ってますし。ですが、この世界に絶対はなく、もし仮にルクセリア先輩に憑りついた場合、事態はより深刻になります。

 そういうわけで、近くにいて一人になる状況が出来るだけ少なくなるような形にしたいんです」


「なるほどね。でも、相手が私より強いんだったらわざわざそんなこともしなさそうだけど。

 魔族や悪魔は闘争心に溢れてるってのは身をもって体験してるし」


 それに対し、ラストが答える。


「だけど、どこまでも理性的に、命令に忠実な魔族はいました。

 その人は確かに好戦的でしたが、同時に悪魔に対して妄信的でもありました」


「それが悪魔君が戦った上級悪魔ってこと?」


 ラストがコクリと頷くとルクセリアは僅かに顔を俯かせ、考えるようなポーズを取った。

 そして、視線を隣に立つサラシャへと向けるとサラシャは頷く。

 その反応をキッカケにルクセリアは告げた。


「わかったわ。体験者が語るんだもの。疑うべきでもないしね」


「ありがとうございます」


 すると、ルクセリアは「そうと決まれば」と呟きながら立ち上がった。

 そして、ルクセリアの行動に一方的に見つめているラスト達に対して、ルクセリアは告げる。


「んじゃ、今週の休日二日は空けておきなさい。狩りに行くから」


「え、狩り......?」


「何、とぼけた顔をしてんのよ?」


「いや、俺達まだ互いの動き見てないし、一度修練場で合わせてからでも......」


 グラートの慎重的な発言にルクセリアは思わずため息を吐く。


「あんたの筋肉は一体何のためのものよ? いいこと、確かに合わせることは大事だと思うわ。

 でも、それってあくまでこっちの都合のいい想定範囲での行動にしかならないわけ。

 だったら、いきなり実践で動いた方が想定外の行動に対しての危機感も覚えて、命のやり取りをしてるわけだから余計な甘さも消える。

 こっちの方がどう考えても効率的よ。ま、危ない時は助けてやるわ」


「ごめんなさい、うちのお嬢様が。彼女は見た目こそ筋肉はあまりあるように見えませんが、脳が大変ガチムチの筋肉になってしまってるのでこういう行動しかできないのです」


「ちょっと! 誰が脳筋だってのよ!」


「確かにお嬢様の行動は後のことを考えれば効率的なのかもしれませんが、どう考えても実際に戦場を肌で感じろとか脳筋以外の何物でもないでしょ?」


「そんなことないでしょ! あんた達もそう思うわよね!?」


「「「「......」」」」


「ちょっと、誰か一人ぐらいは否定しなさいよーーーーーー!」


 それから結局、なし崩し的に......というか、依頼を受理してきたので半強制的にラスト達は初めてのクランとしての魔族討伐へと挑むことになった。


 場所はラスト達が暮らしている国リンドヴルム、そこから北東に位置するルナトリア学院から更に北東へ進んだ場所にある森の中にある廃城。


 そこを目指して現在、ラスト達は「黒の森」と呼ばれる森の中をラスト、リナ、グラート、フェイル、ルクセリア、サラシャの六人で歩いていた。


「それじゃあ、一応の陣形を伝えておくわ。まず、前衛はあたしとラスト、そしてリナ。中衛としてグラート。そして最後に後衛にフェイルとサラシャね。

 とはいえ、フェイルは戦闘向きの魔法じゃない。だから、あんたは全体に目を配ることを意識して()()()()()()()()()からあたしの動きに()()()()するに頭を回しなさい」


 その陣形はルクセリアをワントップとし、撃ち漏らしを次に攻撃力に長けたリナとラストを置くという、挟撃や背後からの攻撃をあまり考えていない超前進(三角形)の形となっていた。

 それはまさにルクセリア自身の強さの自信を表しているようで、ラスト達は僅かに困惑する。


 その時、ルクセリアが叫んだ。


「狼型の魔物が数匹と下級魔族が数体いるわ! それじゃあ、あたし達の陣形の腕試しと行きましょう!」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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