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第26話 バトルアーミー#5(リナサイド)

―――――数分前、リナサイド


 交戦中だったリナと白服Dは突如として割り込んできた一人の悪魔に驚き、警戒するように距離を取っていく。


 その中心で砂煙を纏いながら現れたガタイの良い筋肉質な悪魔はやや野太い声で笑いながら告げる。


「おいおい、せっかくの戦いをもう止めちまうのか? どんどん仕掛けてこいよ」


「生憎、あなたと戦う予定はなかったから」


 そう冷たく良い放つリナを値踏みするように眺めるその悪魔は次に白服Dへと視線を向けていく。その視線に対し、睨むように見つめ返した人狼の白服Dはその悪魔に向かって尋ねた。


「誰、君は?」


「俺は悪魔のランザっつーものだ。とにかく戦いたくてウズウズしてんだよ。さぁ、とっとと始めようぜ。二人がかりでも構わねぇ」


「勝手に割り込んでズケズケと......それに悪魔? ここには結界が張られて悪魔であろうと入れないはずだよ」


「だが、現に目の前で俺の存在を理解しているだろう? お前達は悪魔狩りを生業としているらしいな。だったら、俺の気配ですでに本物かそうでないかぐらい判断できているはずだ」


 その言葉に白服Dは黙った。それはランザの言葉が正しかったからだ。

 白服Dには人型の悪魔との戦闘経験はない。しかし、下級悪魔から悪魔という存在の気配は知っている。


 その知っている情報からすれば、ランザは知っている下級悪魔の気配の何十倍もの密度の敵意を醸し出しているのだ。それ故に、言い返す言葉がない。


 それに対し、ランザほどの悪魔の気配を知っているリナは変わらぬ冷たい目つきで告げた。


「とはいえ、中級悪魔一体なら私には問題ない。この場であなたを倒すまで」


「やっぱり、そっちは知ってんのな」


 感心した様子でリナを見つめるランザと対照的にやや細めた目つきで眺める白服D。

 そして、白服Dはランザへと目を向けると躍起になった様子で告げた。


「コイツが中級悪魔か。下級悪魔よりも確かに差があるがビビるほどじゃねないね」


「油断しないで。下級悪魔しか相手したことないのなら無茶な行動は避けるように――――」


「ごちゃごちゃうるさい。1年はすっこんでろ!」


 そう言って白服Dは両手両足を使って大地を駆けながらランザに高速接近していく。その様子に「良いぜ、その意気込み」と不敵な笑みを浮かべるランザは構えた。


 そして、白服Dがそのまま切り裂こうと爪を立てて左手を振るってくるとランザはカウンターを狙うように右拳を突き出していく。


「むっ!」


 しかし、ランザが突き出した拳は空を切った。そこにあるのは僅かばかりに姿を残した白服Dの姿で、本体の方は背後へと素早く周り込み、右手を下から上に切り裂こうと振るっていた。


「そう来なくてはな!」


 嬉しそうにそう告げるランザは背後を振り向きながら右足で白服Dの攻撃を止めると伸ばしていた右手をそのまま振るって裏拳を当てようとした。


氷の障壁(アイスウォール)


 そのまま行けば直撃――――というところをリナが咄嗟に二人の間に出した氷の壁でランザの攻撃はコンマ数秒遅れ、その刹那の時間で白服Dは上半身を逸らし数センチという所で躱していく。


 しかし、氷の壁を壁とも思わないそのスイングは周囲に氷の破片を飛ばしながら、衝撃を白服Dへと飛ばしていたのだ。


 それによって、白服Dはその衝撃によって大木に背中からぶつけられ、そらにその大木をへし折りながら地面に転がっていく。


「俺の攻撃に合わせるように咄嗟に障壁を作るとは......どうやら相当に実績があるらしいな」


「それが私の使命だから。それに同じ悪魔を倒す者としてあのまま死にゆく姿を見過ごすことは出来ない」


「勝手に殺すな。それにあの攻撃は避けられた」


 そう言って横に並んだ白服Dの姿は口元が血で濡れていた。どうやら先ほどの衝撃で内臓が傷ついたみたいだ。

 お腹を抑えている様子も見られ、リナは白服Dに対して告げた。


「あの悪魔は私が倒す。私の方が経験があるから。だから、あなたはじっとしてて」


「ふざけるな。僕はやられっぱなしというのが嫌い―――」


「じゃあ」


「おい! ふざけんな! 待て!」


 リナは白服Dの両足を氷で固めるとランザに向かって歩き出した。その様子を見てランザは尋ねる。


「今度はお前が相手をしてくれるのか?」


「そうね。あなたのような筋肉ダルマはグラートだけで十分よ。だから、ここで潔く散りなさい」


「ハハッ! その意気だ!」


 最初に攻撃を仕掛けたのはランザであった。ランザは愚直に突撃していくと迎撃するようにリナが氷の槍を放っていく。


 その攻撃をランザは躱したり、破壊したりしながら着実にリナに突き進んでいき、大きく右拳を振るっていく。


 それに対し、リナは蛇腹剣をそのまま袈裟懸けに振るった。まだ伸びていないその剣をただの剣と思っているランザはその剣の長さ分のギリギリの間合いで躱そうとする。


「......!」


 しかし、突如として伸びたその剣はランザを追いかけるように間合いを伸ばしていく。咄嗟にさらに距離を置こうとするランザであったが、後ろに跳んだ瞬間に背中に何かがぶつかり動きが止まった。そこにあったのは氷の壁であった。


「脳筋すぎ」


「がっ!」


 逃げる距離を制限されたランザはそのまま蛇腹剣によって斬りつけられていく。そして、リナのターンはそこで終わらなかった。


 氷の壁から一部を伸ばしてランザを(はりつけ)にするように拘束すると。巨大な氷の槍を作り出し、ランザに向かって投げ飛ばした。


巨体氷槍(ヴァラエッサ)


「破空衝」


「......っ!」


 巨大な槍は止まった標的に対して容赦なく襲い掛かっていく。

 それに対し、磔のランザは手のひらを氷の壁にくっつけるとそのひらから打ち出した衝撃で壁を破壊し、大きく体をのけ反らせて紙一重で攻撃を躱していった。


「......それがあなたの魔法ね」


「さすがにバレるか。そうだ、俺の魔法特性は『撃ち出す者』で圧縮した空気を自在に撃ち出すことが出来る」


「空気故にガードしようと避けようと貫通してダメージが通る。先ほどの裏拳の避けた後の攻撃もそれによる攻撃だったのね」


「見た目に反して出来ないことにがっかりしたか? それはすまない。だが、相手を吹き飛ばし、さらには大木をへし折るほどの拳圧などいくら人間よりも通常膂力の強い悪魔とて不可能だ。それこそ一部の上級悪魔かもしくは暴食の大悪魔様以外にはな」


 そう言うとランザは両手で拳を作りそれを振りかぶるようにして前傾姿勢になった。


「ネタバラシは以上だ。相手の魔法を知って戦いやすくなったと思うか? だが、あいにく俺の魔法はわかっていても躱しづらい」


 ランザは空を乱打するように拳を高速で放った。すると、その拳一つ一つから透明な衝撃波が放たれ、それが無数と襲ってきた。


 目を凝らせばほんの少し空気が歪む程度しか確認できないその衝撃波の位置の読み取れなさが躱すことを困難とさせていた。


 リナはその攻撃を氷の障壁で防いでいくが、その障壁は複数の衝撃による振動で簡単に壊され、その度に障壁を作り直しと防戦一方を余儀なくされた。


 その瞬間、一匹の獣がリナの横を通り過ぎ去る。


「ハッ、獣の僕は体中にセンサーが付いているようなものだ。空気の僅かな揺れでどこら辺にあるかわかる。そして、僕の高速移動をもってすれば攻撃している最中に近づくのも容易い!」


 白服Dは横からいくつも飛び出してくる衝撃波をするりと躱していき、ランザの懐まで迫った。そして、ランザが防御に入る前に手刀を突き出して心臓を貫こうとする。


 しかし、リナは気づいていた。それが誘い込まれていることに――――


「ダメ! 止まって!」


 リナは咄嗟に蛇腹剣の鞭的な性質を利用して白服Dの足を掴もうと伸ばすが衝撃波で弾かれる。

 そして、リナの言葉も虚しく――――その瞬間は訪れた。


「拡破空衝」


 ランザは白服Dの攻撃よりも先に両手を叩くとその瞬間、その手を中心とした衝撃波が放たれた。それによって、白服Dの攻撃は弾かれ、勢いも殺され空中で死に体となった。


「さらばだ」


 その直後、ランザの右手の手刀で白服Dは胴体を貫かれた。

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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